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若本修治の住宅コラム

2002.11.18 第3話

見積比較(2)

今回、広島の工務店5社に協力いただき、新築工事の相見積を行なった。同じプラン、積算(部材の数量)や使用部材も明細まで記入したものに工務店側が単価を入れ、集計だけすれば見積金額がでるように事前に準備した。総額で最も安い企業でも、個々の工種ごとでは必ずしも安いとは限らず、最も高い企業でも、工種によっては安くできるものもある。

 

マツダをはじめ、海外との厳しい競争にさらされる製造業であれば、原価の見直しや業務の改善は日常的な継続的活動だ。最近では「世界最適調達」といわれる、従来の系列を飛び越えた取引先の開拓も進んでいる。建設業界は、海外との競争にさらされなかったことが、構造改革を遅らせ、未だに下請け企業との慣れ合いも見られる。例えば古くからの付き合いで、元請工務店に坪単価1万5千円で見積を提示していた専門工事業者は、「効率化したので1万2千円にします」と自らは申し出ない。しかし、発注量の見込める新規の取引先を開拓するためには、「坪単価1万円でもやらせてください」と売り込んでいく。

結局は、長年付き合っているから、いい仕事を安く提供しているとは限らないのだ。これは、先代から付き合いのあるという一般のお客様が地元の工務店に普請を頼むときも同じである。

 

ミスタービルドという住宅リフォームのフランチャイズチェーンのスーパーバイザーをしているときにも、加盟店オーナーから、広島市周辺にあるショップの工事単価が違うのはおかしいのではないかという意見があった。そこで安佐南区、佐伯区、廿日市市のショップ5社に協力していただき、同じ増築物件の見積をしてもらったことがあった。このときの記録はすでにないが、最も安いショップで7百万円弱、最も高いショップで9百万円強だったと記憶している。しかし、各加盟店がどのような書式で見積をするのかを調査する目的もあり、それぞれの見積書式で提出してもらったため、クロスやフローリングといった仕上げ材の単価など一部を除いて、どこがどう安いのか判断が困難だった。

 

このとき、加盟店オーナーのリーダー格で、技術志向の高い工務店社長はこのように説明した。「当社は、リフォームであっても1本づつ木拾いをしており、現場で余る垂木(屋根の下地組み材)も1束余るかどうかというシビアさで見積をしている。他のショップのように、木材費坪いくらといったような見積ではきちんとした利益管理はできないだろう。」しごく当然の意見ではあったが、同社の見積でも、大工工事は床面積あたりの坪単価であった。

 

木材やプラスターボードも、お客様のお金で購入の代行をしているので、現場でたくさんの材料が余るのも問題は多い。しかし、数百円の材料も無駄にしないようシビアに見積っても、大工の手間(労働生産性)にはシビアさが感じられない現場がいかに多いことか。ここにメスを入れることで、工事費は劇的に下がる。例えば日当1万5千円の大工さんが90日掛かる工事を、生産性を向上し60日で仕上げれば日当2万円でも総額は安くなる。米国では、住宅の価格は日本のおよそ半分だが、技能工の賃金は、日本の大工と比較してほぼ倍というデータもある。

建築素人の個人が、複数の工務店を訪ねて見積を要求しても、比較可能な詳細見積は容易に集められないだろう。
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