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家づくりで泣く人・笑う人

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2006.12.19 第89号

自然素材を使う本質  ~工業製品の功罪を考える~ 

 【まぐまぐ公認 殿堂入りメルマガ!】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.089━2006.12.19━

《隔週刊》 家┃づ┃く┃り┃で┃泣┃く┃人┃・┃笑┃う┃人┃
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                         ~第89号~
   ◆家づくりは人生最大の「事業」
   ◆事業を成功に導くための、プロのコンサルタントの助言
   ◆あなたも「笑う人」になって豊かな生活を送りましょう!
                     《発行部数4,850部》

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 【今週のテーマ】

 ・自然素材を使う本質
 ・今週のお勧めBOOKS
 ・今週のワンポイントアドバイス
 ・編集後記  
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 このメルマガでは、
 現場監督からスタートし、マネジメントの専門家『中小企業診断士』資格を
 取得して、200社を超える住宅会社の経営指導をしてきた発行者が、
 家づくりという大きな「事業」に失敗しないノウハウを提供していきます。

 どこにも影響されない中立的な立場で、住宅業界の実態も伝えます!
 あなたの家づくりのセカンドオピニオンとしてお役立てください。

 ■発行者のプロフィールはこちら
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 こんにちは、発行者の若本です。

 また損保各社の不祥事が発覚しましたね。
 今回は、火災保険の保険料率の低い「2×4住宅」の取り過ぎです。

 一般の木造住宅よりも3~6割安い保険料になっているのに、
 そのまま、割高の保険料を徴収していたということです。

 大手損保5社がすべてというから「業界ぐるみ」です。

 割安な保険料率を適用するには、加入者側が申告する必要があるものの、
 契約時に確認も、データベースに「2×4」の項目すらないというのだから、
 確信犯ではないかと疑われても仕方ない行為です。

 ちなみに木造の外壁にALCを使っても火災保険が割引されます。
 すでに火災保険を払っている人は、一度確かめたほうがよさそうですね!

 本のほうもようやく来週から書店に並ぶそうです。
 「目次」だけですが、メルマガ読者の方にはいち早く見ていただけます。

 ⇒ http://www.cms-hiroshima.com/download/Book_contents.pdf
 
 では、今週の本文の始まりです。 

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  ▼自然素材を使う本質   ~工業製品の功罪を考える~
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 先月は、ほぼ毎週のように地鎮祭に参加しました。
 いま、年内お引渡しの物件と、基礎着工の物件が重なっています。

 寒い時期のコンクリートの打設は特に注意が必要ですが、
 なかなか建設現場でそのような意識は少ないのが実態です。

 なぜそういえるのか・・・

 それは、私自身が昔そんな建設作業員のひとりだったからです。

 以前のメルマガにも書きましたが、
 私の実家は石工の職人だった父親が興した土木請負業です。
 公共工事ばかりを行なう「有限会社若本組」という会社です。

 今は、私の兄が継いでいますが、地方の公共事業は激減し、
 公共工事頼みの会社には、かなり厳しい環境となっています。

 私は高校生から大学を卒業するまでの夏休みや春休み、
 ずっと実家の土木の仕事でアルバイトをしながら生活費を稼いでいました。
 (仕送りをもらわず、生活していました)

 建設作業員として、鉄筋工の補助やコンクリート打設も経験しました。
 炎天下での工事や雪の降る季節、外の工事は楽ではありません。
 それは、今も変わりません。

       ●———————-
         自然素材と工業製品
       ———————–●

 最近の住宅は、消費者の環境意識の高まりや、
 個性化、素材の持つ味わいなどから、自然素材を使った家が増えています。

 調湿効果のある自然素材は、住み心地もよく、
 人の目や体にも優しい素材が多いため、施主への遡及効果もあります。

 「当社は、自然素材を使っているから健康住宅です!」
 「住む人だけでなく、地球環境にもやさしい住まいです!」\(~o~)/

 企業イメージもアップし、建築単価もアップします。
 施主も喜び、設計事務所や工務店も満足です。

 しかし、建築に自然素材を使う「本質」は、
 実はもっと別のところにあるような気がしています。

         ▽ ▼ ▽ 

 基礎のコンクリート工事の現場を見ていて、
 不思議と料理番組のシーンなどを思い出すことがあります。

 吟味された料理の「素材元」を訪ねるような番組ですね。
 漁師さんや農家、幻の塩や豆腐などをつくっている加工場・・・

 皆、つくり手は「そのままの形で食卓に並ばない」素材を、
 さまざま研究し、手塩に掛けて「特選素材」として出荷しています。
 それは、あたかもわが子を送り出すような気持ちです。
 (もちろん演出もありますが・・・)

 番組では、こだわりを持った「職人肌」の人たちが、
 独特の「加減」で、最高の素材をつくり出していきます。

 「火加減」や「水加減」、天候など、微妙な影響で、
 毎日つくっている素材が、まったく違った出来栄えになってきます。

 これが、人工調味料だったら味気ないですね・・・(-_-;)

 ひるがえって、コンクリート工事に話を戻しましょう。
 コンクリート自体は工業製品ですが、工事は自然環境の中、
 人の手によって造られていきます。

 そこが完全に工業製品として出荷されるブロックとは異なります。

 料理の素材が、温度や湿度、微妙な配合で味が変わってしまうのと同様、
 コンクリートも、現場の環境や人の「加減」によって品質は変わります。

 しかし、工期が迫っていて、次の現場の予定もあるとき、
 雨や雪だろうが、コンクリートの打設を行なっている現場に遭遇します。

 寒いから、型枠の隅々までコンクリートを行き渡せる
 「バイブレーター」などの振動はほどほどにし、さっさと片付けます。

 「いやぁ~ 今日はさぶかったぁ。帰って温かい晩酌でもやろう!」

 取りあえず予定の工事が終わったという安堵感で、
 当日夜の天候や翌朝の天気など気にも留めていません。
 養生もそこそこに、現場の安全だけ確認して家路に着きます。

 昔、建設作業の現場は、私も含めてこんな感じでした。
 手塩にかけていいものをつくるという意識は正直欠けていました。
 これが、食品業界と建設業界の意識の違いかもしれません。

 特に公共工事で年度末が迫ると突貫工事です。
 検査を受けられる状態にしておかなければ、工事代金も入りません。
 仕入れに手形を切っていると、品質など二の次にならざるを得ないのです。

       ●——————-
        自然素材を使う心
       ——————–●

 自然素材は、品質にばらつきがあります。
 工業製品のような、均質な仕上がりや寸法の精度も期待できません。

 だからこそ、素材を吟味し加工する「確かな目と腕」が必要です。
 「年季」という経験によって、自然素材の「くせ」も分かります。
 材木の「木裏」や「木表」を見て、適材適所の加工も出来るのです。

 『JIS規格』(日本工業規格)ではなく
            『JAS規格』(日本農林規格)です。

 自然素材は、運搬や加工、保存にも気を使います。
 工業製品のように無造作な扱いをされることはあまりありません。

 ちょっとぶつけたり、雨に濡らしたりしたら大変です。
 石のような硬い素材でも、自然素材は丁寧に扱われるのです。

 こうして考えていくと、
 住宅に工業製品が導入されはじめて、欠陥が増えてきました。
 少なくとも私はそう感じます。

 それは、工業製品を扱うのに、
 素材の目利きや熟練度が不要になってきたこともあるでしょう。

 熟練した職人たちでさえ、自然素材を扱う時と、
 工業製品を使う時の「気持ちの差」がどこかで生じているのだと思います。

 素材の吟味から加工まで、すべての責任が自分にある仕事と、
 工場から出荷されてきた材料を運搬し、取り付けるだけの仕事・・・

 熟練した技術も、素材を愛しく思う気持ちもそこにはありません。
 ただ、お金のために早く仕事を済ませてしまいたい気持ちかも知れません。

 自然素材を扱うには、自然への感謝と畏怖の念がどこかにあります。

 それほど、家づくりに携わる「職人たち」の魂にも、
 「素材」がきっとどこかで影響を与えているのだと思いませんか?

 板前さんやシェフがそうであるように・・・

 工業製品を扱うのは、技能者でなくても、
 建設労働者や作業員でも、きれいに完成させることは可能です。
 窓枠やドア枠、外壁のサイディングなどもそうですね。

 いっぽう、自然素材は「技術」と「魂」を持った職人が、
 「いい仕事だね!」と言われるようプライドを掛けて造っています。
 道具も手入れし、素材に負けない「技」を披露したいのです。

 単に「素材として」天然の素材を使うだけでなく、
 自然素材が、職人の技術と士気を高める役割を果たしていそうですね!

 「建設作業員」でしかなかった、昔の自分を反省しながら、
 職人たちがプライドを取り戻せる社会の実現を思い浮かべています。
 いい家は、そんな職人の「心と技」で建てられていくのでしょう。

 ⇒ 次回発行に続く

     ┏□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□┓
          ▼今週のワンポイント・アドバイス
     ┗□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□┛

 昨今、住まいの品質や快適性が「数値」に置き換えられてきました。

 確かに、これまで曖昧だった「性能」や「品質」が、
 一般消費者でも比較検討できるということは必要なことです。
 それは、これまで住宅業界があまりにもブラックボックスだった反動です。

 しかし、自動車やパソコンなどのような工業製品と、
 住宅のような自然環境の中で個別受注生産されるものとは違うはずです。

 戦後の住宅不足では、工業化住宅が大きな役割を果たしたのは確かです。
 団塊世代が子供の頃に、ダイワハウス工業のミゼットハウスが登場しました。

 3時間で組立てられる11万円のプレハブ住宅は、
 子供たちの勉強部屋として、全国に売れていきました。
 (先般、テレビでドラマ仕立てにされていました)

 プリント合板などの新建材も、大量に使われていきました。
 住宅の部品がドンドン「工業製品」に置き換わっていったのです。

 だけど「いい住まい」を考えた時、
 本当に数値だけを基準にしていいのだろうか?
 数値の違いを、本当に住み手が「体感できている」のだろうか?

 見てくれだけの「自然素材」や「呼吸する材料」よりも、
 家づくりを手掛ける人たちの「いい家をつくるぞ!」という意識こそが、
 本当は、住み心地のいい家をつくるのではないだろうか・・・?

 数値化できない「品質」が、そこには存在しそうです。
 もちろん、科学的根拠もあれば説得力が増しますが・・・。

 では、今週のワンポイントアドバイスです。

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 1.最近の住宅は自然素材を使うケースが増えてきている。
      ⇒ 人にも自然環境にも優しい、快適さが売り物!

 2.住宅に工業製品が増えて、欠陥住宅も増えてきた。
      ⇒ 製品自体の精度と、建設労働者の質のアンバランス?

 3.使われる素材によって、職人たちの意識に影響を与える?
      ⇒ 本当に「いい家」は、つくり手の意識が大切です!

☆*☆━━━━━━━━━━━━━*☆*━━━━━━━━━━━━━☆*☆

■参考情報 ⇒ http://www.cms-hiroshima.com/clumn/vol_26.htm

   ↑コラム『旬(しゅん)』
    (若本が以前書いたコラムに、参考情報があります。)

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【 編|集|後|記 】

 マグロの漁獲制限が巷の話題になっています。
 全世界でマグロの乱獲により生態系への影響も出始めています。

 ウナギやハマチは養殖ものが多く出回っていますが、
 いまやマグロも養殖が増えているということを今回知りました。

 食の素材でいえば「天然もの」と「養殖」では大きな違いがあります。

 上記のコラムに書いたように、
 近海ものでは獲れる時期(旬)によっても味が違います。
 
 数値で表される「差」ではありませんが、
 食べ慣れた人の「人間センサー」では、感知するようです。

 本来、大工棟梁など数多く素材を目利きしていた職人たちは、
 天然素材の中でも、その良し悪しを見極めていました。

 私の父親も、玄能(ゲンノウ)と呼ばれる金槌で、
 自然の石を加工し、道路や河川の石垣をつきあげていました。

 石を転がし「目をみる」ことで、簡単に石が割れ、
 石垣に利用できるような四角い石をつくっていくのです。
 カーブを石垣でつくるのは、まさに「職人技」です。

 しかし、このような「目利き」も「技能」も、
 残念ながら父親の代で終わりです。

 土木の専門学校を出た兄も、一級土木施工管理技師ですが、
 技術者であっても「技能者」ではありません。

 三男の私も、父親の技能を継ぐことなく建築の世界に生きています。
 すでに父親は75歳、脳梗塞で片麻痺、言葉も生活も不自由です。

 学生の頃、あれだけイヤだった土木の仕事も、
 もっとオヤジから学んでおけばよかったと、この頃思います。

 皆さんも、日本の伝統や文化、技能など、
 少しでも先祖から後世に受け継げるよう意識されたらいかがでしょうか?
 人生は「駅伝」のようにひとりひとりが繋いでいく役割を担います。
 私たちの世代で途切れさせるには、あまりにも勿体無いですね。

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