第6話  外断熱と健康住宅

いま研究熱心な工務店さんの多くが取組んでいるものに「高気密・高断熱住宅」と「健康住宅」がある。そのほかに特殊な接続金物を使った合理化工法やローコスト住宅など、建材メーカーやフランチャイズが工務店囲い込みのため会員獲得に動いているが、フランチャイズに懲りて、独自路線を進めている工務店は合理化やローコストには懐疑的だ。

「高気密・高断熱」といえば、従来は壁の内部(柱と柱の間)に断熱材を入れる『内断熱工法』が主流だったが、最近は『外断熱工法』と呼ばれる、柱の外側に断熱材を充填する工法が徐々に増えてきている。それぞれの工法を手掛けている工務店や本部が、「当社の工法が最も優れている」というから、一般の消費者はもとより、専門家でもどちらが優れているのか判断がつきづらい。それぞれメリットがあればデメリットもある。Q値やC値といった数値で性能を計ることもできるが、数値を追うあまり、新車1台分割高になったという笑えない話も聞く。

外断熱工法を熱心に推進するある工務店社長とじっくり話をする機会があった。この社長は、「これまでの家づくりが間違っていた。結露のない家を造るのは工務店の良心として当然であり、そのためには高気密・高断熱、なかでも外断熱工法が優れている」というものだ。確かに、地球温暖化の問題等もあり、家庭での省エネルギーへの取り組みは必要で、断熱性能を高め、適切な換気を行なうとほとんど結露は防ぐことはできる。室内の温度差が少なくなることで、日本人に多い脳卒中など足元が冷えることで起こる病気や事故も減らすことが可能だ。

一方で、お客様のニーズとして、いわゆる新築病と呼ばれる健康被害への関心も高まっており、木材や左官材料など、旧来から日本の住宅に使われてきた自然素材で出来た家を志向する人も増えてきている。住宅性能評価制度でも、「空気環境」の等級を意識するお客様が統計上も増加傾向にある。この工務店の社長もご多分に漏れず「健康住宅」にも取組んでいる。

最近、柱や梁などの構造材に集成材などの加工品、工業製品も増加している。無垢材でも、呉市にある中国木材の『ドライビーム』のように、外材に特殊な加工を施し、狂いの少ない乾燥材として出荷しているメーカーも多い。この社長の理論によると、「無理に矯正した加工製品は例え無垢材であっても自然素材ではない。日本の住宅に外材を使うようなことではダメだ。世の中にインチキな商売が多すぎる。私は顧客のために本物の住宅を供給する。」と大変な勢いだった。

ちょっと待って欲しい。社長が進めている『外断熱工法』の断熱材は、れっきとした工業製品で、以前はフロンガスを使って発泡させていた。しかも、難燃性といいながら、燃えると有毒ガスを発生させる。工業製品は出荷時が最も精度も性能も高く、次第に劣化していくことは、無垢の木がいかに強いかを語る社長は百も承知のはずでは・・・。

まじめで研究熱心な工務店経営者ほど、技術や根拠を追い求め、矛盾を抱えてしまうことが少なくない。大手建材メーカーに感化された専門家が増えていくことは業界にとっても損失だ。

大手建材メーカー系の高気密・高断熱工法を手掛けた住宅の完成見学会。
C値(隙間相当面積)を同業者間で競うことにより、施工技術のアップに繋がることもあり、技術を数値化することのプラス面も評価したい。


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