2006.1.16 第72号
バリューエンジニアリング ~仕様規定から性能規定へ~
『住まいづくり専門コンシェルジェ』が綴る家づくり総合マガジン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.072━2006.01.16━
《隔週刊》 家┃づ┃く┃り┃で┃泣┃く┃人┃・┃笑┃う┃人┃
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~第72号~
◆家づくりは人生最大の「事業」
◆事業を成功に導くための、プロのコンサルタントの助言
◆あなたも「笑う人」になって豊かな生活を送りましょう!
《発行部数4,067部》
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【今週のテーマ】
・バリューエンジニアリング
・お勧め無料レポート
・今週のワンポイント・アドバイス
・編集後記
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このメルマガでは、
現場監督からスタートし、マネジメントの専門家『中小企業診断士』資格を
取得して、200社を超える住宅会社の経営指導をしてきた発行者が、
家づくりという大きな「事業」に失敗しないノウハウを提供していきます。
どこにも影響されない中立的な立場で、住宅業界の実態も伝えます!
あなたの家づくりのセカンドオピニオンとしてお役立てください。
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皆さん、明けましておめでとうございます。発行者の若本です。
本年も住宅業界の本質を見抜くべく情報を発信していきます。
今回から登録された方も、是非宜しくご購読のほどお願いいたします。
さて、新しい年となったのを機に、
そろそろホームページをリニュアルしようと現在悪戦苦闘しています。
これまでのホームページは、文面もデザインも、
写真や小さな画像まですべて私が加工していました。(ハハハ・・・)
その分いろいろと勉強にはなりました。
15年前にはすでに建築のCGアニメーションなども手掛けていたので、
CADやCG、積算ソフトもひと通り使いこなしてきました。
ホームページをつくるのもそんなに苦にはなりません。
しかし、検索エンジンが進化し、ブログも急増している世の中ですから、
これまでのホームページでは役不足になってきました。
スタイルシートと呼ばれるレイアウトも大変です。
おまけに「ポップ・アップ・ウィンドウ」までがパソコンにブロックされ、
せっかく出している「無料Eメールセミナー」がほとんど表示されません。
5回のセミナーで、家づくりのポイントがよく分かるのに・・・(-_-;)
今回のホームページリニュアルに際して、
メールセミナーの「読者の声」を整理してみました。
とてもいいメッセージを多くの方からいただいていました。
(これまでは「未公開!」)
このメルマガも昨年12月前後から読者が急増して来ました。
読み始めてから、まだ日の浅い方も多いようです。
まずは、無料Eメールセミナーの読者の声からお読みください。
なお、ホームページはまだデザインだけの状態なので、
Eメールセミナー以外はクリックできませんのでご了承ください。
⇒ http://cms-hiroshima.com/cms/mailseminar/readers_voice.html
※今回は、プロの方にデザインや構成をお願いしました。
コンテンツだけは、私のほうで準備中なので、公開は次回お楽しみ!
では、今週の本文の始まりです。
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▼バリューエンジニアリング ~仕様規定から性能規定へ~
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今回は新年早々、ちょっと専門的な話題です。
構造偽造問題などもあって建築基準法の改正も検討されていますが、
公共工事も、従来よりも大きく変わろうとしています。
今や、公共事業も予算が少なくなり、投資額の削減が求められています。
しかし、必要な投資はしていかなければなりません。
そのためには、従来の入札制度だけでなく、
賢くコストを落としていく方法を考えることが重要です。
同じ仕様でコストだけを落とすのは限界があるからです。
(計算書の偽造や鉄筋を減らされてはたまりませんからネ!)
それには、発注者側がすべてを指示するのではなく、
施工者側の知恵や経験を引き出すと効果があがるのです。
施工業者「性悪説」ではなく、事業の「パートナー」という考え方です。
そのひとつの手法に『バリューエンジニアリング』があります。
賢くコストを省く・・・
これは戸建住宅にも応用できるノウハウと考えられますネ (^_-)-☆
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バリューエンジニアリング
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最近の公共事業で注目されているのが、『PFI』と『VE』です。
どんな意味かといえば・・・、
■PFI(Private Finance Initiative:
プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)
公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、
経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法。
■VE(Value Engineering:バリュー・エンジニアリング)
製品やサービスの「価値(Value,V)」を,
それが果たすべき「機能(Function,F)」と
そのためにかける「コスト(Cost,C)」との関係で把握し,
その価値を高めるための手法。
↑ いったい何のこと・・・!?(・・?
公共工事は、基本的に発注者が工事の仕様を決め、
施工者は、その仕様書通りの工事をすればいいという形でした。
これを「仕様規定」と呼びます。
仕様が決まっていれば、どこが仕入れても大差はなく、
技術的な差もあまりつかないため、談合などが繰り返されました。
工事をまんべんなく各社に分配する仕組みです。
設計者(あるいは発注者)が決めた仕様さえ守れば
あとは、施工者は考えずに設計図書通りすればいい!
鉄筋が細かろうと、自分たちの経験から外れようとも・・・
こんなことが続くと、建設業者のモラール(士気)はあがりません。
ただただ、金額の叩き合いにならないよう、談合です。
「うちのこの工法を使えば、もっと安くできるのに・・・」
「この素材だったら、もっといい性能が発揮できるのに・・・」
知恵も経験もアイディアも活かす場所がありません。
それに変わって登場してきたのが「VE」という発想です。
この考え方を「性能規定」と呼んでいます。
つまり、求める効果が同等であれば、
より安く性能の高い提案を採用するということです。
施工者独自の工夫も評価し、差別化を歓迎するのです。
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住宅建設のVE
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テレビや雑誌の影響もあり、
設計事務所で家を建てる人が増加しているようです。
ハウスメーカーの過大な経費を考えると、
設計料は決して高くはないと考えることもできます。
しかし、問題なのは設計者ができるだけ既製品を使わず、
オリジナルで個性的なデザインを重視することです。
そうしなければ自分たちの存在意義がないとでも思っているのでしょうか?
特注品をつくろうとすると、それだけ製造の手間が掛かります。
図面もかなり詳細まで描かなければ、つくるほうも意図を理解できません。
設計も製造も手間が増え、どうしてもコストアップ要因となってしまいます。
よく設計者に予算を伝えて設計をしてもらったのに、
予算を2~3割オーバーしてしまったと言われる方がいらっしゃいます。
その多くは、設計者が自分のデザインと作業手間の関係を理解していません。
注)私も店舗設計の仕事をしていたので、特注を否定はしません。
費用と効果を知った上で「特注を選択」することが重要です。
グラフィックデザインなどであれば、
1本の線でコストが変わることはあまりないでしょう。
しかし、建築では設計者の描いた1本の線で、材料も手間も変わるのです。
「あの設計者は現場を知らないからこんな線を描いて・・・」
「こんな納まりをそのまますると、雨漏りしないだろうか・・・」
嘆きながらも、設計者からの入札を待つ施工会社は、
設計者の前では「先生!」と持ち上げるのです。 (-_-;)
▽ ▼ ▽
施主まで「先生」と言い出したら、もうブレーキは利きません。
施工会社は設計者が提示した設計図書の仕様や納まりで考えるしかありません。
施工者の知恵も経験も入らず、「先生の気に入る」家が出来上がります。
雑誌などで「競争入札」や「相見積」の説明を見ていると、
多くは「工法や仕様は同じにしましょう!」と書いています。
その解説のほとんどが、設計事務所の一級建築士です。
長年「仕様規定」で仕事をしてきて、
設計者がすべての仕様を決めることを彼らは疑う余地がありません。
そのためには、多くのカタログと作業時間が必要で、
設計料以上の作業量となることさえあります。
その上、特注の仕様で施工費も割高です。
それはすべて施主の負担となっていきます。 (>_<)
私も地元広島で数多くの「競争入札」を行っています。
しかし、私のサービスでは仕様を決めません。
施主が要望された性能や効果だけを整理し、
施工者から仕様や施工方法を提示してもらいます。
もちろん、間取りや外観などは私のほうで取りまとめますが・・・
入札に参加する施工会社も「一級建築士事務所登録」している会社です。
自社で設計施工も数多く手掛けています。
「子供がアトピーなのでできるだけ自然素材で・・・」
「寒さが苦手なので、高断熱仕様の家を!」
「地震に強い、耐震性能の高い住宅ができますか・・・?」
設計事務所であれば、すべての仕様を時間をかけて選びます。
ハウスメーカーだったら「当社の××構法の家でしたら・・・」と、
すぐにカタログから自社製品の長所ばかり説明します。
しかし、同等の断熱性能を実現させるのにも、
さまざまな材料や工法があり、金額もかなりのばらつきがあります。
施主にとって「この家はQ値2以下です」といった「性能」よりも、
冬、室内が乾燥せず「暖かい」と感じられる「効果」が欲しいのです。
☆彡——☆彡——☆彡——☆彡
先般の入札では6社の工務店が参加しました。
私が運営している『住宅CMサービス広島』では、
同じ仕様のものを6社それぞれの金額で提示してもらうのではありません。
実は、それで分かるのは「金額が高いか安いか」だけです。
性能に関しての選択肢もなく、性能を学ぶこともできないでしょう。
だから、私は6社にそれぞれ得意な仕様を提示してもらうのです。
そしてなぜその仕様を選んだのか、施主に直接説明できる機会を与えます。
こうすることで、仕様の違う6つのやり方を学び、
その中から費用対効果の高い工法を選ぶことができるのです。
工務店側も、自分たちの提案が採用されると喜びが大きくなります。
最終的にはつくる側が、自負心を持って施工することが重要です。そして、
コスト優先でも性能重視でも、施主が選べることが重要だと思いませんか?
⇒ 次回に続く
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▼お勧め『無料レポート』
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年が明けて、耐震偽造問題も多少沈静化してきたようです。
この問題に切り込んだ無料レポートがありました。
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▼今週のワンポイント・アドバイス
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建築基準法はよく「ザル法」と言われます。
難しい法律文章でいろいろ書かれていますが、具体性はあまりありません。
最低限守るべき基準が書かれているだけだともいえます。
そこで、公共工事では「仕様規定」によって、
行政側で使われる材料の仕様を決めて、積算資料もつくっていきました。
安定している時代は、それが最も間違いがなく効率的でした。
しかし時代は流れ、最近はコスト削減が求められます。
また多くの商品や工法が開発されて、ニーズも多様化してきました。
住宅業界も「坪単価」競争が繰り広げられました。
競争入札では、同じ仕様で「価格の勝負」です。
施工者や現場の声は施主には届きません。
でもトヨタの「かんばん方式」に見られるように、
作業員ひとりひとりが改善の提案をしていくことで、
コスト削減と品質向上、従業者のやる気を高められるのです。
住宅も、現場に近い人たちの意見を吸い上げることが、
コスト効果だけでなく、相乗効果を生むと考えられます。
だから、トップダウンで「仕様を決め」たり「監理する」のではなく、
お互いプロの立場で意見を交わし、納得行く形で「効果」を高めることが、
「いい家を安くつくる」ポイントだと私は思います。
決して「坪単価」のごまかしであったり、
大量仕入れによる資材コストの低減などで、いい家は安くできないのです。
では今週のアドバイスです。
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1.公共事業は「仕様規定」から「性能規定」へ
(コスト削減に施工者のアイディアを!)
2.住宅もVE(バリューエンジニアリング)を応用できる
(設計者がすべてを決めるとコストアップ要因が多い?)
3.施主も設計者任せではなく、求める「効果」を明確にしよう!
(効果実現のためには、金額以外に複数の選択肢を集めよう!)
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■参考情報⇒ http://www.cms-hiroshima.com/clumn/vol_24.htm
↑コラム『サプライチェーンマネジメント』
(若本が書いたコラムに関連知識を載せています)
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【 編|集|後|記 】
姉歯元建築士の国会証人喚問を見ていて
「弱い自分」といっていたのが印象的でした。
このところ、多くの犯罪が「性悪説」とか「性善説」といった
人は「どちらか一方」であるかのような説明がなされています。
いつも何か違和感を感じていました。
しかし、「 人間は弱い生き物 」 だと理解すればすっきりします。
ソウル大学教授の「ES細胞」捏造事件も、
昨年起こった大手商社によるディーゼルエンジンの
「排ガス浄化装置」データ改ざんも「根は同じ」でしょう。
企業の多くの不祥事や、昨年起きたNHK職員の放火
某大手繊維会社の元経営陣による「粉飾決算」まで・・・
その多くは「守りたい!」という気持ちから来ています。
それは、家族の生活であったり、社会的地位や名声であったり、
業界のシェアであったり、雇用であったり・・・
・‥…━━━☆・‥…━━━☆☆☆━━━‥…・☆━━━…‥・
▼「こんな偽造が通るはずはない」と、検査機関の指摘を期待した?
元一級建築士が守ろうとしたのは、収入と家族の生活です。
▼科学者として国を挙げて期待され、著名な科学雑誌に取り上げられ、
引っ込みがつかなくなった大学教授は社会的地位でしょう。
▼一流商社でさえ、シェアを確保するためにデータの改ざんを行いました。
▼「弁護士」で現職の国会議員でさえ、名義貸しをして離党しました。
改革派の急先鋒で、法を犯していることを知らないはずがありません。
しかし、「議員の地位を守る」ために不正を見過ごしたのです。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆☆☆━━━‥…・☆━━━…‥・
彼らが、当初から「悪人だった」とは思えません。
最初はちょっとした「ウソ」や見逃しだったのでしょう。
小さな嘘を訂正できず、徐々に問題が大きくなったのです。
欠陥住宅の問題など、住宅業界の多くの問題も、
人間の「弱さ」に起因しているような気がします。
シェア競争で、顧客不在の営業活動を行うメーカーの営業マンも、
自分の家族や収入を守ることに必死です。
施工会社も、手形の支払いや従業員の給料の支払いなど、
会社を守ることで必死です。
「施工者は元々ごまかす体質を持っているから・・・」という、
欠陥住宅の要因を「設計施工」のせいにする設計者も多くいます。
「だから第三者の監理が必要!」というのも、私には説得力を感じません。
設計をしている時点で「第三者」ではなく「当事者」なのです。
今回の耐震偽造でも独立系の設計事務所が事件を起こしました。
多くは「何かを守る」ために嘘をつき、ごまかしを続けてしまったのです。
倫理観以上に、現状を失うことの「恐怖心」が上回ったのでしょう。
人が「強く生きる」ためには、不安や危惧のない安定した状態であるか、
もしくは「目標」や「使命感」が必要ではないかと思います。
ノルマを課す会社や、契約社員中心の会社は、
従業員はとても不安定で不安が付きまといます。
その不安をネタに、業績アップを迫るのが住宅業界の実態かも知れません。
「今月数字があがっていないのに、こんな時間に帰るのか?」
「この客を逃がすようだったら、もう転職するかぁ?」
決して企業の規模や知名度、業歴ではありません。
それは他の業界の大手の不祥事がそれを物語っています。
しかし「目標」や「使命感」を持った人はとても「強い」のです。
家づくりの相談はそんな「ハート」を持った人にお願いしましょう!
私も今年1年、大きな目標と使命感を持って取り組んでまいります。
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