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若本修治の住宅コラム

2012.12.10 第79話

工種別見積と部位別見積

注文住宅の仕事では、必ずといっていいほど、お客様から見積書の提出が求められる。
この見積書は設計図書と同じくらい工事にも影響を与えるが、契約を取るための辻褄合わせくらいに考えている会社が少なくない。相手の勤務先や年収、建築予算を聞き出して、自社の坪単価と付帯工事などに掛かる費用が概算把握できれば、見積合計額が先にありき。予算がオーバーであれば床面積を縮小し、余裕があれば設備や仕様のグレードをアップすればいい。

見積の目的は協力業者への支払い金額を把握するのが主目的で、施主に対しては「他社との比較が難しいくらいがちょうどいい」というくらいに考えている会社が多いのではないかとさえ思えてしまう。しかし、真剣に見積をすることが、しっかりと利益を確保できるだけでなく、さらにお客様の信頼も得られるということを是非体験してもらいたい。

今年3月にお引渡しした私の相談客も、家づくりを考え始めて3年間、大手ハウスメーカーから地元工務店まで10社の見積を集めたという。その時点では総額でしか判断できないため、すべての会社が予算オーバーで途方に暮れたそうだ。亡き祖父が建てた2棟の借家を解体し、両親と一緒に住む二世帯住宅を計画していたが、土地があることや本人の返済能力から、どの会社も「このくらいは出せるだろう」という想定金額からの見積総額になっていたのだ。

私が社会人になって間もなく、先輩社員から見積を手伝ってくれといわれて驚いたことがある。各協力業者からファックスで届いた見積書をそのまま転記して、単価だけ自社利益を乗せて集計をしていくのだ。数量拾いも見積の項目も業者任せ、女子事務員が桁を一ケタ間違って記載し、お客さんに提出したこともあった。この名残りが業者(工種)ごとに集めた見積を集計し直した『工種別見積書』だ。

工種別見積書は、元請の見積担当者には負担が少ないが、数量の拾いミスは下請け業者に転嫁され、また工種が異なる仕様変更になった場合の再見積は容易ではない。例えば左官工事が予算の都合で経師工事に変更された場合、下地にまで影響が及び、お客様を目の前にしてすぐに差額を説明することが出来ないだろう。「契約後に仕様変更は可能ですから・・・」とお茶を濁し、契約後の変更・追加工事で施主と行き違いになることも少なくないのが実態だ。

上記の相談者に私が提示した見積書は『部位別見積』と呼ばれる書式。例えば木工事や左官工事も、外部の仕上げと内部仕上は、施工する箇所ごとに分け、内部仕上は部屋ごと、床・壁・天井などの部位に分けて見積計上をしている。リビングの壁だけ珪藻土を塗る場合と、室内全部400㎡を左官仕上にする場合には、当然単価も変わってくる。部位別見積であれば、部屋ごとに仕上材を変更したり、部屋の一部に腰壁を設けても、金額の変更も容易で、施主の了解も得やすい。なぜなら施主でも計算が可能だからだ。

部位別見積は、仕上表を見慣れている人であれば、比較的簡単に出来るのも特長だ。仕上表に沿って、構造や外部仕上げ、部屋毎・部位毎に「部材」と「数量」を拾い出せば、見積書の書式は出来上がる。「この部屋に木工事があっただろうか?」とか「左官工事を見落としていた」なんてことはほとんどなくなる。なぜそこにこの部材を使うのか、コストを下げるためにはどの材料を変えるのが効果的なのかなど、見積の段階でシミュレーションも可能だ。
仕上表の記載ミスも、外部から指摘されることなく、自ら見積を作っている段階で再チェックできることも大きい。

部位別の見積をつくることは、お客様にも丁寧に説明するようになる。お客様も納得して部材を選ぶから、契約前に全ての明細が決まり、工事着工後は計画通りに進みやすい。

当サービスで入札に提出された見積書と提案資料。部位別見積ですべて数量と単価が記載され、分厚い資料が提出される。
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