第22話  パッケージソフト

前回、アメリカのプランブックの話を書いた。プランブックとは、不特定多数のお客様向けに出来合いで用意された設計図書のことをいう。個別オーダーで設計図を描くのに比べて、格段に安く、また長く住んでも飽きの来ないデザインや間取りになっている。

これはコンピューターで利用されるパッケージソフトにも似ている。企業ごとの用途にあわせて作られたプログラムは大変な金額になりバグ(隠れた不具合)もあるが、大衆を対象としたパッケージソフトは価格も安く、バージョンアップするたびにバグも操作性も改善されていく。

開発コストはあまり変わらずとも、100社を対象とするソフトと、10万人を対象とするソフトでは、おのずとその価格に大きな開きができる。しかし、金額の差ほど機能に差が無く、むしろ大衆ニーズに応えたソフトのほうが次第に洗練され、使い勝手も良くなる。

どうも日本は安価なパッケージソフトよりも、自分たちの業務に合わせてプログラムを開発することが好きなようだ。顧客管理ソフトなどを含めた業務用ソフトにその傾向が高い。自分たちの業界は特殊なので汎用ソフトでは対応できないというものだ。独自のプログラム開発は、大変なコストと期間が必要になるが、パッケージソフトで代用の利くことも少なくない。

住宅業界で代表的なパッケージソフトにCADがある。アメリカからCADが導入されたときには、機械や電気の設計にも使うことのできる汎用CADといわれるものを建築でも利用していた。しかし、建築業界は自分たちが長年やってきた独自のやり方にあわせたものを求めたため、建築専用CADができ、住宅専用でも多くのCADメーカーができた。

日本には様々な工法があり、それぞれのやり方がある。その声を吸い上げて住宅専用CADを開発すると、ものすごく重い高価なソフトになってしまう。しかも自社で使える機能は3割に満たないということは少なくない。住宅専用でも10階建てまで設計でき、在来工法だけでなく2×4も、RC造も、木造では伏せ図や木拾い、積算と連動など、次々と要望は増えていく。

住宅の設計もまさにそのようになっているように感じている。本来は、十分経験を積んだ設計者が、大衆のニーズを取り入れた最大公約数の基本プランを作成し、そのバリエーションを作る。そして実際に建築され、その評価で新しく優れたプランが創出されていくのが望ましい。

それは単なる規格住宅ではなく、標準化をすることで部材のコストを下げていくという効果も見込める。設計や積算、部材の発注、工程管理や品質管理などの全ての段階で工期短縮、コストダウン、担当者による当たり外れというリスクをお客様が負わなくても済むようになる。

しかし現状では、規格化・標準化によって価格を安くすることを使命とした大手住宅メーカーが、顧客名簿を集めるために莫大な費用を使うため、コスト(原価)は安く出来ても販売価格は安できていない。こんなところに日本の住宅産業の矛盾があるように感じている。

メーカーを超えた規格化がないのもそれに拍車をかけ、独自規格を売り物にしたフランチャイズがさらに複雑な構造をつくっている。「個別最適」を追求し、「全体最適」や「住宅は社会資本」という発想の欠如が日本の住宅業界(日本人自身の気質か?)の問題だろうか・・・。

ウィルス対策ソフトもパッケージソフトの一種だ。
人間が個別にウィルスやセキュリティ対策をしていると、大変なコストが掛かり常に新しい対策を手動で行わなければならない。
プレハブ住宅だけを集めた広島ホームテレビ「アストモ」展示場。
規格が乱立し、住宅のコストダウンには寄与していない。このまま同じものを建てる お客様もいない。

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