2004.6.28 第24号
建物の資産価値 ~スケルトン・インフィルとは~
『住まいづくり専門コンシェルジェ』が綴る家づくり総合マガジン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.024━2004.06.28━
《週刊》 家┃づ┃く┃り┃で┃泣┃く┃人┃・┃笑┃う┃人┃
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~第24号~
◆家づくりは人生最大の「事業」
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◆あなたも「笑う人」になって豊かな生活を送りましょう!
《発行部数2,271部》
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【もくじ】
・建物の資産価値
・お勧めBOOKS
・今週のワンポイント・アドバイス
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このメルマガでは、
現場監督からスタートし、中小企業診断士を取得して、
200社を超える住宅会社の経営指導をしてきた実戦派コンサルタントが、
家づくりという大きな「事業」に失敗しないノウハウを提供していきます。
どこにも影響されない中立的な立場で、住宅業界の実態も伝えます!
あなたの家づくりのセカンドオピニオンとしてお役立てください。
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こんにちは。発行者の若本です。
先週の『住宅性能表示』のビデオ&小冊子のプレゼントは、
先着20名様+2名の方にお送りいたしました。
(ホームページ上で締切表示をする直前の駆け込みで2名追加です。)
ご応募ありがとうございました。
(間に合わなかった皆さん、ゴメンナサイ。)m(_ _)m
先週末、このビデオを監修された、
『日本建築検査研究所』の岩山健一氏の講演会を聴くために、
山口県の周南市まで足を延ばしてきました。
テレビでは話せない番組裏話やメーカーの実名なども明かされ、
参加者は驚くばかりでした。
欠陥住宅の6割程度の原因が、「雨漏り」と「地盤」に起因する
という実態にも関わらず、建築基準法などには『仕様規定』がない!
つまり、どのような材料でどう施工しなさいという規定がないのも同然。
そんな状況の中、一般消費者は高いお金を出して家を購入しているのです。
法律も、消費者を守ってくれるわけではないということですよね。
法律に規定がないから業者を取り締まれないのです。
『自己責任』が問われる時代とはいえ、何のための税金・・・?
では、今週も最後までお付き合いください。
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▼建物の資産価値 ~スケルトン・インフィルとは~
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日本では、「住宅を購入した途端、
翌年から建物の資産価値が下がっていくのが一般的」といわれています。
新築して数年後、転勤で家を空ける事態になったら大変です。
ご主人が単身赴任か、自宅を賃貸にして家族で転居する等々・・・
残念ながら現在の状況では売却しようにも、
とても住宅ローンの残債を返せる金額では売れません。
例えほとんど新築であっても数百万円の借金が残る羽目になります。
いずれにせよ、ひと時の幸福から何らかのリスクを負うことになります。
以前のような土地の値上がりは当面見込めません。
企業からの住宅手当も減っていく一方でしょうネ。(-_-;)
『土地の価格』を上げることは、
不動産を担保にしている法人には朗報かも知れません。
しかし、一般市民は『建物自体の資産価値』が上がる方が
よほど生活や家族の幸せに、プラスの影響を与えると思いませんか?
一方、アメリカでは、建物は資産価値が上がっていくので、
株式よりも確実な投資であるという考え方が一般的だそうです。
アメリカでは、中古住宅の市場が日本のおよそ30倍あります。
ひとりの人が一生で平均7回、戸建て住宅に住み替えるといわれます。
日本の住宅リフォームと変わりないくらいの頻度です。
転勤や子供の独立など、家族に変化が訪れるたびに
今住んでいる家を売却し、次の住宅を探していきます。
その時に、家の資産価値が下がっていないから、
ローンの残債に頭を悩ますこともないのです。
むしろ利益が出るとしたら、老後資金も安心ですね!(^o^)丿
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交換価値って?
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日本では多くの人が住宅に『使用価値』を求めています。
自分たち家族が住むための使い勝手や快適性を追求していくのです。
家の中だけでなく、外観も自分たちの憧れを表現します。
プロバンス風や、煉瓦の家、ログハウスなど・・・
「私達が大金をはたいて買うのだから、
これまでずっと温めていたあこがれの住いを実現するんだ!」
「私達の土地に、私達のお金で自由な建物を建てるのよ!!!」
憧れや趣味だから誰からも、とがめられるものではありません。
しかし、自分たち以外の家族にとって使い勝手がいいとは限りません。
むしろあまりにも個人的な好みが入りすぎると
他人から見れば、欠点ばかりが目につくかも知れないのです。
「プロバンス風なんて、一昔前のデザインじゃない!」
「こんな吹抜け、光熱費も大変だし、お掃除どうするの?」
ますます、中古での売却価格は下がっていきます。(>_<)
▽ ▼ ▽
アメリカの家に対する考え方は『交換価値』です。
つまり、『貨幣価値』と同義語なのです。
これは、万人にとって使い勝手の良いプラン、
将来にわたって価値を失うことのない建築様式、
整った街並みに、建物の外側(外構含む)は社会資産という考え方です。
中古住宅として売却することを見込み、
建物だけでなく庭の手入れも怠りません。
個人の持ち物というよりも、街の環境を守り、
住人全体で街の資産価値を高める努力をしています。
手入れをしない人は、街の資産価値を落とす不心得者です。
不動産を購入する時に、資産価値を落とさないためのルールがあります。
ルールのないところは、やがてスラム化し資産価値が落ちていきます。
日本全国の街並みもそんな懸念があると考えていいでしょう。
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ディズニーランドが大人から子供まで惹きつけるのは
アトラクションがあるだけではないですよね。
パーク内に立って周りを見渡したときに、
おとぎの国しか見えないように工夫されています。
つまり、浦安のホテル群もマンションも、
視線に入らない高さに制限されているのです。
企業側は高層にしてもっとお客を呼びたいでしょう。
採算だけ考えれば、そのほうが儲かりますから。
しかし、考えてみて下さい。
ディズニーランドから、紅白の煙突が見えたり、
京葉線の電車がアトラクションの陰に見え隠れしたら・・・
そして、マンションの上層階から見下ろされたとしたら・・・。
せっかくのおとぎの国も興ざめです。(-_-;)
それこそ、資産価値を落とし、リピーター客も減っていくでしょう。
そうすると設備投資したホテルにも客足が減り、
経営が厳しくなっていくかも知れません。
沖縄のサンゴ礁の中に空港をつくる計画など、
リゾート地には、このような本末転倒な「欲」がうごめいています。
広島県でも、平山郁夫の美術館のモニュメントの向こうに
携帯電話の中継塔を立てて問題になっています。
(これもほんの一例でしょうね。)
すべて『目先の利益』や『利便性』を追求するがために
貴重な資産を失っていることに気づかないことは少なくありません。
失った後に気づいても、すでに手遅れなのです。
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スケルトン・インフィル
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『スケルトン・インフィル』
一般消費者には耳慣れない言葉かも知れませんね。
でも、住宅の基本性能とコストバランスを取るのに重要なキーワードです。
『スケルトン』とは、基礎や柱など後から簡単に取り替えることが出来ない
構造体のことです。人間でいえば骨格や神経系を示します。
『インフィル』とは、内装の仕上げや設備機器など、リフォームで簡単に
取替え可能で、基本性能にはあまり関係のない部分を指します。
例えばテナントビルなどをイメージすると分かりやすいでしょう。
▼『スケルトン』は建物本体で、コンクリートの構造体や
壁、床、天井の内部に埋め込まれた設備配管などを示します。
これ自体は、ビルのオーナーの予算で建てられ、管理されます。
▼『インフィル』はテナントが工事する内装や設備機器、看板などです。
先月まで和食のお店だったテナントが、全くイメージの違う
ファーストフードのお店になるようなものです。
厨房の装置も、レジも客席も全く違うイメージになりますよね。
しかし、建物自体の性能や、上下水道の配管などは変わっていないのです。
『スケルトン』がしっかりしていれば、
『インフィル』は何度でも交換可能なのです。
アメリカ人は、『インフィル』は日曜大工でも揃えられることを知っています。
ホームデポというホームセンターは、99年10月に「ダウ工業株30種平均銘柄」
に選ばれたほど成長しています。米国を代表する30社の仲間入りです。
同時期に選ばれた2社が、「マイクロソフト」と「インテル」といえば
少しはイメージが湧くかも知れません。
もちろん、アメリカには1兆円を超える大手ハウスメーカーはありません。
⇒次週に続く
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▼今週のお勧めBOOKS
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若本修治が読んでみて、家づくりに参考になる本を紹介します。
●基本の「家づくり」百科 関谷 真一 著 [永岡書店]
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4522420250/cmshiroshima-22
↑図解入りで一般消費者にも家の構造や設計のヒントなどが良く分かる本。
かなり突っ込んだ内容まで出ており、営業マンとの対峙でも役立ちます。
基本を超えた「家づくり」の本です。
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┃若┃┃本┃┃の┃┃本┃┃棚┃今週のお勧めBOOKSが本棚になりました。
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私もよく利用しています!! (^_-)<☆
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▼今週のワンポイント・アドバイス
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アメリカの中古住宅の流通に重要な役割を果たしているものがあります。
それは、『インスペクター』というものです。
日本の不動産屋さん(仲介業者)は、建物の価値などお構いなしです。
土地価格を中心として不動産価値を決め、欠陥の有無など十分には調べません。
金融機関も土地の担保価値と、購入者の支払能力しか判断していないのです。
アメリカでは、不動産を購入しようとする人が『インスペクター』を雇います。
建物の欠陥や不具合、補修の必要性の有無などを調査する専門家です。
日本でも耐震補強など、本来は業者ではなく専門家が診るべきです。
(施工とは独立した第三者が望ましいですね。)
日本では消費者自身が建物を「資産価値」と認めていない為、
多くの人が、人生最大の買い物で資産を大幅に目減りさせているのです。
まるで、稼いだお金を、大きな穴があいたバケツに入れている・・・?!
では今週のアドバイスです。
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1.建物を計画するときには将来の交換価値まで考えよう!
2.交換価値を上げるには、街並みの美しさや行き届いた手入れも重要。
3.『スケルトン』はしっかりとつくり、第三者の検査を入れよう!
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『性能表示制度』や『インスペクション』で建物の評価が変わる時代は
すぐそこです。個人の欲望を業者任せにする時代は終焉するでしょう。
日本の住宅の価値を上げていくためには、建築業者だけでなく分譲地を
開発するディベロッパー、建物の品質を担保する仕組み(インスペクシ
ョンなど)、「建物の価値」にお金を貸す金融の仕組み、そして消費者
自身の意識改革が必要です。
この意識改革が出来たとき、低成長時代でも豊な生活が送れるのです。
そのような時代をつくるため、私自身も尽力しています。
■参考情報⇒ http://www.cms-hiroshima.com/clum/vol_44.htm
↑コラム『アメリカの住宅事情』
(若本が書いたコラムに関連知識を載せています)
【 編|集|後|記 】
よく「キッチンは女性でなければ
使い勝手のいい計画が出来ない」と言われます。
主婦経験があるからこそ、お客さまの個別の要望に応え
使い心地の良いキッチン空間が演出できるのだと・・・。
まんざらウソではありません。
しかし、身体寸法などを除いて
機能的なキッチンには共通項があるのです。
プロの料理人が作ったキッチン、ファミリーレストランの厨房・・・
機能的で使い勝手がいいと思いませんか?
女性でなくても、プロにとって使い勝手の良いキッチン空間は
優先順位が上位であれば、「プロのプランナー」は設計できます。
料理人も男性、プランナーも男性でも全く問題はありません。
飲食店ではそのような厨房は数限りなくあります。
男性・女性の差ではなく『優先順位』の考え方だと私は考えます。
プロから見た場合、住宅のキッチンは『インフィル』でしかないので
あまり時間を掛けて設計していないのが正直なところでしょう。
飲食系のチェーン店は、効率よい厨房計画や
店舗の内装デザインをマニュアル化しています。
どこに何を収納するのか、きめ細かく決めています。
あなたの憧れのお店も、「センスがいい」と感じる
共通のデザインや照明計画、サイン計画などがあるのです。
戸建て住宅も、個々の部屋ごとに消費者が望む共通項を整理し、
プロが計画したものが、最もコストパフォーマンスが高く、
『交換価値』も高い住宅になっていくといえるでしょう。
(つまり、安くても使い勝手が良く品質の高い住宅は出来るのです)
実際、アメリカやヨーロッパではそうなっていますし、
パリで先鋭的な建物だと話題だったポンピドーセンターや
シャルル・ドゴール空港が、補修が追いつかないほど痛んでいるのも
逆説的ですが、建築を学んできたものにとっても衝撃的な事実です。
(少し専門的になりすぎました)(^_^;)
「個性的な注文住宅」よりも「良質な建売住宅」が望まれる時代です。
では、また来週♪
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◇ 次回予告
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▼ 建物の資産価値(2) ▼
~定期借地権付き住宅とは~
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●このメルマガでは、
『住宅コスト削減術』や『業者選びのコツ』、『欠陥住宅を防ぐ方法』
から『住宅ローン攻略法』まで、生涯にわたって豊かさに影響する
住居費のコントロール方法を週刊で提供していきます。
【発行者が携わっているサイト】
▼ 家づくりのトータル支援サービス『住宅CMサービス広島』
http://www.cms-hiroshima.com/
▼ 不動産・住宅取得の学習サイト『住まいのキホン・ドット・コム』
http://www.sumainokihon.com/
▼ 住宅にユニクロ方式の生産システム『セルフ・ビルド・プロジェクト』
http://www.koukoku-ya.com/sbp/index.html
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