第26話  旬(しゅん)
2003.05.12

ゴールデンウィークをはさんでこのコラムも一回休んだ。連休は、実家のある山口県の周防大島に家族で帰省していた。広島の人はほとんど「大島」といったらご存知だろうが、みかん狩りや魚釣りなど広島からのドライブコースにもなっている。

私は夫婦ともに大島育ちで、両方の実家はやはりともに土建屋を営んでいる。
しかし本業とは別に、野菜も魚も自分たちで調達できるので、帰省すると「旬(しゅん)」ということを意識させられる。

島内の東端に位置する東和町は、全国の自治体の中で高齢化率No.1が20年も続き、現在65歳以上の人口比率が5割を超えている。なんと、定年退職した60歳では町内では若いほうに分類される。民俗学者の宮本常一や、作詞家の星野哲郎らを輩出し、島民は自然と共生している。

魚は大変おいしい。2人の息子たちも大島で獲れたての魚を食べると、広島でスーパーに並んだ魚は残してしまう。やはり、島では「旬」を知っているし、釣った後も美味しく食べられる方法を良く知っている。養殖と天然ものの差だけでなく、シメ方によって味も変わる。

釣り上げたその日に刺身にして食べると、歯ごたえがあり少し硬いが、翌日になると柔らかく甘みも出てより美味しくなる。油の乗っている時期とそうでない時期ではやはり全然味が違うし、微妙ではあるが包丁の良し悪しでも身の違いが分かる。人間のセンサーは大したものだ。

では、住宅はどうだろう。自然素材を使った健康住宅が数多く販売されているが、本当に自然の摂理を理解し、素材を扱っているのだろうか?単に人工ではない素材を使っているのなら、養殖や南アフリカで獲れた魚を素人がさばいたのと変わりない。食べ比べてみると味の差は歴然だ。

しかし住宅に関していえば、プロである大工さんでさえその差が分からない人が増えている。機械加工されたプレカット材が現場に到着し、クレーンを使って組み立てていく。自分で材料を吟味し、どの部分を使うか、実際に使ってみてどうだったか確認する術もほとんどない。

だから、中国木材(呉市)の堀川社長のように、材木屋の社長の自宅が数年で材が暴れて反ったりひび割れたりという経験をしてしまう。同社は年商500億円を超える日本でも有数な木材会社だ。木を知り尽くしているだろうその企業のトップでさえ、そんな状態になっている。そんな会社の社長が自宅を建てるのに、決して悪い材料、腕のない大工を使ったとは思えない。

数奇屋大工の棟梁に聞くと、木の伐採は木の眠っている時にスパッと切るのが良いらしい。水を吸い上げてこれから成長しようというときには切ってはいけないということだ。それは、地域差はあるものの、秋の彼岸を過ぎて10日後。9月末から12月にかけてが「旬」という。

「葉がらし」という伐採方法など、自然素材を扱うのは奥が深いが、やはりその差は数年先に間違いなく出る。食べ物と違ってどれだけ差があるのか、一般の人には体験しようもないが、先人はそんな自然素材の扱いに知恵を持ち、日本の家づくりに生かしていた。
いつのまにか日本人に「旬」が忘れ去られ、それが自分たちの首をも絞め始めている。

「葉がらし」については、TSウッドハウス協同組合(徳島県木頭村)が有名。

木は断面を見るとかなりのことが分かる。プロになると、どの方角に傾斜した山に生えていたか、何に加工して使うかなどもイメージできる。

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