第30話  トレーサビリティ
2003.06.09

『トレーサビリティ』
この聞きなれない言葉は、一昨年のBSE(狂牛病)問題あたりから脚光を浴びてきた。トレースという言葉は「辿るとか追跡する」という意味に使われ、食品などの安全性を確認するために、生産履歴情報や流通経路を公開する仕組みを『トレーサビリティ』と呼ぶ。

このシステムを実現化するには、
@ 一つひとつの製品の流通、生産過程をさかのぼって、使われた原材料を特定する仕組み
A 使われた原材料が安全性に問題がないかを証明する
という二つの仕組みが必要となる。

BSE問題では、いつどこの生産牧場で生まれた牛で、飼料には何を配合したかということまで、生産履歴を残しておかなければならないし、それを証明できなければならない。
最近問題になっているSARS(新型肺炎)や、遺伝子組み替え食品なども、少し違うとはいえ情報の公開と流通や伝達経路の正確な把握が重要なことは間違いない。

住宅の分野でも、この『トレーサビリティ』がこれから重要になってくるだろう。
ひとつは、木材などの産地や、建材に含まれる揮発性物質など、建築に使用される材料の生産履歴だ。もう一方で、解体された材料の廃棄物処理に関しても、木材やプラスターボード、アルミサッシなど、リサイクルや処分方法によって細かく分別し、最終処分場までの流通経路も追跡される。

廃棄物では、昨年施行された『建設物リサイクル法』によって、マニフェスト(産業廃棄物管理票)と呼ばれる数枚つづりの伝票を、廃棄物を積んだ車ごと、最終処分を行うまで、関与した全ての業者の印が必要となっている。不法投棄を防ぎ、リサイクル可能なものは再生しようという試みだ。しかし、建築の過程で使用される木材や建材については、含水率やヤング係数(しなりの強さ)、揮発性物質の含有率などの情報は十分とはいえない。

ローコストの建売住宅では、土台に米栂(ベイツガ)などを使っているが、一般消費者には見分けがつかないし、例え米栂と伝えられても、構造強度や腐朽への抵抗力など、知る術もない。産直住宅や県内産の木材を使ったと宣伝している木造住宅でも、自治体から助成金を得るために最低限の使用率(例えば50%)に抑え消費者の情緒に訴えかけているものも少なくない。

例えば、「太田川流域の木材を使用した」と情緒に訴えかけられると、環境意識の高い消費者は心を動かされる。しかし、冷静に考えてみると、太田川流域にも様々な針葉樹・広葉樹が育成しており、伐採地域よりむしろ、林業家にこそスポットが当てられるべきであろうと、私なぞは思ってしまう。TV番組の『どっちの料理ショー』を観ていてもそう思う。

食品については、一部上場企業だけでも様々な企業が、あちこちで不正に関与していたことが明らかになった。また口に入れるということもあって、消費者もかなり神経質になっている。
しかし25年も30年もローンを組んで、もしかしたら10年後には欠陥住宅で価値がなくなるかもしれない大きな買い物に、業者側も消費者も無関心でいることが不思議だ。

今、地場の工務店を含むほとんどの住宅会社はCADで設計図を描いている。
つまり情報の電子化を行っているにもかかわらず、建材の履歴情報や、工事記録、工事写真、設計変更履歴や設備図面など、リフォーム時にも必要とされる住宅建設に関する統合データの電子化は出来ていない。大きな財産だからこそ、『トレーサビリティ』という発想を住宅にも取り入れたい。

よみうりテレビ『どっちの料理ショー』はこちら>>>

●木造住宅の補強金物
プレハブ住宅のシェアが高まっても、まだ木造住宅に住みたいという消費者は多い。
しかし、材料自体の品質のばらつきや、施工の不備が後を絶たない。
情緒だけで木造住宅を選ぶのではなく、しっかりとした施工が出来るかについても現場チェックしておきたい。

会員の森信建設(株)が「住宅性能評価」に基づき施工している工事現場。
ホールダウン金物や筋交いなどが緊結されて、構造等級3を実現している。


Since2002 ©W's Network.co.,ltd. All rights reserved.