第19話  下請け業者と原価公開

H15.3.17  

外注、協力会社、アウトソーシング、専門工事業者・・・。表現は違うが、業務の一部を請負う企業をこう呼ぶ。アウトソーシングは若干意味が異なるが、概ねこのような業務請負を下請け業者と呼ぶ。建築業界は多重下請け構造となっており、簡単なリフォームを除けば、小さな工事でも社員だけで工事は完結しない。下請け業者に発注することになる。

下請け業者にも、左官や塗装といった専門職もあれば、家一軒トータルに施工できる建設業許可を持った工務店もある。昔は身内や紹介で仕事を受注していたが、ハウスメーカーの台頭で受注が少なくなったり、あるいはハウスメーカーの手法を知るため、メーカーの代理店になったり、施工店になったところも少なくない。

専門職のことを専門工事業者といって、下請けをしている工務店とは分けて考えたい。今設計事務所を中心に、この専門工事業者から直接見積を取り、施主とそれぞれの専門工事業者ごとに契約を交わす「直接発注方式」というのが行なわれ始めている。「分離発注」とも言われ、これをCM(コンストラクションマネジメント)方式だと言っている。

この方式は、専門工事業者から提出される見積をそのまま提示する。設計料や、分離発注のサポートをする費用、現場管理費用なども、その業務量に応じて見積を提出するので不透明な部分がない。透明性を高め、元請が存在しないからその利益分安く出来ると説明されている。

従来の工務店の見積書は、専門工事業者から出た見積の内訳に少しずつ利益を乗せて、別に現場管理費などの諸経費を計上していた。だから原価が不透明だという指摘は当たるが、原価が透明だから安くなるのか、また原価を透明にすることを本当に消費者が求めているのかは疑問である。

まず第一に、専門工事業者が直接ユーザーに提出する見積が精査されているかどうか。必ずしも提出されたそのままの見積だから安いとは限らない。素人相手と見ると割高で見積っているかもしれないし、取り合いなど不明な部分は割増をしているかもしれない。逆に必要な工事が漏れていても分からない。

第二に、工事範囲とその責任が明確にされているかどうか。下地が悪いから、仕上げに不陸がでたり、壁を仕上げたあとに設備業者が明けた穴を誰が補修するのかなどなど。設計図書にない、指示がなかった、見積に入っていない、工程が悪い・・・。誰がどう判断し、追加工事が発生した場合どう負担するのか?施工管理の経験のない設計事務所では対処できない。お引渡し後の瑕疵(隠れた欠陥)なども、各業者は自分の責任ではないと言うから誰も責任を取れない。

第三に、分離発注の手間として発生するCM費用が妥当かどうか判断が難しい。この分野で知名度の高い「オープンシステム」は、床面積あたり2万2千円/uとなっている。つまり坪単価だと約7万3千円。40坪の家で290万円を超える。しかも設計料は別に工事費の8〜10%かかる計算だ。2000万円の家で200万円程度となるから、工事費とは別に設計事務所に500万円程度の支払が生じる。

工務店は、この500万円を「当社の経費としてこれだけかかります」と出す勇気がないから、それぞれの単価に少しずつ利益を乗せ、さらに諸経費を計上することで利益を確保している。専門工事業者に分離発注を行なっている工務店は、不当な利益を得ているわけではなく、当然掛かるコストを透明にしていないだけだ。(もちろん丸投げし、不当な利益を得ている工務店も存在する)

査定能力があり、コストダウンに具体的指示が出来る工務店であれば、専門工事業者からの見積を鵜呑みにしない。だから施工を知らない設計事務所が、見積の査定をせず「透明にするから安い」とは限らない。自社で分離発注せず、他の一括下請け業者に『丸投げ』している工務店であれば、査定能力も低いだろうから、その会社の利益分高くなるのは当然だ。それを混同して、『元請け不要』としている。

下請け企業は責任を負いたくないからこれまで下請けに甘んじていることが多い。下請け企業と直接契約を交わすことは、お客様が負うリスクや精神的負担もそれに応じて高くなることも忘れてはならない。元請け企業は全責任を負うが設計事務所は責任を負わないので要注意だ。

2002年末で「オープンシステム」の会員設計事務所は249社。着工数は350棟。(日本経済新聞広島経済版/平成15年1月9日掲載)年間に1社平均1棟強しかできていないことが、設計事務所では分離発注のサポートが容易ではないことを物語っている。当然効率化できていないから、CM費用は安くならない。

現状では、ベストとはいえないものの元請けが責任を負い、下請け業者との調整役を行なうことがベターな選択だと考えている。そこに緊張感と競争原理を持ち込み、業務の改善などを促す存在として、CMr(コンストラクションマネージャー)の存在意義を見出したい。本来、建設業のマネジメント(経営・品質・工程など)能力を高める手法としてCMという概念が発達したのであり、お客様がリスクを負ってまで直接分離発注するという「日本型」CM方式は、まだまだ課題が多いからだ。

木造軸組みの架構
プレカットや金物による継ぎ手が増えており、大工が腕を振るうというシーンは減っている。
工事中の事故や資材の盗難への対応、近隣との調整など、元請けが存在することで現場がスムーズに運ぶことも忘れてはならない。

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