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若本修治の住宅コラム

2020.2.20 第164話

【連載】未来の賢い家づくりとは ~第4回~

前回は、英国の地主の資産形成に繋がった『リースホールド』による住宅地経営と、戦後、資産を失った日本の地主との差を歴史や制度で対比しました。もともと価値の低い所有土地に、魅力的な住宅地を計画し、長期的な「地代収入」をより高めていった英国の地主は、資産形成だけでなく美しい街並みをつくりました。50年後も魅力が続くその住宅地の景観は、より経済的負担能力の高い富裕層があこがれる住宅地として建物も活発に売買され、地代の上昇ももたらせました。優良企業の株主の配当以上に、長期に亘り安定的・継続的なリターンが得られ、新たな投資や経営課題に大きな意思決定を迫られることもありません。これが地主の本来の姿です。

 

■恐怖から生まれた日本の土地利用の動機

一方、日本の地主の土地は静かな田園風景だった場所が、急激な都市化や宅地化が進み、道路整備や下水道工事などの都市インフラは後追いになりました。地価は急上昇し、農業を続けるよりも“土地の売買”で楽して儲ける地主が急増したのです。旺盛な住宅需要もあって、昔の狭く曲がりくねった道路のまま無秩序に建売住宅が建ち並び、緑も子供たちの遊び場も失われていきました。先祖代々の土地と地元の風景を守りたいという人々も、都市近郊の土地所有者は、農業を続けるか宅地並み課税を受け入れるか迫られました。それが30年間も縛られる『生産緑地』という制度でした。営農が困難な地主たちは、高い固定資産税の負担と相続税の恐怖から、自ら借金をして賃貸経営をするか、先祖代々の土地を切り売りするか、小売業などの法人に貸す以外、重い税負担から逃れることが出来ない状態になったのです。将来の不安や恐怖が、土地利用を迫られた大きな動機です。

 

国による事情の違いはあるにしろ、同じように歴史のある島国で土地を所有する地主が、子孫の代まで安定して土地オーナーの地位を維持していけるのはどちらの国の地主か明らかです。所有している土地の広さではなく、土地を“資本化”して魅力ある計画を立案し、最小の投資で安定したリターン(地代による配当)が得られるようにした英国の地主に学べば、日本でももう少し美しい住宅地と個人の資産形成が可能になるのではないでしょうか?ここに住宅産業としてのビジネスチャンスもあるのです。

 

■土地利用は相続税対策から”土地の資本”化へ

世界で最初の株式会社は、1602年オランダで設立された「東インド会社」だと言われます。複数の人たちがお互いの資本を出資し、リスクを分散しながらより大きな収益が出せる事業を計画し、出資に応じた利益を分配しました。株式会社にはお金だけ出資する株主もいれば、自ら経営者として事業のかじ取りをするものもいます。しかし、事業が拡大し株式価値が高まっても、基本的に所有する株を手放して儲ける株主(会社オーナー)はいません。自ら経営する能力がなければ、安定した利益を出せる経営の専門家を雇い、少ないリスクで高いリターンを出すための意思決定に参加するのが株主です。

 

“土地を資本化する“という発想は、お金や現物を出資して資本を集め、利益の最大化を目指す株式会社と同じです。複数の地主が、お互いの土地の価値に応じて不動産を現物出資し法人化すれば、より利用価値が高く魅力的な土地利用が可能となります。日本では所有している土地の地価が上昇し、固定資産税や相続税負担を圧縮するために、自ら借入れを起こしてアパート経営をすることが長らく続きました。しかし今では人口減少が進み空き家や空室が激増する日本の現状で、アパート経営では将来に亘り土地を守ることは出来ません。大手アパートメーカーの一括借上げ満室保証、税理士や銀行による相続税対策セミナーも、もう賞味期限が過ぎたのです。

日本の土地活用の定番は、自分が住まないから魅力のないアパートと駐車場経営になっている。

■減少する法人の土地需要

これまでの日本でも、複数の地主が所有する土地を法人が一括で借りて、事業用地として一定期間利用する形がロードサイドを中心に増えました。しかし100~1000坪程度の土地利用は、この20年間で大きく変わりました。小売店舗は、さらに郊外へと超大型化し、物流倉庫や駐車場として借りていた法人も、大企業の海外移転や経費節減等から土地を借りる需要自体が減っています。さらにネット通販自動運転AI技術の進展などで法人が広めの土地を借りるニーズは下がる一方です。地主には厳しい価格交渉を迫られるでしょう。いまや個人の地主が法人1社と交渉するより、住居用に複数の個人に分散して貸すほうがリスクも分散できる時代です。

日本の土地活用の定番は、自分が住まないから魅力のないアパートと駐車場経営になっている。
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