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若本修治の住宅コラム

2026.4.23 第194話

人生最大の資産を扱う業界の責任(中東情勢の混乱に思う)

 2001年5月1日に創業した当社は今月末で25周年となり、40歳で脱サラしてから四半世紀となる25年間会社経営をしてきたことになる。前職は、業界最大手『積水ハウス』で日本一のトップ営業マンから、住宅業界のカリスマコンサルタントとして全国の住宅会社・不動産会社の営業マン育成、経営指導などをこなしていた社長の下、主に西日本の大手電力会社と契約し、オール電化住宅推進のために工務店や住宅会社のネットワークづくり、営業指導などを行っていた。

 

 私自身は、それまで1棟の住宅も売ったことがなく、もちろん不動産売買の契約もしたことはなかった。理系(工学部建築学科)出身の技術畑で東京都内の店舗設計・施工の会社に就職、その後広島に移住して住宅リフォームのフランチャイズ本部のスーパーバイザーを経てこの会社に転職した。大手ハウスメーカーの営業経験者ばかりのこのコンサルティング会社に入って4年の歳月で、新築業界の様々な業界慣習や営業実態を知ることとなった。正しい営業メソッド・姿勢を教えるのだが、今社会問題になっているプルデンシャル生命ソニー生命など、生保業界の営業と同様、売らなければ会社に居場所はなく、会社の知名度や宣伝によるイメージによって『信頼できる会社』を印象づけても、営業マン個人では、お客様との”情報量の格差”(情報リテラシー)を利用した強引かつ狡猾な営業が実績を上げて幅を利かす業界であり、正しい商談プロセスや誠実さを評価するよりも、他業界以上に「”契約”という結果」が求められた。

 施主にとっては“人生最大の買い物(家計最大の支出)”であり、家づくりのスタートは分からないことだらけで不安いっぱいでのスタート。本来は、不安に寄り添い丁寧な説明で納得できるような家づくりのサポートをすべきなのに、実態は“いかに早く契約に結びつけるか”を競うための手法やツール、テクニックが欲しい営業マンや会社幹部がほとんどだ。もっぱらの関心は毎月の契約棟数と契約金額という“残念な業界“に、もっと健全な商売として、社会からもお客様からも信頼・尊敬される業界になるための一石が投じられればと考え、独自のサービス『住宅CMサービス広島』を発案し、今に至っている。

 

 少なくとも姉歯問題が起こるまでは、一級建築士など建築に携わる技術系人材は信頼されていたが、起業の際は、自分の経験や人材ネットワークを棚卸しし、個人を相手とする住宅営業が、誠実に対応するよりも自分の営業成績、会社の売上ばかりを求めて、欠陥住宅などの社会問題が発生している状況を何とかしたかった。さらにいえば、創業後に気付かされた『欧米では住宅は株式以上に安全な資産運用・投資なのに、日本は”減価償却資産”』という悲しい現実を、出来るだけ欧米先進国に近づけたいと、アメリカやヨーロッパの住宅地も視察し、資産価値の続くようなビジネスモデルや事業スキームなどを提案してきた。英国の田園都市「レッチワース」に学び、リースホールド(定期借地権)による住宅供給も『賢い都市型土地活用』という独自のスキームで専用ホームページを公開している。

●賢い都市型土地活用公式サイト

日本の住宅取得は、都内の住宅地などほんの一部の例外を除き、住宅ローンを組んで住宅を購入すると、家計のバランスシートは「債務超過状態」になるケースがほとんど。中古住宅の売買が少ないから表面化していないが、老後に十分なキャッシュ化が出来ない古家の問題が、老後資金の不安や空き家増加などの社会問題に繋がっている。私の過去のコラムを生成AIに読み込ませ、NotebookLMで生成したインフォグラフィックス

 

“担当営業ガチャ“がなぜ起こる?

 

 最近は“親ガチャ”とか“配属ガチャ”など、自分が望まないのに運に任さざるを得ない「ハズレ」を引いてしまう言葉が若者を中心に増えている。住宅取得者向けのYouTube動画も増え、展示場に行くとたまたま対応した担当者がその後も自分たちの担当営業として勝手に決められ、知識や経験値、応対がハズレだと感じる『営業ガチャ』が、どの展示場、どのハウスメーカーに行っても一定割合で発生していることが分かる。会社側の都合で、公平に営業マンに商談機会を提供しようとしているが、そもそも住宅業界は営業マンが多過ぎるから、このような現象が起こっている。

 なぜ大量の人材が必要かと言えば、契約に至るまでの営業効率が低いから。特にマスコミが運営する住宅展示場に出展し、モデルハウスを建てて建設費や出展料を負担、莫大な費用でテレビCMやチラシ広告・イベント等で家を建てそうな見込み客を集めれば、その経費を回収するためには、大量に来場者名簿を集め、個別に連絡・訪問して、しらみ潰しに今後の家づくりの予定を聞く人材が必要だ。

住宅展示場場内マップ

広島市内では最大の住宅総合展示場の案内マップ。このようなライバル企業が集まる展示場では、お客さんの奪い合いだけでなく、水面下では優秀な営業マンの引き抜き合戦も行われている。より給与や働く条件の良い企業の噂に、渡り歩く営業マンが少なくないから、営業手法も”同質化”しがちとなる。

 

 このような住宅メーカーは、契約できるかどうか分からない”一見客”に、一級建築士など専門資格を持つ現場人材を当てるわけにはいかず、新人でも会社の名刺を持っていれば、とにかく会話さえ引き出せば良しというところから商談がスタートする。技術者や現場経験豊富な人材は、契約をしたお客様の新築工事の段取りで忙しく、社会人としてのマナーや礼儀、要望のヒアリングさえできれば、建築知識の有無は問わず、いかにお客さんと仲良くなれるかが求められた。社内でも教育研修に費やす時間よりも、いかに多くの見込み客に会うかが優先されるから最低限の教育しか受けていない。またライバルの他社にも問合せをしているから、実際に家を建てる土地を見つけ、プランを作成しても契約に至らない客も多く、プロ野球の打者と同様、7割以上が“アウト”と分かっていても、無駄な打席(=商談)に立ち続けなければならない。つまり無駄な商談でも積み重ねれば多くの時間を費やすから、雑な打合せが常態化している。

 さらにプロのスポーツ選手と違って、観客もいない、技術を指導するコーチや監督も不在のような状態なので、無駄な打席を減らすための努力もしない。契約に至る「ヒット」や「ゴール!」も、基本動作の徹底や理屈ではなく、運や相性といった“属人的要素”で生まれることが多いのが住宅業界。むしろ相性や運で契約できたら施主も営業マンもお互いラッキーだが、嘘や方便でも契約さえできれば会社は評価し、お客様も当分気づかないという状況さえ少なくない。

 今は市民から選ばれた政治家でさえ、選挙に通れば公約は守らず、少々嘘をついたとしても「相手の解釈が間違っていた」「理解させる努力が足りなかったようだ」と言えば、それ以上追求されない。外資系の生保会社のように、営業成績のコミッションにより収入格差が大きな業界でも、詐欺のような法令違反を個人が行っていても、お客様はもとより会社さえ気づかず大きな損害・社会的問題になっているのは知っての通りだ。いかにテレビCMをやっている有名一流企業、立派な経営者であっても、お客様とプロとの情報格差が大きく、商談が密室で行われ、会社側が十分に商談プロセスを把握できず、1件あたりの成約金額が大きなビジネスでは、営業マンの体質はほとんど同じだと考えていい。

 

 施主にとっては、35年から今では40年超の住宅ローンを組んで、人生を賭けるような一大プロジェクトなのに、たまったものじゃないのが住宅取得の現状だ。これは今現在でも、そして大手であっても大きな差はないのがこの業界の不幸だ。それは、各地の住宅展示場で営業マンの引き抜きや転職が繰り返されており、実績さえ出せばビジネスマナーや誠実さはあまり問われない世界なので、各社を渡り歩いた人材によってどの会社も“業界体質”に染まっているということに気付かされる。さらに言えば住宅業界から外資系生保企業に転職する人も多く、業界横断的に渡り歩いて営業テクニックを共有する機会もあるから、営業ガチャの連鎖は今後も続くだろう。

 私が20年間続けてきたビジネスモデルは、そのような住宅営業マンに頼ることなく、施工会社にも所属しない専門家・プロ人材が、施主に寄り添い不安の解消や問題解決、意思決定のための判断材料を提供するというもの。このサービスは、リクルートのSUUMOカウンターが表面だけ真似してビジネス化されたが、結局は各住宅会社の営業マンに引き継ぐ(割り振りする)だけで、精査も商談の同席もなく、担当営業ガチャの解消には繋がっていない。そこで、私がプロスポーツのコーチ役のように、住宅業界のエースストライカーやリーディングヒッターを育てることで、優秀で誠実な営業マンに見込み客情報が集まり、商談のプロセスも”見える化”して、業務の効率化と顧客満足の向上が同時達成できるようなスキームを考え、業界の人材育成に乗り出した。

プロスポーツの世界、特に球技では、選手の能力や適正に応じて、守備や攻撃の役割を分解・訓練し、得点機会を増やすようなエースストライカー・主砲を育てる。ビジネスの世界も同じで、より営業効率の高い戦術と人材育成によって、契約率を高めてお客様満足度も向上させるという教育訓練とスキームづくりが必要だ。

 

誠実な仕事をする業界体質変革の試み

 

 当社も創業から四半世紀が過ぎて、私も去年高齢者(65歳)の仲間入りをしてしまった。サービス開始当時は四十代前半だったので、家づくりの相談を受ける施主と私の世代はほぼ同じだった。しかし今や親子ほど歳の違う相談者になったことを受け、一般消費者の相談に応じて入札を実施して、固定費の少ない地元工務店とのマッチングサービスは去年より新規受付を停止した。主に住宅業界で誠実なビジネスが出来るような人材育成や仕組みの構築、経営戦略づくりの指導など、プロ向けのサービスを中心に、個人に対しては過去に当社サービスを利用されたお客様からの紹介のみ、家づくりの個別相談に対応をしている。

 

 今回、アメリカの大統領によって、世界の火薬庫と言われた中東に火が放たれ、ホルムズ海峡の閉鎖によって世界経済が人質に取られた。石油の輸入だけでなく、住宅に利用される樹脂系建材や建設資材の原料「ナフサ」の調達が危機的状態になって、ユニットバスやコーキング、塗装の溶剤など、新規受注のストップや価格の急騰など、すでに工事着工を待つだけのお客様でも、影響が出始めている。完成が見通せず、追加費用の発生や引っ越し時期も決まらない不安や、そもそも契約のキャンセルまで出始めている。

建築現場に搬入されたユニットバスの浴槽。今や多くの住宅建材が、石油由来の樹脂・アクリル・プラスティック・塩化ビニール製で、断熱材や梱包材もナフサの輸入が停止されれば製造もストップする。例えば工事の前半で据え付けるユニットバスが入らないだけで、次の内装仕上げ工程に進められず、現場はストップしてしまう。

 

 住宅会社も施主も青天の霹靂で、誰の責任でもなく影響は不可避ながら、過去の東日本大震災等の自然災害による“サプライチェーン寸断(物流の根詰まり)”や新型コロナ禍の”リアル商談の回避(オンライン面談等)”を乗り越えた住宅業界は、その経験を活かしてもっと丁寧な説明や不安解消に務める責務があるだろう。都合の悪いこと、事態が不透明で説明が難しいことこそ、早めに実態を説明して、施主と解決策を一緒に考えるという誠実な姿勢が住宅業界には必要だ。しかし現実には、そのように動いている企業はわずかで、施主に理解と負担を求めて、責任を回避しようと営業を前線に出して誤魔化しや先送りをしている住宅会社が多い印象だ。

 

 建築価格の高騰や建築資材調達の不透明感は、営業マン自身がコントロールできることではない。ましてや自分の報酬や評価が高まる訳でもないが、会社や世界情勢に責任を転嫁できる状況だからこそ、自分を信頼して家づくりを任せてくれたお客様には、その信頼に応えて誠実な対応をする人材が必要だ。だから今後、そのような理念を持った住宅業界の人材や会社を育てていくことを当社の使命として今後も活動することを第26期のスタートに誓いたい。

前回のコラム第193話『外部不経済の容認が”失われた30年”の正体か?』をNotebookLMに読み込ませて生成したインフォグラフィックス。今や、住宅建築の不安や住宅会社の評価も、生成AIが答えてくれる時代になりつつある。営業マンは知識や経験だけでなく、人間でなければ出来ない信頼感や感動を与えるだけの人間力を磨くことが求められている。

 

●コラム第193話『外部不経済の容認が”失われた30年”の正体か?』

ダブルスネットワーク株式会社 代表取締役 若本 修治(中小企業診断士)


 

広島市内の総合展示場。 ライバルメーカーが出展しており、激烈な顧客の取り合いを繰り広げている最前線。
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