第53話 うっかりミス
2003.11.25

基礎配筋検査
見た目しっかり鉄筋が組まれていても、うっかりミスが見つかった現場...
意図的にミスや欠陥をしようと施工する職人はいないが、第三者がチェックすることで欠陥住宅は回避できる。

人間、誰しもうっかりミスをした』という経験はあるだろう。
例えば、駅のホームで出発のベルが鳴り響いていて飛び乗った電車が、自分が行こうとした方向と反対方面に動き出して慌てて次の駅で乗り換えたといった具合だ。(実は私の体験です)

『思い込み』というのも、うっかりミスを誘発する。プロ野球OBの秋山選手と数学者の秋山教授を間違えて講演会に招き、講演会開始の30分前に気づいたという福岡県の中学校がニュースになった。地元で『秋山さん』といえば、福岡ダイエーホークスで活躍した『秋山幸二』と思い込んだ、県の職員の『思い込み』があのような結果を生じさせてしまったようだ。

この場合には、機転の利いた対応で事なきを得たが、医療や建築といった、人の命や大きな財産を預かるプロの職業では、うっかりミスが大変なこととなる。「勘違いでした」では取り返しのつかないことになり兼ねないからだ。

先週末に住宅関連のチラシが大量に新聞オリコミされていたので、1枚1枚チェックしていたときのこと。1枚のフルカラーのチラシが目に入った。ある住宅会社の完成見学会の案内だったのだが、顧客との出会いから、どのように家づくりを進めてきたのかストーリー仕立てで書かれてあったので、一風変わっていて『読ませるチラシ』だったのだ。

私も、見学会開催のチラシの企画は80社近く手掛けてきたので、いいチラシとダメなチラシを見る目は肥えている。今回のチラシは「面白い!」と、チラシに載っていた図面までじっくりと見た。施主の要望や設計者の実力がある程度見て取れるからだ。

動線や広さ、収納量など一通りチェックしていて、「おやっ!」と思って図面を覗き込んだ。どうもキッチンが狭い。幅2400のシステムキッチンかと思えば、台所自体の寸法は十分な広さがあるし・・・。

あっ!この寸法、書き間違えてるんじゃない!?

思わず職業柄すぐに三角スケールを持ってきて、チラシに掲載されている青焼き図面の写真の寸法を当たり始めた。(皆さんも自分の職業では、このような経験があるでしょう)
すると、やはり図面上は3,200ミリ程度の間口が、3,640ミリと記入されている。
CADで寸法を自動表示すれば気づくはずが、手描きの図面で、スケッチまで描き込んでいるような、見栄え重視の図面になっていたので、そのまま掲載したのだろう。

このように、一級建築士でも寸法の間違いや、どう考えても現場で納まらない図面を描くような「うっかりミス」は結構やっている。ミスがないほうが少ないくらいだ。

その図面をもとに多くの職方が「自分の責任範囲だけの仕事をし、自然環境の中で建てられる住宅」に、「ミス」や「欠陥」が隠されていないと思う方がどうにかしている。

だから、設計事務所の「先生」に設計と監理を全て任せるよりも、設計にもチェックを入れる第三者検査の重要性がこれから増してくるのは間違いない。

うっかりミスを防ぐには、別の人間のチェックを入れるのが一番効果的だ。原稿の誤字・脱字や分かりづらい表現も、自分でチェックすると見落としがちだが、例え新人であっても「何かおかしい」ということは気づく。住宅の設計も例外ではない。


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