第24話  サプライチェーンマネジメント(SCM)

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『サプライチェーンマネジメント』という言葉が数年前、日本企業が競争力を取り戻す重要な手法だとビジネス誌などで取上げられていた。しかし最近ではさらに景気悪化が進み、不良債権処理や貸し剥がし、リストラなど後ろ向きなことばばかりが目立つようになってしまった。

もっとも『サプライチェーンマネジメント』は、直接的に売上を伸ばす手法でなく、納期短縮やコスト削減の手法だ。しかも自社内で解決できるものではなく、取引先を巻き込んだ業務改善となってくるため、多くの企業が減収減益となっている情勢では取組むのは容易ではない。

『サプライチェーンマネジメント』とは、資材の調達から、生産、販売、廃棄に至る一連の流れを企業の枠を超え最適な状態にコントロールすることをいう。住宅も最近は数多くの部材を購入し現場で組み立てるアッセンブル業になっている。その部材の調達について非効率な部分を見直すことで、住宅のコストを下げていこうという発想だ。これまでのコストダウンは資材の質を落としたり工事の手間を省くなど、消費者には分からない質的低下を伴なっていた。

住宅業界はこのサプライチェーンマネジメントという発想がかなり遅れた業界だ。材木業界はさらに遅れているため、山元で出荷される杉の値段は40年前と変わらないのにも関わらず、地元の山の木を使うよりも海外から仕入れたほうが安いという不思議な現象が起きている。しかも地元の材料は十分乾燥されておらず、建築後に変形してしまうということさえ少なくない。

単に中間流通業者を飛ばして安く仕入れるといったことでは、住宅のコストはそんなに簡単には落とせない。それは、渋滞の道路の根本原因を皆で解決しようとせず、路側帯を通って割り込みをしながら目的地に早く着こうとしているモラルの低いドライバーのようなものだ。そのような自分勝手な人たちがさらに交通渋滞の原因を作り出していることに気づいていない。

住宅業界の一番の問題は、資材の発注側が本来自分達がやらなければならない業務を供給側に依存していることだ。設計の詳細を決めて資材の拾い出しをし、部材発注を指示するのは元請けの仕事である。しかし、住宅設備機器の販売店やメーカーに仕様決めも拾い出しもさせ、お客様への説明用資料まで作らせるから、そのための人員やシステムをメーカー側が用意しなければならない。それがすべてアナログで何度も訪問を繰り返すから業務は増えるばかりだ。

本来は標準化された部材がCADに登録され、木材の加工データもCADからプレカット用のCAMに自動変換されれば、設計者がCADでプランニングした時点で、受発注や加工情報、見積データまで自動作成される。そのデータを各供給業者に電子データで送信されれば、必要とされる部材が必要な量、最適なタイミングで納入されることは現在の技術で実現可能だ。

サプライチェーンの各段階では、梱包や配送・保管、与信管理や決済などの機能を果たすだけで、データを再入力する人員や提案資料を持参するといった不要な人員やシステムを持つ必要もなくなる。従ってコストダウンと納期の短縮、さらに人的ミスも最小限に抑えられる。

それを妨げているのも、消費者や元請け会社といった発注側の無理解とエゴで、自分たち自身が不利益を被っていることも知っておきたい。渋滞を作り出している原因は自分たちにもあるのだ。

●Webマスターの若本が早稲田大学建築市場研究会で発表しています。
この研究会では住宅業界のIT化やSCMを研究しています。
↓こちら
http://www.wiaps.waseda.ac.jp/user/cont-int/status/1997-2001/2002-1.htm

建設ロジスティクスの新展開
椎野 潤著  彰国社刊

早稲田大学の客員教授による 「IT時代の建設産業変革への鍵」について書かれている。鹿児島でスタートした建築市場を中心に、建設業界のサプライチェーンマネジメントの実践が詳しく書かれている。椎野教授が広島に来られた折には地元工務店にも数社ご案内した。


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