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若本修治の住宅コラム

2020.4.20 第166話

【連載】未来の賢い家づくりとは ~第6回~

日本では「持ち地・持ち家」か、土地も建物も所有しない「賃貸住宅」かのほぼ“二者択一”で住居費用を負担しています。前回の記事では、土地も建物も所有する『持ち家派』は、35年間で分割支払いするため、月々の負担はそれほど大きくなく、大家さんに家賃を支払う『賃貸派』は、利回り10%程度で家賃設定をするから、建築費を10年程度で分割支払いしているのと変わらないという説明をしました。つまり建物の質(広さや性能)に比べて“賃貸の家賃負担はかなり大きい”ということです。

数号前の記事でご紹介した通り、日本と同じ島国の英国では、『持ち家』と『賃貸住宅』の二者択一ではなく、その中間となる『リースホールド』という選択肢があります。それは「土地は所有せず、建物だけ自分のものになる」という『借地・持ち家』という不動産所有です。「リース」自体は、オフィス機器や自動車など、耐久消費財で一般に普及しているので、“貸与された機材を月々の利用料を支払って、自分の持ち物のように使う”ということは多くの人にイメージ出来るでしょう。しかもメンテナンス等はリース代に入っているから、自分で行う必要もなく、壊れたら無償で取り換えてくれる契約です。

 

■「建物のリース」と「土地のリース」の違い

 

「土地のリース」というのは、日本ではなかなかイメージがわきません。しかし、アパート建築で大々的にTVコマーシャルしている会社を思い起こすと「建物リースは●●建託♪」というイメージソングが浮かびます。『満室保証』をウリに、土地は地主が所有し、建物代金は月々の家賃から“サブリースの利用料を払う”という商売です。実際にはアパートの建設費を住宅ローンで返済しているのですが、サブリースという「一括借上げ」で、地主はアパート経営のリスクや管理の手間などを負うことなく、契約期間中は安心できるのが「リース契約」です。

満室保証を謳う「建物サブリース」のアパート経営。建設費は高くオーナーの負担なので、保証の期限に要注意のリスクが高い土地活用。

 

このアパートのリースとは真逆の「土地をリース」してもらうのが英国発祥の『リースホールド』という考え方。従来のように土地を所有するための税負担やローン返済、管理責任などが軽減され、生活の自由度が高まります。土地を売買しないから、借入れは少なく、不動産仲介料などの諸費用も抑えられ、家族構成や経済状態が変わる二十年後も、建物だけ売却すれば良く住宅ローン残債も大きく減っているでしょう。しかし日本のように『持ち地・持ち家』しか選択肢がなければ、20年間住宅ローンを支払ってもまだ残債が多大で、ライフスタイルに合わなくなった自宅を売却し新たな生活にシフトすることも困難です。

 

■英国のリースホールドの3つのポイント

 

英国のような『リースホールド』による住宅供給のポイントは3つ。

まず第一は「向こう3軒両隣」という“最低6棟”のまとまった住宅地として、近隣の住環境が変わっても、その街区は新築当時の魅力を維持できること。20年後に自宅を売却したいタイミングで、次に入居したい人が現れるような魅力的な周辺住区になっていれば、築20年でも欧米のように高く売却可能です。

そして第二は「計画的な維持管理が出来る環境」を整えること。これは区分所有の分譲マンションが“管理を買う”と言われる通り、管理費負担をしてでも計画的な長期修繕や資産価値維持によって、築年数を感じさせない仕組みが必要です。細分化された敷地を個人が所有していれば、他人に口出しできないものの、借地でその土地の所有者が管理のルールと費用負担を契約時に明確にすれば、将来に亘って美しい住環境が守れるのです。マンション管理組合と同様、環境を維持する任意の法人を設立します。

最後の第三のポイントは、最低6棟をまとめて計画することで、建物の設計の標準化・街並みデザインの調和を図りながら、設計も施工計画も効率化出来て、建設コストを大幅にコストダウンさせること。個々の敷地にそれぞれの施主がハウスメーカーや設計事務所、大工さんなどに自分の好みで別個に頼む非効率さと、街並みのチグハグさを排除することで「新築取得時の価格は安く、将来の自宅売却時は高く」の実現可能性が高まります。家を所有する個人とは別に、他人(地主)の土地を借りているというデメリットを上回るメリットを享受できるのです。

 

■チグハグな日本の住宅地の景観

 

下の画像のチグハグさを見てもらえば、別個に頼む街並みが欧米の街並みとは大きく異なり、入居後に資産価値が急落していくことに気づくと思います。少なくとも10年後に以前の魅力や価格の維持は困難です。

広島郊外の人気の住宅地で開催された「住宅展」。各モデルハウスが個性を競うほど、街並みはバラバラになり、緑のない「電柱・電線」の道路空間は、街の魅力を失わせる。

 

このようにまとまった街区に、一気に住宅を建設することで、建築業者や設計者も、まとまることで建築着工件数の減少をカバーし、魅力ある街づくりに繋がります。欧州の街並みが美しく感じるのは、建物のデザイン以上に環境のデザイン、住宅地全体の調和と維持管理を大切にしているからです。

 

ダブルスネットワーク株式会社 代表取締役 若本 修治(中小企業診断士)

満室保証を謳う「建物サブリース」のアパート経営。建設費は高くオーナーの負担なので、保証の期限に要注意のリスクが高い土地活用。
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