2004.6.07 第21号
ゼロエネルギー住宅を考える ~地球環境に本当にやさしい?~
『住まいづくり専門コンシェルジェ』が綴る家づくり総合マガジン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.021━2004.06.07━
《週刊》 家┃づ┃く┃り┃で┃泣┃く┃人┃・┃笑┃う┃人┃
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~第21号~
◆家づくりは人生最大の「事業」
◆事業を成功に導くための、プロのコンサルタントの助言
◆あなたも「笑う人」になって豊かな生活を送りましょう!
《発行部数2,246部》
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⇒このバックナンバーであなたの家づくりの常識が変わります!!
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【もくじ】
・ゼロエネルギー住宅を考える
・オランダゆめ風景
・今週のお勧めメルマガ
・お勧めBOOKS
・今週のワンポイント・アドバイス
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このメルマガでは、
現場監督からスタートし、中小企業診断士を取得して、
200社を超える住宅会社の経営指導をしてきた実戦派コンサルタントが、
家づくりという大きな「事業」に失敗しないノウハウを提供していきます。
どこにも影響されない中立的な立場で、住宅業界の実態も伝えます!
あなたの家づくりのセカンドオピニオンとしてお役立てください。
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こんにちは。発行者の若本です。
メルマガ18号でお伝えした、山口県岩国市の『錦帯橋』架け替えが、
NHKの『にんげんドキュメント』で放送されていました。
●NHK にんげんドキュメント 『大工が挑んだ錦帯橋』(6月4日放映)
http://www.nhk.or.jp/ningen/
200メートル弱の川幅に、美しい五連のアーチ橋を木造で架けていきます。
「先代の大工達を超える仕事をしよう!」と、大工仲間を説得する棟梁。
50年前の昭和の架け替えよりも、アーチ頂上の高さを18mmだけ高くして
より美しいアーチにしようという、徹底した職人としてのこだわりが、
画面を通しても、ひしひしと伝わってきました。
一大プロジェクトが終わり、
彼らはまた、名もない工務店の社長や一大工として、
住宅の仕事に復帰していくのです。
その技能を生かす仕事のない、プレカットやボード張りの職人として・・・
ミスマッチが続いています。
http://www.cms-hiroshima.com/kintai_brg.htm
では、今週の本文の始まりです。
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▼ゼロエネルギー住宅を考える ~地球環境に本当にやさしい!?~
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ここ数年、太陽光発電を登載した住宅が増えてきています。
『ゼロ・エネルギー』とか『光熱費ゼロ』など、大手住宅メーカーも、
環境意識の高い消費者を意識した広告を展開しています。
自動車も、トヨタの『プリウス』を始めとしたハイブリッドカーや
燃料電池車など、石炭燃料に頼らない省エネの製品を開発しています。
消費者も企業も、環境を意識した取り組みが欠かせなくなっているのです。
『太陽』という、無限のエネルギーを利用して、
光熱費の掛からない住宅を建てる・・・
しかも、雨水などを利用して水道料も節約する。
それ自体は理想的な循環システムかもしれません。
製品の製造から、運搬、使用、廃棄に至るまで
本当に環境に負荷をかけないのであればの話ですが・・・
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光熱費ゼロってホント?
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私は以前、各地の電力会社と『電化住宅』の推進をしていました。
各地域の地元工務店が『電化住宅』を取組んでもらうために、
研修を開催したり、イベントの支援などをしていました。
西日本を中心に13の府県、400社を超える電化住宅推進の
工務店ネットワークが出来ました。
今でこそ『オール電化』という言葉も市民権を得てきて、
中国地方の新築の4割は『電化住宅』となってきました。
しかし、10年前の電力会社は、深夜電力を利用する電気温水器だけ
採用してもらえばいいということでした。
地球温暖化の影響や都市への人口集中などで、真夏の昼の電力需要が高まり
発電能力に余裕がなくなってきたのです。
数年前のアメリカ西海岸での大停電のように、
日本でも、ピーク時には大停電に陥るリスクがあるのです。
家庭のブレーカーが落ちるのとは訳が違う状態です。 (>_<)
出来るだけ、「昼間」使う電気を「夜」にシフトしたい!
電気は貯めることが出来ないので、電気温水器やエコアイスのように
深夜に水を「お湯」や「氷」に変えて冷房や給湯に使うことを推奨しました。
だから、昼間の電力需要をあげる「クッキングヒーター」や、自社の電気を
買ってくれない「太陽光発電」は、実は電力会社にとって消費者に勧めたい
商品ではないのです。
(もちろん商品自体も電力会社の売上にはなりません)
▽ ▼ ▽
私が担当していた、工務店やビルダーも随分「太陽光発電付き」電化住宅
を勧めていました。やはり、光熱費があまり掛からないという説明です。
見学会にも立会い、S社、K社、M社など太陽光発電システムのメーカー
の営業担当者から、現地で詳しい話を聞きました。
「光熱費ゼロ」という前提条件として、
▼太陽光発電システム
▼オール電化
▼高気密高断熱
の3つがセットとなっています。
ガス併用住宅や、隙間だらけの既存の住宅に太陽光発電を登載しても
費用対効果を考えたときには、回収に30年以上かかるかも知れません。
もちろん、環境税を払うという意識の方はこの限りではありません。(^_-)<☆
では、3つの条件が揃えば光熱費はゼロになるのでしょうか・・・?
★。、:*:。.:*:・’゜☆。.:*:・’゜★。、:*:。.:*:・’゜☆。.:*:・’゜★
ここに、もうひとつ条件が隠されていました。
『電力会社が、わざわざ高い料金でこれから先も電気を買い続ける!』
というものです。
どの電力会社も、時間帯別に電気料金の体系を変えています。
オール電化の場合、深夜が安い代わりに日中の電気料金が少し高く設定され
ています。これは、日中少しでも電気の利用を控えてもらいたいからです。
この電気料金の高い時間帯が太陽光で発電して、
電力会社に買い取ってもらう単価となっているのです。
安い深夜電力で温水をつくり、
仕事で日中いない間でも太陽光で発電し、
銀行口座に電力会社から高い単価の電気料金が振込まれるのです。
「電力会社さん、ありがとう!!」 (^o^)丿
でも・・・
電力も自由化が進み、ガス会社もコジェネレーションや燃料電池など、
ガスを供給しながら戸別で発電するシステムを開発しています。
通信業界の自由化が、この10年通信料金を大きく変えてきたように
電力料金も、自由化の波が押し寄せます。
元々、電力会社は民間企業なので、
収益を度外視した電気の買取りをいつまで続けるのか・・・
(ちなみに電力会社は通信事業の『アステル』から完全撤退します!)
そして、もうひとつ・・・
太陽光発電システムに対する補助金が減っています。
一般家庭で利用される4KW程度のシステムで
■14年度は40万円(1KWあたり10万円)
■昨年度は36万円(1KWあたり9万円)
■そして今年度は20万円(1KWあたり5万円) 激減!! (>_<)
[シミュレーションしてみよう!]
例えば光熱費がゼロとして、年間18万円程度が浮く計算。
(一般家庭の平均的光熱費を試算)
それを実現するための3つの条件の投資額が、以下のような金額だったら、
●太陽光発電システム・・・約250万円
●高気密高断熱工事・・・・約200万円(断熱施工+高性能サッシ)
●オール電化・・・・・・・・約50万円(温水器+IH)
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《約500万円》
※あくまで例なので、仕様によって異なります。
※住宅会社は上記のようなオプション表示はしないでしょう。
でも「純粋なアップ額は?」と聞き出してみましょう!
投資回収期間は、「500万円÷18万円=27.8年間」となります。
この30年近くの間、
1.電力会社が「高いままの電気料金体系」で買い続け、
2.「燃料電池ほか効率の高い発電システム」がずっと登場せず、
3.「パワーコンディショナーなどの機器」が
耐用年数をはるかに超えてずっと動き続ける・・・
という条件を満たすことができれば、あなたの投資は回収され、
30年後くらいには収益を生み出すようになるでしょう。
あなたは、それでも光熱費の支払いが減ることを住宅に望みますか・・・?
30年間に、もっと高効率で低コスト、
省エネルギーの製品が出てくるかも知れないのに・・・
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環境にやさしい断熱材?
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太陽光パネルのように、人工的な機械によって太陽エネルギーを利用する
ことを、『アクティブ・ソーラーシステム』といいます。
あくまでもエネルギー源が「太陽という無限のエネルギー」であって、
装置をつくったり運搬、設置するために、別のエネルギーが必要です。
太陽熱温水器も、同様です。
同じ太陽の光や熱を利用しながら、機械装置を必要としないものが
『パッシブ・ソーラーシステム』といいます。
自然素材の特性を利用したり、設計上の工夫で、
冷暖房コストを抑えた家づくりが可能です。
石やコンクリートのような「蓄熱容量」の高い素材に熱を蓄えて
暖房として利用したり、通風や遮光、気化熱などを利用して涼を取るなど、
昔の日本家屋の知恵を現代流にアレンジしたものです。
ポイントは、蓄熱層と断熱性能(つまり断熱材)です。
機械装置はいらず、ランニングコストも基本的に掛からないシステムです。
「一定の温度を保つ」といった機械コントロールはできないものの、
環境に負荷をかけない、省エネ住宅が出来上がります。
省エネを実現するため、『高気密高断熱』住宅も増えています。
多くは発泡系の断熱材を使った充填断熱や外断熱です。
建材メーカーのこうした工業製品に反発して
設計事務所を中心として、自然素材を使った住宅も増えています。
上記『パッシブ・ソーラー』も設計事務所中心に取組まれているのです。
彼らは断熱材も、最終的に土に還る「天然材料」を志向しています。
例えば、炭化コルクやウール(羊毛)、セルロースファイバーなど・・・
自然素材だから、本当に環境にやさしいのでしょうか?
▽ ▼ ▽
私は、(財)日本環境財団の『エコロジーハウス推進機構』の事務局にいた
知人から、面白い断熱材を紹介されました。
元々、床暖房システムの開発と施工をしていた富士環境システム(株)が
現場から発想した、ダンボールのようなパルプ断熱材です。
前田社長からその開発秘話を聞いて、断熱材の奥深さを知りました・・・
この話は次回に!
●富士環境システムのホームページ
http://fek.jp
⇒次週に続く
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▼今週のお勧めBOOKS
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若本修治が読んでみて、家づくりに参考になる本を紹介します。
●誰も教えてくれなかった宅地・地盤の話 橋本光則 [ザメディアジョン]
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4902024012/cmshiroshima-22
↑私の実家は土木工事をやっているので、建築会社や設計者が、建物に比べ
地盤に関心が薄いことが前から気になっていました。
欠陥住宅は、建物自体よりも「地盤」に起因しているケースが多いのです。
私がマンションを選んだときの基準も、「地震」「地すべり」「津波」
「落雷」「集中豪雨」「台風」「隕石」そして「防犯」において、最悪の
ケースでも、家族を守れる確信が持てたからです。(案外少ないのです)
※実は数年前、わが家のすぐ近くで小さな「隕石」が落ちました!(^^ゞ
実は、建物自体よりも、地形と地盤を読むことがとても大切なのです。
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┃若┃┃本┃┃の┃┃本┃┃棚┃今週のお勧めBOOKSが本棚になりました。
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↓ ↓ ↓
http://www.cms-hiroshima.com/mailmag/books2.htm
アマゾン・ドット・コムですぐに書籍が購入できます。
私もよく利用しています!! (^_-)<☆
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▼今週のワンポイント・アドバイス
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家を建てようとするとき、多くの人は金銭感覚が麻痺するようです。
そして、建てる側はあくまで「商売として」家づくりをしている
ということを施主側も忘れているような気がしてなりません。
大工さんや職人さんは、家族の生活費を稼ぐために仕事をしています。
だから、商売として合わなくても、錦帯橋の架け替え事業にも参加します。
お客さんから言われた仕事を、予算に合わせて完成させるのが職務です。
彼らは「商売っ気」はあまりないのです。
むしろ「仕事の満足感」を求めます。
しかし、時として仕事の効率が悪い・・・(-_-;)
では、「商売として」やっている住宅会社はどうでしょう。
他の業種、小売業やサービス業、飲食業などと同じです。
[考えてみましょう・・・]
・なぜ、ハンバーガーだけ食べたいのにポテトを勧めるのか・・・?
・スーツは1着だけ欲しいのに、なぜ2着目が半額以下なのか・・・?
・床暖房までガスにすると、なぜ基本料金が大幅割引されるのか・・・?
・家族で使うと、携帯料金が安くなる(家族割)のは、なぜ・・・?
・なぜポイントカードを貯めると、買い物が安くなるの・・・?
・
・
・
難しい言葉でいうと「客単価を上げるため」です。
あるいはリピート客を増やすためです。
接客に掛かるコストが変わらないのであれば、ちょっとしたお買い得感で
より多くの買い物をしてもらうことを考えます。
すぐには不要と思われるものでも、財布を開かせるのが「商売」なのです。
裏を返せば、それほど、新規のお客さんを獲得するコストが高く、
すでにお金を払うと決めた人に、さらに買い物をして欲しいのです。
そのほうが儲かるのです。
これは、商売をしていると誰もが持つ欲求なので、否定はしません。
皆さん自身も少なからずこの恩恵で、生活費を得ているはずですから。
しかし、一般の商売はせいぜい数百円から数万円の「ついで買い」です。
「何でこんなもの買ったのだろう?」と後悔しても家計に影響は与えません。
住宅の場合は、数十万円から数百万円を
本来の工事費とは別に、余分に購入してもらうことが可能です。
だから、「坪単価○○万円」の集客コストがペイできるのです。
太陽光発電や高気密高断熱も、結局は客単価を上げるための
「方便」なのかも知れません。
このような設備投資の結果、回収に何年かかったのか誰も確かめないし、
そもそも業者側も、シビアに採算を考えた提案はしていないのだから・・・。
まずは、最低限要望を満たしたプランと見積を求めましょう。
その後追加の提案をもらえば、コストアップ分が一目瞭然です。
初めから、付加価値の高い住宅を求めると、コストアップ分は不明瞭です。
まるで、外税表示を内税表示に変えて、
消費税アップの負担増を感じさせないよう準備した今回の税制のように・・・
■参考情報⇒ http://www.cms-hiroshima.com/clum/vol_17.htm
↑コラム『無用の長物』
(若本が書いたコラムに関連知識を載せています)
【 編|集|後|記 】
太陽光発電システムを採用すると、省エネ意識が高まり
電気の使用量自体が落ちるといわれています。
まめにコンセントを抜いたり、待機電力を切ったりと・・・
売電をしたら、光熱費ゼロどころか儲かることさえあります!
しかしそれで節約できる金額に対して、
あまりにも大きい投資額だと私は思います。
例えばキッチンやリビングに、現在の電気の使用料金が、
リアルタイムに計算できる電力メーターのデジタル端末が付いたら・・・
(壁付けの給湯用リモコンのようなイメージです。イメージできましたか?)
電気の使用量だけでなく、電気料金も見るみる上がっていきます。
ガソリンスタンドでメーターが回っていくように。(*_*)
それが、タッチパネルで階ごとに確認できれば、
2階のエアコンの切り忘れなどなくなるかも知れません。
確実に省エネ意識は高まり、無駄な電気は使わないでしょう。
太陽光発電などと比べ物にならないほど少ない投資で、
効果抜群だとは思いませんか・・・?
夏の昼間のピークカットにも効果ありそうです。v(^_-)<☆
では、また来週♪
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◇ 次回予告
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▼ エコロジー住宅を考える ▼
~サスティナブルハウジングとは?~
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●このメルマガでは、
『住宅コスト削減術』や『業者選びのコツ』、『欠陥住宅を防ぐ方法』
から『住宅ローン攻略法』まで、生涯にわたって豊かさに影響する
住居費のコントロール方法を週刊で提供していきます。
【発行者が携わっているサイト】
▼ 家づくりのトータル支援サービス『住宅CMサービス広島』
http://www.cms-hiroshima.com/
▼ 不動産・住宅取得の学習サイト『住まいのキホン・ドット・コム』
http://www.sumainokihon.com/
▼ 住宅にユニクロ方式の生産システム『セルフ・ビルド・プロジェクト』
http://www.koukoku-ya.com/sbp/index.html
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