第42話 介護住宅とバリアフリー
2003.09.08

最近の住宅は和室も少なくなり、床の段差がなく、車椅子でも障害なく生活できるバリアフリー仕様の住宅が増えている。住宅業界でも、在宅介護用のリフォームを行なうのに、福祉住環境コーディネーターといった、福祉や介護の知識を持った専門家を育てるようになってきた。

私ごとで恐縮だが、4年前に父が脳内出血で倒れた。一命は取り留めたものの、左半身が麻痺し現在は「要介護認定2」の状態だ。懸命のリハビリによって、言葉はほぼ日常会話に困らなくなり、麻痺した側もわずかながら感覚が戻ってきていると本人は言っている。

父によると、はやり昔は何でもなかった段差や床の仕上げなどで怖い思いをすることが多いという。麻痺したほうにつまずいても支えるものがなく、顔か肩から地面にぶつかるしかない。すべる床などもってのほかだ。温泉の好きな父を連れ出す機会もよくあるので、昨年『福祉用具専門相談員』という資格も取って、介護の実習も受講した。このとき在宅介護の大変さ、住宅や福祉用具(介護機器)で、どれだけ障害者や介護人の負担が違うかということも実感した。

先日、弊社が入居しているインキュベーション施設のマネージャーから、精密機械部品製造のヤマトメック(東広島市)の山崎社長をご紹介いただいた。広島大学など、産学連携で研究開発型の部品製造を行なっているが、介護機器の開発にも積極的だ。たまたまお会いしたとき、社長自身が足のケガのため松葉杖状態だったが、日本の施設が介護に対していかに遅れているか、また既得権益を守る業界がいかにユーザーをないがしろにしているかという話を聞いた。

一例として東京駅の障害者に対する施設は最悪だそうだ。例えば、車椅子が利用できる新幹線の車両は11号車だが、車椅子用のエレベーターは遠く離れた前方のほうにある。しかも、貨物用エレベーター兼用で人間らしい扱いもないらしい。エレベーターを上がるとホームには延々と点字用ブロックが敷設されている。階段やエスカレーターがあるごとに横切っているので、どう迂回しようと、必ずいくつかは車椅子で超えなければならない。しかし、脊髄損傷で車椅子に乗っている人は、物凄い衝撃になるそうだ。

障害にはいろいろなタイプがあるので、全ての障害に対してバリアフリーの施設を造ることは容易ではない。しかし、設計者自身が障害者と同じ状態になって体験することで見つけられる設計上のヒントや改善策は多いだろう。単に、福祉住環境コーディネーターの資格を持っているから専門家だということではなく、障害を感じさせない設計が出来ることが重要だ。

階段の手摺りやドアノブのデザインを取ってみても、握力の弱い障害者では形状や素材に工夫しないと危険な場合もある。室内の温度差、特に洗面所やお風呂場の床が冬冷たいと、高齢者は脳卒中などになる危険性も高いという。家族を守るべき住宅が、家族にケガや病気のキッカケを作らないよう、考慮しなければならないことは山ほどある。価格やデザイン以上に大切なところだ。

次回はユニバーサルデザインということも考えてみたい。

坂道で車いすアシスト
ヤマトメック補助装置開発
中国新聞9月2日朝刊に掲載された、同社記事。
介護者の負担を和らげるため、様々な製品開発を行なっている。ドリームベッドと組んで介護用品レンタル事業もスタートした。

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