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若本修治の住宅コラム

2017.8.20 第134話

地域経済が”川の流れ”だとしたら・・・。

以前は時代劇や歴史を扱った番組などはほとんど見なかった私も、最近ではNHKの大河ドラマのほかBSプレミアムの『英雄の選択』など、歴史の転換期に登場した人物を描いたドキュメンタリーなども良く観るようになった。最近の大河ドラマは、誰もが知る戦国大名や天下人ではなく、大国の間に挟まれ、常に領地の安堵を脅かされる小さな国の領主・国衆が主人公に選ばれている。吉田松陰しかり、大名間の争いに巻き込まれた真田家や井伊家もしかりだ。いかにして混乱の世を生き抜いたのか、経営やマーケティング戦略に置き換えてみてるととても興味深い。

 

それは、全国ネットの大手ハウスメーカーと同じように、総合展示場に出展し、広告宣伝費を使ってモデルハウスに来場させ、建築知識の乏しい営業マンを“兵士同様”に雇い入れて一斉に自宅に訪問させて契約を迫らせるということではない。まるで城主になったようにお城(=モデルハウス)を構え、兵士(=営業マン)を配備して、領内から年貢(=契約)を取りたてようとしても、もう年貢を納める農家(=住宅取得者)も水田(=敷地)も減る一方だ。下剋上の戦国時代よろしく、武士同士が領地や年貢を奪い合っていても、もはや領地はやせ衰えていくばかりだろう。

 

フロー経済は「川の流れ」

 

私たちが真田家や井伊家などの小さな国の領主として、自らの商圏を見てみるとどうだろう。日本のGDPの伸びなど一切関係なく、県や市町村など地元自治体内の経済動向、景気のほうがよほど重要だ。経済数字ではなく、川に見立ててみるとよりイメージしやすくなる。鉱工業の出荷額や小売流通業の販売額などが県内GDPとしていくつかの大きな川に分かれているが、6割以上を占める「個人消費」という川も地域にとっては一級河川といっていいだろう。

 

個人消費の中で大きな流れは、やはり住宅着工統計に見られる地元の住宅需要。私が住む広島県でいえば、分譲や給与住宅などを除く一戸建て(=注文住宅)で年間約6千棟の需要がある。平均2,500万円だとしても1,500億円の水量のある川が、比較的安定して地域を流れている。税金を投入することも公務員を動かす必要もなく、確実に毎年一定の水量は流れている。起業促進やベンチャー育成、子育て支援や移住促進・観光対策、イノベーション推進や産業団地造成などの事業に投資したお金は今や、どれだけ未来の税収や雇用につながるか不透明だが、住宅需要は確実に地域の川に流れ込み、流域を肥沃な土地にしてきた。しかしこのフローの水は、少しずつ減っていくのは確実だ。

 

調査機関が調べた建築確認の申請状況によると、広島県内で県外大手が棟数ベースで4割強、昨今の大手の平均単価は3,500万円になっているということから、金額ベースでは5割以上の実需が県外に流出していると想像される。固定費が大きく客数が減っていけば、企業としては客単価(1棟の販売価格)を上げるしかない。幸い適正な価格も、見積明細も分からない相手への商売なので、地元の工務店に頼むより平気で2割高く契約し、県外に持ち出している。

2011年度の広島県の住宅着工データをグラフ化。全国ネットの大手ハウスメーカーで「カンナ社長」のアキュラホームが年間90棟の実績。もっと有名な三井ホームや住友林業、パナホームやトヨタホーム、ヘーベルハウスにスウェーデンハウス、ミサワホームなど「下位の展示場出展メーカー」は、もっと実際の棟数は少ないということ。

 

まるで地域経済の川に給水ポンプを持ち込み、工業用水として大量に地域外に汲み出しているようなものだ。住宅建設という経済波及効果の高さや雇用創出、技術者の育成や税収の地域循環など、行政はこの川の効能を考えることなくこの水がより高く売れる先に水を譲っている。高く売れても地域の税収にはならず、逆に地域住民の財布から割高なお金を支払わされているだけだ。本気で地元経済を考えれば、地元自治体も地方政治家も発想の転換が必要だろう。まずはこのフローの水の流れを変えることを次号で考える。フローが変わればストックが変わる可能性も出てくる。

 

ダブルスネットワーク株式会社 代表取締役 若本 修治(中小企業診断士)

広島の中心部を流れる元安川。数多くのスキー場がある県北から流れる太田川から豊富な水量が広島市内に流れ込んでいる。
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