第47話 デザイナーズハウス
2003.10.14

最近、マンションや戸建て住宅で『デザイナーズハウス』と呼ばれる住宅を広告でも見るようになった。主に建売住宅や分譲マンションで、デザイン性を売り物にすることで、他の物件と差別化しようとしている。コーポラティブハウスと呼ばれる組合方式で造る集合住宅も、個々の入居者の希望を、デザイナーが実現させていく。

しかし『デザイナーズハウス』という定義は大変曖昧だ。大手住宅メーカーの家だって、企業内デザイナーが外観のプロポーションや細部のディティールを描いている。全国に無数にいる"自称"建築家たちも、デザインを重視した作品づくり(他人のお金で自分の"作品"をつくるというのだから、傲慢とも思えるが・・・)を行なっている。

前々回のコラムで紹介した、日本建築検査研究所の岩山氏が、またテレビ朝日系の2時間特番「欠陥住宅ワースト10vs.最高住宅ベスト10」に出演していた。欠陥住宅ワースト10の第2位が、業界でも有名なデザイナーが設計したデザイナーズハウスとの説明だったが、全く驚かなかった。むしろ、多くのデザイナーハウスが欠陥を内在しているといっても過言ではない。

グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、Webデザイン、パッケージデザイン・・。世の中には多くのデザイナーが存在する。三次元で構成され、実際に利用されるものは、デザイナー自身がフォルムや色、素材、そして機能を決めていくリーダーだ。しかしコストや品質については、まず関与しない。なぜならデザイナーはクリエイティブな部分を求められており、コストや品質などはデザイナーに求める能力とは異なる職能だ。

住宅という、2万点以上の部品で出来た、一つとして同じ条件の環境(地盤、風向き、日照、気温変化など)のない構造物で、デザイナーが建設プロジェクトのリーダーとして、品質に責任を持てるのであろうか?施工業者性悪説に基づいて、デザイナー(=建築家)が設計監理をすることで、欠陥住宅を防ぐことが出来ると言い切れるのだろうか?その人たちが、また、分離発注まで行なって、追加のフィーをもらうことに、施工業者はもっと猛烈に反発してもいいのではないだろうか?本当に「技術者魂」があるのであれば・・・。

一番被害を被っているのは、結局知識がなく、商業ベースに踊らされる消費者だ。他の業界を見渡して見ると単純なことや当然のことが、住宅業界では当たり前に行なわれていない。業界の常識は他の業界では非常識ということがいかに多いことか。

一般的にイタリアなどヨーロッパのデザイナーは、2種類のデザインフィーから選択する。日本と同様にデザインを請負って案件ごとに報酬を得る方法と、デザインした製品が市場で販売され、売上に応じて将来にわたって報酬を得る方法だ。自分自身が売れるデザインをする自信があれば、後者の契約をした方が得になる。本を書いて印税をもらうのと同様、自分の収入は市場が評価するから、多くの人に売れるデザイン、価格、機能を自ずと意識する

日本にはこのような考え方が建築業界にないから、デザイナーはこぞって先鋭的でマスコミが喜びそうな"作品づくり"ばかりしている。それに踊らされた消費者が、入居後数年経って冷静になったときにいろんな悲劇が待っている。その責任をデザイナーは取らない。

私自身、もちろんデザインや色は大変重要な要素だと考えている。弊社の『W's』をかたどったブルーのロゴも、『無印良品』などのポスターデザインで有名なグラフィックデザイナーの新村則人氏に頼んでデザインしてもらったものだ。(実は高校の同級生!)

しかし、やはり"自称"デザイナーの作品ではなく、マーケットで揉まれて一定の評価を得られたものが望ましい。アメリカの『プランブック』はまさにその発想で販売されており、優秀なデザイナーは個別の設計以外に稼ぐ手段を持っている。日本の建築設計者に、そんな発想が見られず「住宅は儲からない」と聞くのはなぜだろうか・・・?
※プランブックの詳細は、コラム21話「プランブックとCM」を参照ください。

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ハウスメーカー選び
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デザイナーズハウスに欠陥が内在しているのなら、やっぱり大手ハウスメーカーが安心かといえば、さにあらず・・・。
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