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若本修治の住宅コラム

2003.10.06 第46話

理性で家を買おう

多くの人にとって住宅を取得することは夢の実現である。特に女性は『夢』『愛』がなければ生きていけないともいわれている。一生のうち何度もない買い物なので、夢は膨らむ一方だ。住宅展示場でさまざまなメーカーの住宅を見せられたり、雑誌で建築家の設計した家などを見ると、欲求や感性がおおいに刺激される。

不景気とはいえ、日本はモノがあふれており、「モノ」を消費する時代から、「時間」や「コト」を消費する時代になってきた。インターネットや携帯電話の利用も、機器を所有したいのではなく、機器を利用して得られるサービスや情報あるいはステータスを入手したいのである。

住宅も、単に寝起きのためのシェルターではなく、家族との思い出を作ったり、友人との親交を深めたりと、さまざまなシーンを思い浮かべながら、間取りや仕上げ素材、建物のプロポーションを決めている。その夢をビジュアルに提案してもらえる企業や人が、お客様のハートを射止めている。『理性』『理屈』ではなく、「信頼できそうだ」「いい提案をしてくれそうだ」「面倒見が良さそうだ」・・・
でもそのほとんどは、フィーリング以外の判断材料がない。

確かに、今、理屈を聞いて買い物をする人は少ない。技術屋さんは自社の製品がどれだけ技術的に優れているか、一所懸命説明しようとするが、お客様は技術より、その商品を使って実現できる生活のほうに関心がある。住宅でも、気密測定した数値やホルムアルデヒドの測定値など、どれだけ優れた性能かを訴えるよりも、営業マンの身なりや言葉、モデルハウスのデザイン、その住宅を手に入れたときの生活シーンなどに目を奪われてしまう。

しかし、

住宅は容易に買い替えたり直したり出来るものではない。」

欠陥住宅は論外だが、
フィーリングで決めたその「決断」が、数十年も尾を引いてしまうものだ。
だから、数年で買い換える嗜好品や耐久消費財と違って、
住宅は「感性」ではなく「理性」(つまり理屈)で買いたい。
それは、単に性能や使っている資材だけでなく、返済計画や業者選びなどは理性が重要だ。

今年になって、住宅金融公庫に融資相談に来る方の9割がご夫婦連れになっているそうだ。昨年までは、どちらか一方が来所するか、ご夫婦連れでも一方は相談に参加せず単なる付き添いだったが、いまはお互いが相談しながら家づくりを進めているのが顕著になっているという。
客層や年齢層が変わったのではなく、明らかに消費者の考え方が変わってきた証拠だろう。

家を「感性」で買うと、経験上、数十万円から数百万円高くなる。
しかも品質は多くの場合おざなりになる。

その逆に「理性」で買うと、恐らく数百万円から、ローン支払総額まで考えると、一千万円を超えるくらい得をする可能性がある。
しかも確かな品質の住宅を手にすることが出来る。
つまり賢く得をするのである。

私は、二十代の頃、店舗設計の仕事をしていたので、多くの「感性」重視のクリエーター達と付き合ってきた。それは首都圏だけでなく、欧米のデザイナーやアーティストにも広がっていた。だから、集客や商売の道具として、企業が「感性」を利用した建築やインテリアをつくっていくことは否定しないし、そのほうが街も活性化し、新しい文化も創れると期待している。

しかし、個人が家を建てるということは、それ自体新たな収益も資産も生まないから、「感性」に余計なお金を負担して欲しくないと私は思う。「理性」で買うことをサポートするのが我々のサービスだが、まだまだ「感性」で買ってしまう方が多いのがジレンマでもある。一握りの個性的な(本物の)建築家を除いて、大手メーカーや地方の建築士がつくっている「消費者心理をくすぐる住宅」も、そのほとんどは、プロであれば余計なコストを掛けずに同じ物をつくることは可能である。

二十代後半の店舗設計をしていた時代の筆者(右)。大阪のブルータスギャラリーでNYのファンク所なるアートをプロデュース。左のアメリカ人はデレクターのリュック・カフマン氏

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