第27話  ユビキタス
2003.05.19

前回の非常にアナログな話とは打って変わって、今回はコンピュータ用語としてよく使われている言葉をテーマとした。

『ユビキタス』というのは、遍在(いつでもどこでも存在する)というラテン語が語源だ。ユビキタス・コンピューティングとかユビキタス・ネットワークといった使われ方をされ、どこにいてもコンピュータにアクセスできる状況になりつつあるということを指している。

今はモバイル社会ともいわれ、誰もが携帯電話を持って、電話機能だけでなく、電子メールのやり取りや、インターネット接続などで情報を受発信している。また、これから家電製品までネットワークでつながれ、遠隔地からでも家電を操作したり、製品の状態を把握したり出来るようになる。

例えば、家庭用冷蔵庫でもバーコード読み取り機能をつけて、スーパーで買ってきた素材の鮮度管理や在庫管理がタッチパネルで見ることができるようになるかも知れない。そうすると、奥さんがスーパーで買い物をする時に、携帯電話から自宅の冷蔵庫の在庫を確認したり、品質保持期限の切れたものを知ったりすることも出来る。

住宅業界はアナログ派が多く、IT化はなかなか進んでいない。しかし、これほど情報化が進みコンピュータだけでなく、携帯端末や家電製品や自動車までもがネット接続できる『ユビキタス』時代になっていくと、それをうまく利用したほうが得策だ。

これまで、住宅業界のIT化は、せいぜいCADやCGシステムを導入したり、ホームページを開設したりというものだった。一部の先進的な企業は、グループウェアなどを導入し、社員や取引先との情報共有を行ったりしているが、それも例外的で、電子受発注などはほとんど進んでいない。

そのひとつの要因として、IT化を進めるほど、社内に入力専門のオペレーターやシステム担当者を置かなければならないといったコストの問題があった。限られた人だけがデータ入力するという業務の偏りも存在していた。コンピュータでいうと大型のコンピュータに処理を集中させる一世代前の状況だ。

しかし『ユビキタス』時代には、業務の偏りもなくすことが可能となってくる。簡単な例を挙げると、年賀状をネット上で依頼することを考えると分かりやすい。お客様のほうがサンプルからデザインを選び、印刷する自分の住所や名前などを入力する。まず、入力間違いや記載漏れはない。仮にあったとしてもご自身が登録されたものなので、非は自分にある。

これが、社内IT化をしていてもオペレーターの入力であれば、一定期間に集中し、入力ミスは避けられないだろう。ミスは無償での取替えも発生しそのロスはすべて企業の負担になる。しかし結局はオペレーターのコストとロスは価格となって間接的には消費者が負担している。

住宅のような高額で、完成までに関与する人が多いものでは、このコストは莫大だ。もちろん年賀状のように一般消費者が簡単にサンプルから選ぶということは出来ない。しかし、現状では施工会社にも完成予想図を出力できるCADシステムがあり、建材販売店や住宅設備メーカーもそれぞれCGや提案ボード作成ソフトなどを持っている。

それに伴ない、それぞれの企業が入力するオペレーターを雇用し、プラン無料・見積無料という過剰サービスで、不要とも思えるほどの提案ツールが提供される。キッチンメーカーが、同じ施主名でありながら、違う工務店から提案依頼を受け、異なる提案をしているといったことも珍しくない。しかしデータの互換性がないため、常に紙で出力し、そのほとんどが再利用もされずボツになっている。

知人のインテリアコーディネーターは設備機器のショールームで働いていたが、提案ツール等をつくるために、毎日夜11時過ぎまで残業するということが少なくなかった。結局、彼女も10年近く勤めたその会社を先頃退職した。

ユーザー側が、どこからでも自由にネットワークにアクセスし、仕様決めに参加できるような『ユビキタス』時代がくれば家づくりも大きく変わるだろう。造り手も意識を変えていかなければならない。

モバイルで便利になったと同時に、別の社会問題も発生している。
これは、使う人のモラルや常識の問題だ。 決して道具のせいではないが、アナログの良さも忘れてはならない

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