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若本修治の住宅コラム

2003.4.14 第23話

適正規模

日本国内に住宅の建設を行っている業者がどのくらいあるだろうか。建設業の許可業者数でいうと50万社を超えているが、これは土木や専門工事業者の数も入っているので、住宅を一棟完成させられる業者数は十数万社といったところか。広島県内の建設業許可数は約1万4,800社。住宅や建築に関連する許可数を見ても約5,800社だ。(平成14年データ)

住宅を手掛けている企業規模をみると、ひとり大工から大手住宅メーカーまで非常に幅広い。最大手の積水ハウスは、年間売り上げが1兆円を超え、大手ゼネコンと肩を並べている。戸建て住宅で年間2万戸強、アパートやマンションを含むとおよそ6万戸の供給を行なっている。
実に全国で年間に供給される住宅約115万戸の5%程度のシェアとなっている。

大手住宅メーカーが誕生したのは昭和三十年代。戦後、住宅不足が問題となり、取り敢えず住める家として「ウサギ小屋」と揶揄されるような住宅が数多く建てられた。しかし、団塊の世代と呼ばれる現在の五十代の人達が子供の頃は満足に子供部屋もなかった。高度成長と高学歴化から子供部屋のニーズとして、離れに小さなプレハブ小屋が建てられるようになったのが、ダイワハウスが開発した「ミゼットハウス」だ。

その後、積水ハウスやミサワホームなどが次々と設立され、大手住宅メーカーとして育っていく。当初は、メーカーは部材の供給を行い、地域の工務店・建設会社がその代理店となって、部材の組み立て、販売を行っていた。昔はナショナル住宅の代理店だったという工務店は地方に少なくない。木造住宅の市場を荒らさず、共存していこうというメーカーの姿勢が昔は見られた。

高度成長で土地価格が上昇するなか、全国で住宅総合展示場がオープンし、そこに大手住宅メーカーはこぞって出展していった。販売数を伸ばすことで工場の稼働率を高め、住宅のコストを下げていこうという使命がその頃の住宅メーカーにはあった。八十年代前半、国の音頭で始められた「ハウス55プロジェクト」など、各メーカーもコストダウンに知恵を絞っていた。

自動車や家電など、工場で完成品を出荷できる業種は、工場での作業工程の見直しや品質管理によって、より便利で精度の高い商品を低価格で販売するようにしのぎを削っている。そのために、研究開発やマーケティング、販売網の整備など莫大な資金と組織が必要となり、一部のマニア向けを除いて中小企業の自動車メーカーは存在しない。大手タイヤメーカーのブリヂストンも自動車メーカーを志向したことがあるが、とても開発投資に耐えられず断念している。

6000万年前に絶滅した恐竜と同様に、動物にも企業にも環境変化に対応できる適正規模や寿命がある。それは、一定の規模を維持しなければ、お客様が求める品質や価格を継続的に提供できないというレベルだ。適正規模を超えた銀行がさらに合併を繰り返してもお客様の利便性につながらず、信用力さえ落としているのは皮肉だ。ゼネコンしかりだ。

住宅業界もやはり同じ。製造業では零細企業が完成品を継続的に全国に販売するのは困難だ。しかし、どんな零細企業でも建物を完成させることが出来る住宅に、大きな資本や組織は不要だろう。お客様の利便性や住宅の品質向上に向けられているのではなく、顧客名簿を取得するために莫大な資本と人材が投入されている。そしてそのコストは、勧誘から逃れることができなかった人だけが負担するという理不尽さを持っている。

そろそろ住宅業界にも適正規模の淘汰がおきても不思議ではない。賢い消費者はすでに自ら行動をおこしている・・・。

広島市内にオープンしている住宅展示場。5年程度で新しいモデルに建替えられ、既存のモデルは販売されることなく”建築廃材”(産業廃棄物)として処理される。
住宅展示場のモデルハウスは80~120坪程度の敷地に、60~100坪程度の住宅を建てている。実際の価格は坪100万円前後している。(家具込の住宅価格で8千~1億円程度)
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