2004.11.01 第39号
アパート経営のリスク ~資産活用ブームの落とし穴~
『住まいづくり専門コンシェルジェ』が綴る家づくり総合マガジン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.039━2004.11.01━
《週刊》 家┃づ┃く┃り┃で┃泣┃く┃人┃・┃笑┃う┃人┃
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~第39号~
◆家づくりは人生最大の「事業」
◆事業を成功に導くための、プロのコンサルタントの助言
◆あなたも「笑う人」になって豊かな生活を送りましょう!
《発行部数2,448部》
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【もくじ】
・アパート経営のリスク
・今週のワンポイント・アドバイス
・編集後記
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このメルマガでは、
現場監督からスタートし、中小企業診断士を取得して、
200社を超える住宅会社の経営指導をしてきた実戦派コンサルタントが、
家づくりという大きな「事業」に失敗しないノウハウを提供していきます。
どこにも影響されない中立的な立場で、住宅業界の実態も伝えます!
あなたの家づくりのセカンドオピニオンとしてお役立てください。
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20年ぶりに、図柄を刷新したお札が11月1日から発行されました。
「お札」といえば聖徳太子だった時代から、もう20年も経つのですね!
第一生命経済研究所によると、新札発行の経済効果は
昨年度と本年度の合計で9905億円に達すると試算しています。
銀行のキャッシュディスペンサーや、自動販売機など、
お札が変わることで、設備投資も誘引できるのでしょう。
来年から徐々に縮小される『住宅ローン減税』も、
住宅投資のための景気刺激策として、長らく利用されてきました。
経済はお金を中心に動くのは仕方ないことかも知れません。
しかし、個人はあまり「お金の魅惑」に惑わされないようにしたいものです。
保険金詐欺や贈収賄など「お金の魅惑」による犯罪が増えています。
お金はなければ困るものですが、
今回の新潟県中越地方の震災を見ていても、
お金よりも大切なものがあるような気がしませんか・・・?
今、不動産投資ブームが全国に広がっています。
バブル期のように、短期的な売却益目当てではなく、
長期の運用益によって、毎月『不労所得』を得ようというものです。
書籍やインターネット上では、
「賃貸経営は最もリスクの少ない事業だ!」と、
不動産投資ブームをあおってさえいます。
本当に、賃貸経営は将来の年金代わりに収益を生み続けるでしょうか・・・?
今回のメルマガでは、賃貸経営のリスクについて検証してみます。
では、今週も最後までお付合いください。
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▼アパート経営のリスク ~資産活用ブームの落とし穴~
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「サラリーマンでも大家さんになれる!」といった
不動産投資やアパート経営の書籍が本屋さんに数多く並んでいます。
不動産投資に限らず「楽して儲かる」的なメルマガも散見されます。
特に、2~30代の若い人たちにカリスマ的な成功者がでているようです。
多くはバブルの狂乱とその後の痛みを実感していない世代でしょう。
投資ブームというのは、必ず最後は誰かが『ババ』を引きます。
誰かの犠牲の上に、儲ける人たちがあるということが過去の教訓です。
冷静に考えて、このブームに一体誰が儲けるのでしょう?
一般のサラリーマンが、にわか投資家になって儲かるのでしょうか・・・?
相手は、百戦錬磨のプロ達です。 (-_-;)
本当に儲かるなら、何故自分たちで賃貸経営をしないのでしょうか?
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家賃保証で安心!?
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総務省の住宅・土地統計調査速報によると、
平成15年10月現在の総住宅戸数は、5387万戸です。
では、全国の世帯数はどのくらいあるのでしょう・・・
【データで見る世帯数と住宅戸数】
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■住宅総戸数 5,387万戸 (5年間の増加数 362万戸) 7.2%増
■総世帯数 4,722万世帯(5年間の増加数 286万世帯)6.5%増
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<平成10年~平成15年の増加数>
すでに、全国で6百万戸以上の住宅が余っている状況です。
しかも毎年、新築住宅の着工戸数が110万戸を超えています。
先進国では異常な状態です。(これで不況といえるのでしょうか・・?)
ここ数年、人口の伸びは減ってきました。
少子化の影響で、2006年がピークというデータもあります。
しかし、晩婚化や離婚の増加などもあり、
親世帯と同居しない核家族化も進んで、世帯数は伸びています。
だから新築住宅の着工統計を見ても、賃貸住宅は堅調です。
それだけ、まだまだニーズがあるということでしょう。
しかし、賃貸住宅の伸びはほかに要因があるのです。
それは・・・
▽ ▼ ▽
公共事業の抑制で、建設不況に突入しました。
民間の建設投資に頼ろうとしても、企業も建設投資を抑えています。
残るは、個人の建設投資です。
しかし、役所や法人しか相手にしてこなかったゼネコンや建設会社が、
戸建て住宅の分野に進出しても、ハウスメーカーには歯が立ちません。
5億円、10億円のプロジェクトを動かしていた人たちが、
2千万円、3千万円といった単価で、きめ細かい対応など期待も出来ません。
そこで、アパートやマンションなどの賃貸市場に目を付けました。
金額も戸建て住宅よりも大きく、
「この設備に、壁はこんな仕上げで、色は・・・、予算は・・・」
というような施主からの細かい要望はありません。
建物の細かい仕様や色などよりも、
いくら借入れしていくらの利回りになるか・・・?
自分が住むわけではないので、建物自体はほとんどお任せ状態です。
建設会社にとって、これほど楽に儲けさせてもらえる仕事はないでしょう。
とにかく建物が建たない限りは自分たちの仕事はありません。
「賃貸経営でどれだけ利益が出て、いかにリスクが少ないか?」
を訴えるのが受注の必須要件です。
残念ながら、建物自体の品質や価格は二の次です。 (-_-;)
受注のためには『家賃保証』という切り札まで出してきます。
バブルの頃、ゴルフ場の造成工事を受注したいゼネコンは、
ゴルフの会員券を購入し、開発に掛かる費用の債務保証をしました。
その結果、今どうなっているか・・・皆さん、ご存知ですよね?!
不動産投資ブームの今、同じことを繰り返そうとしています。
とにかく受注が出来れば、リスクは先送りです。
お客さん(オーナー)の空室リスクまで織り込んで提案していきます。
「利回りが高くて、確実に家賃収入がある。
地主にとって、とてもリスクの少ない事業です。」
(本当に、永遠に保証してくれるのなら・・・ね)
しかし、そこにしっかりと落とし穴があります。
ゼネコンや建設会社もバブルで学習をしていました。
自分たちのリスクの少ない時期だけ家賃保証するのです。
家賃保証が終了した後の『空室』が、最も大きな経営リスクと言えます。
結局オーナーだけがそのリスクを抱えることになるのです。 (>_<)
空室のリスク、それを解決するプロがやっぱり登場しました。
『空室対策110番!』
以前、メルマガでも紹介した不動産運用コンサルタントで
現在『空室対策アドバイザー』としても活躍中の竹末治生さんです。
このサイトを見れば、賃貸住宅のリスクがよ~く分かります。
業界の裏まで知り尽くしたプロならではの考察です。
■空室対策110番
↓ ↓ ↓
http://www.kuusitsu110.com
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もうひとつの重大なリスク
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先日、欠陥住宅の調査を行ないました。
築年数が十年未満の木造アパートも数棟ありました。
白いタイル張りの瀟洒なたたずまいです。
ユニットバスの点検口から小屋裏に入り、断熱の施工や筋交い、
雨漏れの跡など、設計図書を確認しながら調査をしていきます。
廊下の点検口を開けたところ・・・
「うわぁ! シロアリだ!」
2階の胴差し(どうさし)の部分にシロアリがいっぱいです。
原因を辿っていくと、どうも雨漏れのようです。
通常、シロアリは土台や束、大引など、1階の床下に発生します。
だから、防蟻処理も基礎から1メートルまでしか行なっていません。
しかし、餌となる養分と湿気があれば、2階でも上がって来ていたのです。
雨漏れの原因は、設計ミスと施工の不具合が重なったものでした。
同じ設計事務所、同じ施工会社で、
数年ごとに計5棟の賃貸住宅を建てていました。
調査の結果、ほぼ全ての建物にシロアリが入っており、
筋交いも指定箇所に入っていないなど、明らかな欠陥住宅です。
大きな地震が来たら、倒壊する危険性もあります。
2階のベランダも放置していると落ちてしまうので、仮補強した状態です。
空室になった部屋は当然入居者はいません。
オーナーも新たな入居者募集は出来ない状態です。
恐らくこのアパートは建替えを余儀なくされるでしょう。
その時に、アパート入居者の立ち退き費用までも、
オーナーが負担しなければならない事態になるのです。
戦後制定された借地借家法は改正されましたが、
賃貸住宅のオーナーと、借りている入居者と、どちらが気が楽でしょうか。
借りているほうは、イヤになれば引っ越せばいいのです。
引越し代以上の経済的不利益はありません。
一方、賃貸住宅のオーナーの不利益は・・・
今回のような大震災で、賃貸住宅がつぶれてしまったら・・・
賃貸経営は、数十年続く事業です。
数十年間、収入が続く可能性がある一方で、
数十年に一度しかない災害や事故、欠陥住宅などのリスクにもさらされます。
数十年先の消費者ニーズも、家賃の動向も影響を受けるのです。
換金性も低い、このような資産運用を、借金してまで行ないますか?
今一度、誰が一番儲かるのかしっかり考えましょうネ! (^_-)<
⇒ 次回に続く
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▼今週のワンポイント・アドバイス
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家づくりは、事業と同じです。
個人の注文住宅も、数千万円の資金調達をして、
初めてのプロジェクトをプロの手を借りながら進めていく訳です。
賃貸住宅への投資は、それよりもさらに高度な事業です。
収益事業として、投資を回収していかなければならない『実業』です。
本当に、投資した経営者が儲かる事業になっているかどうか・・・
利害の無い、中立的なアドバイザーの助言が必要です。
「ウソをついてでも儲かるのは誰だろうか?」
建築費の受注金額に比べて、わずかなコンサルフィーで
ウソをついても、コンサルタントはたいした利益を得ません。
信頼をなくすだけで、次の紹介も新たな顧客も簡単に現れないのです。
うまい話があったときには、勧める本人が実際に手掛けているか、
誰が一番儲かるのか、冷静になって考えましょう。
でなければ、あなたが最も大きなリスクを負うことになるのです。
では、今週のワンポイントアドバイスです。
☆*☆━━━━━━━━━━━━━*☆*━━━━━━━━━━━━━☆*☆
1.不動産投資ブームの原因は、『建てさせる人』が増えたこと。
2.賃貸経営の最大のリスクは、空室の発生。
3.天災や欠陥住宅も、賃貸オーナーだけがリスクをかぶる。
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■参考情報⇒ http://www.kuusitsu110.com/
↑『空室対策110番』
(大手ハウスメーカーで、100億円以上の賃貸物件の売上実績を持つ
元トップ営業マンが書いた、オモシロおかしい業界生情報です!!)
【 編|集|後|記 】
新潟県中越地震では、車で避難生活を送っていた人たちに、
エコノミークラス症候群が襲うという、突然死の報告が伝えられました。
住宅では、いまだにシックハウス症候群の被害は広がっています。
大阪で大手マンションデベロッパーの分譲したマンションで、
高濃度のホルムアルデヒドが検出され、
集団訴訟になったことは以前のメルマガで紹介しました。
今回、「土壌汚染隠し、マンション販売」という記事が目に止まりました。
やはり大阪で販売された大規模マンション敷地内の地下水や土壌から、
環境基準を超える重金属が検出されたというニュースです。
財閥系のこの大手デベロッパーは、汚染を知りながら
「安全上問題ない」として、約500戸のマンションを分譲していました。
宅建業法の重要事項に関する告知義務違反の疑いで強制捜査です。
車に続いて、グループ企業の『法令遵守』意識の低さが露呈した結果です。
『企業倫理の確立』や『コンプライアンス強化』が虚しく聞こえます。
日本経済を引っ張ってきたリーダー達が起こす、不祥事の数々・・・
「自分さえ儲かればお客を犠牲にしても構わない!」
なぜか法律よりも、組織を守ろうという意識が働くのです。
悲しいかな、自己防衛をしなければならない時代です。 (-_-;)
知識武装だけでなく、良きブレーンを持ちましょう。
でなければ、プロには太刀打ち出来ませんよ。
ではまた、来週♪
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◇ 次回予告
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▼ 住宅広告制作の裏側 ▼
~チラシ・パンフレットの正しい見方~
【バックナンバーはこちら】
http://www.cms-hiroshima.com/mailmag/melmaga_bn.htm
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●このメルマガでは、
『住宅コスト削減術』や『業者選びのコツ』、『欠陥住宅を防ぐ方法』
から『住宅ローン攻略法』まで、生涯にわたって豊かさに影響する
住居費のコントロール方法を週刊で提供していきます。
【発行者が携わっているサイト】
▼ 家づくりのトータル支援サービス『住宅CMサービス広島』
http://www.cms-hiroshima.com/
▼ 不動産・住宅取得の学習サイト『住まいのキホン・ドット・コム』
http://www.sumainokihon.com/
▼ 住宅にユニクロ方式の生産システム『セルフ・ビルド・プロジェクト』
http://www.koukoku-ya.com/sbp/index.html
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