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若本修治の住宅コラム

2014.2.20 第93話

中心市街地のコインパーキングは『耕作放棄地』と同じ?

前回のレポートでは、郊外で売れ残った産業団地や休耕田に設置されている「メガソーラー」に焦点を当てた。環境問題は別としても、未利用で放置されるよりもソーラーを設置することで、地域にエネルギー供給が出来、その収益によって固定資産税の支払いや荒れ地の維持が出来れば土地所有者にとって御の字かも知れない。

 

一方、最近目に付くのが、中心市街地に増えているコインパーキング。アーケードのある商店街が「シャッター通り」となって、郊外の巨大ショッピングセンターにお客を奪われた要因のひとつが『駐車場不足』であり、また後継者不足や売上げ不振等で撤退した店舗の跡地活用の最有力候補が「コインパーキング」ビジネスになっている。コインパーキングはそれほど広くない土地でも少額の投資で設置でき、現金決済で高回転。だから土地所有者にとっても手間いらずで手軽にスタートできる土地活用法だ。テナントビルと違って維持管理コストもわずかで空き店舗に悩まされることもない。商店街にとっても駐車場が増えることは歓迎されることはあっても否定の声はないだろう。

 

しかし本来の土地活用とは

 

農地では、その地域でより高い収益が見込める農作物を耕作し、中心市街地では自ら効率の良い商売を運営するか、高い賃料負担が出来る商業テナントを誘致し、租税や管理コストを上回る収益をあげることが出来てはじめて「土地を所有する意味」がある。中山間地など、農地の集約化・効率化が困難で後継者不足の農地では『耕作放棄地』が広がっているが、地方都市で増えているコインパーキングも、土地から十分な収益を上げられず、土地所有者に見放されたという意味で「都市の耕作放棄地」といってもいい状態になっている。所有者本人にとっては、投資の負担が少なく固定資産税等だけカバーできればいいかも知れないが、長期的に見ると街のにぎわいを奪い、地域の衰退を加速させていくだけの土地活用にほかならない。

 

本来そこに商業テナントがあれば得られていた賃料や売上げ(地元中小商店の収益、地域経済の活力)が失われ、駐車場への車の出入りによって徒歩の通行人は危険にさらされて街並みの連続性は失われる。特に小さな家族連れや友達と集団で街歩きをする若い人たちは、車優先の街は避けるようになり、郊外の大型ショッピングセンターへの客の流れを加速させかねない。このまま中心市街地にコインパーキングが増殖すれば、アミューズメント施設も充実し、安全・便利で子供から大人迄どのような客層でも買い物が楽しめる郊外型SCにお客を奪われてしまうだろう。

 

中心市街地が賑わいを取り戻すためには、やはり都心の高い固定資産税に見合う魅力的な土地活用が欠かせず、個人の所有地だといっても、地元の財界や行政も含めて「中心市街地全体の問題」として考える必要があるのは間違いない。住宅・不動産業界に携わっている我々も、この現実を直視するとともに、大いにビジネスチャンスが眠っていると考えてもいいだろう。要するに「車社会が到来する前」の伝統的な街並みの形成が、街に賑わいを取り戻し、郊外に出た人々も戻ってくる機会を提供できるということだ。

 

私を含めて読者の皆さんがこれまでこのビルダーズマガジンで学んできたように、通りに面して建物の密度を高め、駐車場は少し離れた「通行に安全な場所」にまとめて確保して、徒歩で歩くことが楽しくなるようなTND(トラディッショナル・ネイバーフッド・デベロップメント)の考え方が、中心市街地の再生にも生かせそうだ。TND開発によって、町に住む人のコミュニティが広がることで、地盤沈下が激しい街も少しずつ活気づいてくるだろう。

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