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若本修治の住宅コラム

2011.11.10 第66話

機会損失と労働生産性を見直そう!

十数年前、私が所属していた住宅フランチャイズ本部で、セブンイレブンジャパンの鈴木会長を招いて基調講演をお願いしたことがあった。ご存知の通り、大手量販店のイトーヨーカ堂が、米国のコンビニ大手セブンイレブンの日本法人を設立して、日本で高収益・急成長を果たしている。
この時の鈴木会長の話は、中小工務店の経営者にも大きなヒントがあった。ここで改めて紹介したい。

ダイエーやイトーヨーカ堂などの大手量販店は、米国のシアーズやKマート、ウォルマートなど、GMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア)に学んで戦後急成長した。
現在は車社会となり郊外出店が増えているが、当時は商店街に近い都市中心部が主な出店場所。当然、大型商業施設が進出してくると、地元商店街の店主たちは猛反対だ。
大規模小売店舗法など出店を規制する法律もでき、イトーヨーカ堂の出店戦略も、地元商店街対策が重要となった。

イトーヨーカ堂の幹部として米国の流通業の視察を行っていた鈴木会長が、GMS以上に目に留まったのが、町中にあるコンビニエンスストア『セブンイレブン』。商店街が大型店出店に反対をするのは、大型店に自分たちの売上を奪われてしまうという理由が大半だ。
しかし鈴木会長は「大型店が商店街の顧客を奪うのではない。商店街の店主が売れる商品を揃えず、売れないものを置いていること、その結果労働生産性が落ちているのが売れない原因である」という仮説を立て、その立証のためにセブンイレブンというコンビニ業態を日本に導入することにしたというのだ。つまり、小さなパパママストアでも、売れ筋をしっかりと把握し、店内の陳列棚に来店者が求めるものを揃えれば、必ず大型店と共存できる。その確信の元、セブンイレブンジャパンは加盟店を募集した。

その仮説の正しさは、三十年以上経った今でも実証されている。売れ筋を把握するために導入したPOSシステムは、今やほとんどの小売店に導入され、セブンイレブンは他のコンビニよりも高収益企業として成長している。本部と加盟店の間に様々な課題は存在するが、30坪の小さなお店でも、機会損失を最小限にし、労働生産性を高めることで大型店に十分対抗できるということは証明してみせた。

住宅業界を見渡すと、大手ハウスメーカーでさえ、莫大な機会損失と低い労働生産性で仕事をしているのが分かる。ひと月あたり、1ヶ所の展示場で2~3組しか契約できない状態なのに、総合展示場に出展し高額なモデルハウスを建てて営業マンを配備、広告やイベントなどの集客で、莫大な資本を投下している。皆さんの周りでも、県内で年間200棟程度手掛けているビルダーが、展示場や広告、営業マンにどのくらいのコストを掛けているか容易に想像がつくだろう。新聞オリコミは99%ゴミにしかならない。

建築業界で「労働生産性」といえば、建築現場をイメージしがちだが、最も労働生産性が低く、機会損失が多いのが営業段階。つまり、家を建てる計画のある「見込み客」を探し出し、敷地が確定してプランや資金計画に納得して「御社にお願いします」という約束をしてもらうこと。
ここに実際には数字上に現れない大きな無駄とコストを支払っているというのが日本の住宅業界の問題点だ。

そのコストを埋めるために高めの粗利が必要で、不透明な見積と、海外に比べて割高な見積金額にならざるを得ない実情が続いている。各社が差別化に躍起になっている原因も、機会損失を減らしたいがための日本ならではの現象だ。
それが標準化や効率化、高収益の機会も奪っている。

私はその問題を解決するために、工務店の営業段階の役割を肩代わりし、機会損失のリスクや労働生産性をカバーして、建築コストに反映させないサービスを行っている。

地鎮祭のセッティング

建築予定地看板
車両進入を防ぐ役割も果たしている看板設置
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