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若本修治の住宅コラム

2003.9.01 第41話

住まいづくりの代理人

大阪在住の昔の上司から1枚のファックスが届いた。リフォーム産業新聞社が発行している「ザ・リフォーム」の記事コピーだ。タイトルに『住まいづくりの交渉代理人』と書いてある。東京の三鷹でリフォームを中心に、設計者でも施工者でもない、施主の代理人として活動を行なっている「コンセリア」という女性中心のコーディネート事務所の記事だった。

この元上司は、日経新聞社のOBでもあり、ミスタービルド広島時代の社長代行でもあった人だ。建築業界ではないこの上司から得たものは大変多い。実はリフォーム産業新聞社の加覧編集長も独立前からの知り合いで、独立後、「ザ・リフォーム」のコラムを担当してみないかと打診されたこともあった。原稿料をいただける仕事だったが、思うところがありお断りした。

最近、住宅業界も「代理人」を名乗る人が増えてきた。検索エンジンで調べると、近くでは、松山にも高松にも同様なサービスをやっているところが見つかった。それぞれスタッフを入れて本格的にやっているようだ。高松の事業者にメールを打ったところ、お互い共通の知人がいて、広島で出会い情報交換をすることもできた。
アーキプロジェクト(高松)

皆、思いは共通。これまでの住宅業界があまりに業者都合で進め、施主に対する説明責任(インフォームドコンセント)を果たしていなかったかという反動だ。その多くは異業種からこの業界に参入してきているようだ。少なくとも、請負をやっていた企業は参入していない。

このたび、たまたまアマゾン・ドット・コムで本を探していたら、『建てる前に読む本』という書籍がお薦めで表示されていた。「NPO法人 家づくり援護会」が編集している。「家を買うとき、建てるとき、絶対にさけたい欠陥住宅の悲劇!第三者機関の立場から、あらゆるトラブルを解決する」というサブタイトルがついていたので、思わず買って読んでみた。

かなり一般読者にはヘビーな内容だが、執筆者の住宅業界に対する問題意識の強さが感じられるものだった。出版だけでなく、相談やサポート、工事検査や記録の保存など、有料のサービスも行っている。基本的には東京周辺ではあるが、電話やEメール、ファックスなどでは全国の方対象に無料相談を行なっているようだ。

プロ野球など、スポーツの世界でも個人が組織と交渉するのに、プロの代理人を立てている。元巨人軍の松井選手が、大リーグに挑戦するとき、初めは自分で英語を勉強し、自分自身で売込みを図ろうとしたのは有名な話だ。しかし結局は代理人を立てることで、希望の球団と破格の年俸で契約を結ぶことが出来た。“餅は餅屋に任せたほうが良い”とはこのことだ。

これまで、住まいづくりには工事の請負を前提とした業者(ハウスメーカーや工務店など)に相談するか、設計の請負を前提とした設計事務所に相談するくらいしかなかった。ここに来て住宅業界でも「施主の代理人」が増えてきている。本来は宅建業者などが、その資格や経験から中立的な立場で「施主の代理人」をすることがスムーズだ。しかし、造ったものを販売する業務であって造るサポートをするプロではない。またこちらも海千山千、信頼できる業者の見極めがつかないのが最大の課題だ。

雨後のタケノコのように出てきている、『住まいづくりの代理人』だが、頭で考えるほど容易ではない。お見合いを斡旋して後は当事者同士で自己責任という訳にはいかないからだ。
旅行代理店に共通の契約約款があり、旅行業務取扱主任者がいるように、今一度信頼できる組織と資格が必要となってくるだろう。

「建てる前」に読む本 家づくり援護会 編 -作品社- 欠陥住宅の多くは、うっかりミス。タクシーの運転手でも事故をするように、プロでも「慣れは恐ろしい」ということ。 手抜きだけでなく、うっかりミスもしっかりチェックしたい。
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