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若本修治の住宅コラム

2013.5.20 第84話

建築業を「料理人」に例えると・・・

他人の芝生が青く見えるのと同様、自分の業界では長年の慣習や業界の常識にとらわれ、分からなくなっていることが多い。しかし、他の業界に置き換えて考えてみると、意外に自分たちが気付かずに見過ごしていることが少なくない。身近で自分たちがお客としてお金を出してサービスや商品を購入している業界なら、自分たちがやっていることとの比較もイメージしやすいだろう。

今回は飲食業界を例にとって考えてみたい。
いわゆる『外食産業』と呼ばれる業界との比較だ。 もちろん料理を作るということと、家を造るということは、規模も必要な時間も、掛かる金額も大きく異なる。しかし意外と類似する点は多い。料理も家も、最初は身近な人たちがつくっていたものが、次第に専門の職業として成り立つようになり、「板前」や「棟梁」といった職人的な人たちが自分のお店や事務所を持てるようになった。

高度成長で、「エコノミックアニマル」と揶揄されるほど、労働時間が長くなった日本では、収入も増えて食事も外でする機会が増えてきた。住宅も地縁・血縁の無い場所で購入する世帯が増え、棟梁や大工さんに頼むという形は次第に減り、専門サービスとしての住宅会社が急増した。外食や住宅建築が「産業」として成り立つ時代の到来だ。

参入する業者が増えてくると、競争も激しくなる。 元来、どこでもある素材を問屋や市場から仕入れ、加工してお客さんに提供するのは飲食店も工務店も同じ。しかし競争が厳しくなると、価格だけでなく、素材を吟味して産地や加工方法を消費者に訴えることで、お客さんに自社を選んでもらおうとするのも共通している。飲食店が、和食だけでなく、中華や洋食、さらにイタリアンやフレンチ、ファーストフードなど、細分化し、チェーン化やFC化していったのも、まさに住宅業界と同じ構図だ。

しかし大きく異なるのが、外食産業がリピーターを意識した経営を行っているということ、そして安く仕入れた素材でも、料理の味付けや盛り付けなど、「素材を加工する」ことで大きな付加価値(=利益)が得られているということだ。この「素材を加工する」というのは、建築業界でいえば「構造材や建材・設備」のことではなく、土地も含めた「住宅を建てるために必要な素材」という意味だ

新たに家を購入したい人は、建築物だけではなく、土地も含めた周辺の環境を買おうとしている。
だから専門サービスとして住宅建築を行っている『住宅会社』は、本来家が建つ土地に関しても仕入れをし、優良な住宅地として加工をすることで「お客様の満足」を得るられるはずだ。

更地だけでは価値の低い「土地」を、ランドスケープも含めて良好な住宅地に加工することで、はじめてその上に建つ住宅の価値が高まり、住宅会社は高い付加価値を提供できる。単に建築工事を請け負うだけであれば、棟梁や大工など職人的な工務店がすればいい。それは、料理人が松阪牛などのブランド牛をお客さんに購入させ、包丁一本で出張料理をするのとさほど変わらない。自分たちの商売を飲食業と比較すれば、どんな規模や業態か想像できるだろう。

継続的に土地を仕入れることで、仕入れコストは下がり、土地に対する目利きも高まる。北米のホームビルダーは、そうして良好な住宅地を継続的に供給し、リピーターを得て高収益な事業継続が可能となっている。モデルハウス建設や広告宣伝費、営業マンの人件費にお金を掛けるより土地の仕入れと加工にお金を掛けて良好な住宅地を供給したほうが、大きな利益とリピーターが得られることを、日本の飲食業や北米のホームビルダーが証明している。

ダブルスネットワーク(株) 代表取締役 若本修治(中小企業診断士)

米国オレゴン州ポートランド郊外で分譲中の住宅地。高い樹木が印象的。
同じ住宅地内に入り、建築中の現場から振り返った分譲中の街並み。
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