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若本修治の住宅コラム

2017.4.20 第131話

長期に亘る土地活用と建物用途。

日本は長期的な「人口減少社会」に突入し、2030年の人口推計では1億1,662万人という数字が出ている。
2010年の日本の総人口から、たった20年で1,100万人以上も人口が減ってしまうということだ。数字だけではまだ実感できないものの、私が住んでいる中国地方の人口が5県で約750万人、四国地方が約400万人ということを考えると、今後20年間で今の「中四国に誰一人住まなくなる」ということをイメージしたほうが分かりやすい。

 

もちろん、北海道や東北など、三大都市圏以外は、急速に人口減少社会が顕在化してくるが、日本から中四国の土地が消えてしまっても、今の土地利用がひっ迫することがないという状態が、将来に亘って続くということ。人口だけでなく、高齢者が増加すれば購買力は落ち、当然今の人口規模や消費支出を前提に地方に出店してきた大型商業施設は、経営が成り立たなくなり地域から撤退していくだろう。地元に本社があり、地域に育てられた企業であれば、雇用も含めてそうやすやすと撤退は出来ないが、他地域からテナントとして出店した企業は、地域の衰退とともに、いとも簡単に撤退していく。それは「事業用借地」で進出した大型ショッピングセンターや大規模店舗も同様だ。

 

長期的な土地活用とは

 

左の画像は、私が住む広島市の平和大通り沿いの角地に建つテナントビル。広島県が、県所有の公有地に大手信託銀行2行と『土地信託契約』を結び、1992年に竣工した20階建ての複合ビルだ。資産運用や土地活用のプロである信託銀行に30年間の土地活用を預託し、テナント料の中から土地所有者の広島県に配当を行うという計画だった。しかし、このような一等地にも関わらず、竣工から10年も経たないうちに事業計画が破たん、残りの10年間で入居率が9割を超えたとしても、最終的に70億円を超える借金が残るとして、大問題になっている。その借金は、配当も出さず事業を破たんに導いた信託銀行からの借入れで、最終的に税金から返済しなければならないという。

 

このように、都市の中に残された恵まれた一等地で、プロを自認する大手信託銀行が、豊富な資金と人材を擁して綿密に計画したテナントビルが、今、ほとんど空きテナントがないほど満室で、それでも30年間の収支で70億円もの赤字が確定しているという状況は、今後の土地活用の難しさを示唆している。バブル崩壊という不動産マーケットの激変があったとはいえ、これからはそれ以上の不動産マーケットの縮小と激変は続くと容易に予想されるだろう。

 

そう考えると、長期に亘る土地利用で最も安定し、安全な不動産経営は、「住居系」ということになるのではないだろうか?特に『不動産信託』のように長期に亘って不動産から収益を得て、投資に対するリターンを安定化させるためには、中低層で高密度の住宅地としての土地利用が、最も将来に亘って安定的な需要が続くと考えられる。中高層の巨大なテナントビルは、建設投資も大きく、投資回収のために家賃が固定化されてしまい、テナントが空き始めると加速度的に経営が悪化していく。用途の変更や解体にも大きな負担が必要で、繁華街やオフィス街の移動によって街が衰退すれば、負の遺産として問題が残るばかりだ。

 

今、広島市でも『立地適正化計画』が策定されようとしている。しかし単に地図上で建物の用途や土地利用規制などを決めるのではなく、過去の失敗に学び、人口動態予測も含めて長期に亘って持続可能な「サステイナブル・コミュニティ」づくりを目指したい。でなければ、将来大きな禍根や負債を残すだけになりそうだ。出来るだけ変化に対応できる工法を使い、低層高密度な土地活用が求められる。

広島市の郊外の山林を切り開き、巨大なショッピングセンターが建設されている。首都圏に本社がある商業施設運営会社が、アウトレットモールやシネマコンプレックスなどの複合商業施設を計画している。すでに周辺の団地は高齢化と空き家の増加で悩まされている。

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