第34話 客単価
2003.07.07

今回は漢字のタイトルとした。『客単価』というのは、商売をする側が使う言葉で、お客様である消費者には失礼かもしれない。しかし、消費者側も、自分が商品やサービスを購入しようとする会社の『客単価』を知っておくことは意外と役に立つことが多い。

この『客単価』知らず知らずのうちに企業や消費者の行動に影響を与えている。例えば、同じ小売業でも、百貨店とコンビニエンスストアでは明らかに客単価が違い、買う側の意識も、売る側のサービスも明確に異なっている。買い物に行く服装まで変わることがそれを物語っている。売る側も客単価5,000円くらいまでならセルフサービスがほとんどだ。

接客する側にとって、自社の客単価よりもはるかに大きな買い物をしてくれるお客様は、何かの特別なサービスを施してでも次回また来て欲しいお客様だ。リピート客といって、何度か再購入していただければ『上得意客』となる。これは、自社の『客単価』『リピート購入』が判断基準となる。

購入する側はどうだろうか?意識はしていないが、自分の予算によって店を選んでいる。単に安いからといって全てディスカウントストアで買うことはないだろうし、食事でも、同席する相手に併せて味や雰囲気でお店を選んでいる。大切な人との飲食や、大切な記念日であれば、客単価の高い店を選ぶし、ファッションやアクセサリーなども同様だ。

住宅ではどうだろうか。まさか自宅をスーパーゼネコンに頼む消費者はいないだろうが、『客単価』を意識することで、業者選びをある程度絞り込むことが可能となる。あくまで、「坪単価」ではなく、『客単価』だが、「価格帯」といったほうがいいかも知れない。

以前、私が所属していた会社の親会社が高級住宅を売り物にした住宅会社だった。バブルの頃は、広島でも1億を越える注文住宅を年間何棟も受注していた。バブルが崩壊し、急激に物件単価が下がっていきローコスト住宅の研究もしていたが、結局平成8年に倒産した。

同じ建設会社でも、1,500万円から3,000万円中心の戸建て住宅を手掛けているところと、5,000万円から1億円程度のアパート建設が得意なところ、3億円から10億円程度の分譲マンション建設が得意なゼネコンでは、自ずと営業体制も設計体勢も異なる。

同様に地元の工務店でも、リフォーム中心でやっているところと、新築中心でやっている工務店とはやはり別物と考えたほうが良い。つまり、新築中心でやっている工務店は、自社の『客単価』(価格帯)以上の注文をいただける方が上得意客にしたいお客様であって、リフォーム客は職人を遊ばせないための「ついで客」でしかない。
表現は悪いが「ついで仕事」だ。

設計事務所も同様で、住宅設計を中心にやっているアトリエ設計事務所でなければ、戸建て住宅に精力を傾けていい設計をしてくれると期待するほうが無理な話だ。
皆さんが自分の仕事の『客単価』を考えて、その5分の1や10分の1の予算のお客を考えてみたら想像つくだろう。

従業員のやる気やお客様に使われるエネルギーは、『客単価』よりも上であれば大きく上昇し、下であれば大きく減退する。例え経営者が「顧客第一主義」を掲げていても、無意識にそのようになってしまうのだから致し方ない。住宅という、リピートが考えにくい業務であれば、まずこの法則が当てはまるといって過言ではない。

だから、設計でも施工でも業者選びをする時には、その会社がどのくらいの価格帯の仕事を多く手掛けているのか調べたい。その上で自分の予算がその価格帯と比べてどうなのかを知ることは、業者の事例を見せてもらうのと同じくらい大切になる。

できれば、業者の中心価格帯よりも少しだけ予算があると、大切なお客様としてその企業のベストを尽くしてくれる可能性が高くなる。残念ながら予算が少ないと、新人や能力の低い担当者を付けられる可能性が高く、その逆は決してない。

だから、弊社が提供するサービスの費用は固定単価に決めている。しかも従来の設計事務所よりも遥かに安い費用でプランニングを行っているし、CM費用も工事費に連動しない。
全てのお客様に、均質で高いサービスを提供することを意識してのことだ。

当サービスのディレクター、竹下学がデザインした住宅のキッチン
客単価の良い、質の高い仕事をしていると、市販のシステムキッチンを使っても、建売やローコスト住宅とは全く異なる空間とすることができる。


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