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若本修治の住宅コラム

2017.3.20 第130話

地価上昇と車でしか行けない巨大ショッピングモール

先頃発表された地価公示によると、三大都市圏以上に地方の政令指定都市の地価が上昇しているということが明らかになった。私が住む広島市も、住宅地、商業地ともに上昇地点が目立ってきている。すでにこれから人口減少は明らかで、土地需要の減退も避けられない状況にも関わらず、売る側が少なく、買いたい人が多いことが、需給バランスを崩して不動産価格の上昇をもたらせている。

 

大都市圏の地価や建設費の上昇によって採算が悪化したマンションデベロッパーや建売業者、パワービルダーなどが、値ごろ感があり、一定のマーケット規模のある地方の政令指定都市に進出して、土地勘のないままにまとまった土地を買い漁るから価格上昇圧力が高まっている。そんな状況に加えて、戸建て部門の着工数の落ち込みを、分譲地開発によって建築条件を付けて、まとまった契約数を確保しようと大手ハウスメーカーも市街地の工場跡地や古い官舎の売却などの入札に積極的に参加しているから、一般市民が手ごろな価格で自由に注文住宅を建てられる用地は、郊外で売出し中の宅地造成地以外、ほとんど流通しなくなっている。それでもバブルの頃と比べて不動産価格は下がっているから、当時を知っている土地所有者は、例え空き家や駐車場でしか利用できていなくても、もっと上がると思って手放さず、プロの業者は買おうとしない。

 

商圏や人口密度無視の大型商業施設

 

既成市街地では地価が高くなり、駐車場の確保もままならないため、全国チェーンの総合スーパーなどは、より広く安い土地を求めて郊外で大型化してきた。それでもこれまでは近隣に一定規模の人口密度があり、徒歩や自転車でアクセスする買い物客もいるのが一般的だった。商圏内にどのくらいの後背地人口が見込めるかは、いかに大きな小売流通チェーンであっても、新規出店の判断材料としてシビアに調査して計算していたはずだ。それは駅前の好立地にある百貨店売上の減少を見ても、地方ではオーバーストア気味で消費者の購買力が増えていないのも明らかだ。

 

しかしマンションデベロッパーと同じく、拡大志向が止まらない巨大流通チェーンは、新規出店を続けるしか事業拡大が見込めず、競合他社との競争も激しくなってきたことから、今や売り場面積競争が勃発した。巨大化するほど遠くの商圏から人を集めなければならず、採算が合う巨大な土地はさらに開発が抑制されてきた郊外の市街化調整区域に広がり、とうとう車でしかアクセスできない人が住んでいない場所で忽然と巨大ショッピングモールの建設が進むようになって来た。その結果、近隣型の地元食品スーパーなどは大打撃を受けて閉店や撤退が相次ぎ、高齢化も相まって団塊世代が75歳以上になる2025年には「買い物難民」が続出することさえ懸念されている。

 

近い将来このような状況が訪れることは、もちろん行政は把握していることだろう。車でしか買い物に行けない場所に巨大な商業施設を誘致することは、インフラ整備に税金投入してさらに買い物難民を増やし、買い物のための移動にガソリンを消費させて、そのお金は地域に循環せずに中東の産油国を潤わせるだけだということは、子供だって説明すれば理解できる。しかも雇用はほぼ非正規のパートで20年も経って人口が減り、売上が下がってくれば、簡単に全国の店舗の統廃合を検討し、撤退の意思決定も素早くなされるだろう。それはすでに全国各地で起こっている。

 

施設が巨大化するほど、撤退した時の跡地利用は地域に大きなダメージを与える。しかも、そうなるとさらに買い物難民が深刻になるだろう。地方の衰退を加速させるトリガーを弾きかねないという自覚がないのが不思議だ。

広島市郊外に建設中の大型ショッピングセンター。人口減少だけでなく、アマゾンなどのeコマースから宅配の高度化など、将来大型商業施設は苦戦するだろう。
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