広島で「家づくり」のお悩みごとを丁寧に解決していく(コンストラクション・マネジメント)CMサービスです。

メールでのお問い合わせは24時間受付中!
12時間以内にお返事差し上げます!

若本修治の住宅コラム

2011.12.10 第67話

「コンクリートから人へ」の本当の意味。

戦後長らく続いた自民党時代から政権奪取した民主党も、3年間の政権運営で国民の信頼を失い、衆議院選の大敗から、数的優位を誇っていた参議院でも半年後の国政選挙で敗北した。『マニフェスト政治』という聞き心地のいい言葉でオブラードに包んで、選挙で約束したことがほとんど実現できないまま1年毎に首相が変わり、内部分裂を招いた。残念ながらもはや政党の体をなしていないといっても過言ではない。その民主党が掲げていた象徴的なメッセージが「コンクリートから人へ」というスローガンだった。

 

民主党が目指したのは「コンクリート=ハコモノ(公共工事)」として捉え、「人=社会福祉」として、お金の流れを大きく転換させようとした。公共工事を無駄なバラマキで財政悪化の根源であるとし、社会福祉や子育て支援などのセーフティネットの整備こそが、安心してお金を使える社会にできるというキャッチフレーズで、年金問題や景気低迷、政治の不祥事で揺れる国民から一縷の望みが託された。

 

公共事業が悪者にされたのは、過疎地となってほとんど人が住んでいないような場所に、ダムや高速道路、立派な施設をつくっていったから。かんぽの宿などずさんな運営もあり税金が無駄遣いされて、自民党のバックにあった巨大な利権や票を切り崩すことも目的となった。企業ではなく個人にお金を配ることで、特に無党派からの支持を得ることにも成功した。しかしふたを開けてみると、税金の節約にも経済成長にも繋がらないということが露呈し始めた。

 

なぜなら公共事業の場合、投資効果は建築や土木の工事費だけに留まらない。用地取得によって支払われる補償費用や、立ち退き・区画整理等によって住宅ほか、民間の建築工事、新しい商業立地創造やテナント誘致等、建設以外の雇用も生み出され、周辺人口も増えるといった波及効果が発生する。しかし社会福祉では、毎年税負担は増大するだけで経済効果は生まず、子育て支援も労働生産人口や社会保障負担を担う人口増までは、ほとんど投資以上の効果は広がらない。いつまでもお金を配る政策を続け、減額すると国民が「約束違反だ!」と騒ぎ出す状況は、好転するどころか悪化するばかりだった。人に直接お金を配ろうとするから『依存心の高い人たち』もつくりだした。

 

「技能・技術(=人)」に配る公共事業

 

『コンクリートから人へ』というメッセージを、公共工事を止めて「現金を人に配る(施しをする)」のではなく、コンクリートに使われるお金を、地元で技能を持った職人達に渡るよう「手仕事の跡が残る」ような土木・建築工事としたらどうだろう。見た目にもやさしく環境にも負荷を掛けない100年後も残したい景色を都市近郊につくっていけば、地域ごとの特色ある風景が整備出来る。史跡や伝統的建造物のある地方都市では、昔の職人たちの技や美意識が、現在もキャッシュを生んでいるのは周知の事実だ。

 

ただし本当に長期の計画がなければ、インフラのメンテナンスも含めて将来の負担もその地域の人たちだ。だからこそ50年程度で劣化するコンクリートの構造物ではなく、地元の人たちでも手入れに参加できる、土や木や水、砂利、石など、自然に近い材料で皆の共有空間をつくることがこれからの公共事業には求められる。熊本の奥地にある石造りの「通潤橋」や木造の「錦帯橋」なども、土木の好例だ。

 

コンクリートで固めてその場所に水を浸透させず、排水溝を通じて下流に送るから、ゲリラ豪雨などで排水量の限界を超えた時、下流域に甚大な被害を及ぼす。画像の地域も、昔は河川が氾濫し多くの被害を出した地域だが、災害防止のコンクリートをやめることで良好な環境が戻っている。

一覧に戻る