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若本修治の住宅コラム

2013.1.10 第80話

『アベノミクス』が地方や一般市民に効果がない理由。

住宅生産性研究会が設立されて20周年という。奇しくも日本経済が「失われた20年」と言われ、この間、歴代の内閣が大盤振る舞いの経済対策を行ってきた。国債残高は1千兆円を超えながら一向に日本の景気、特に地方や中小企業、一般市民まで実感できる景気回復には至っていない。景気指標は全国的に回復基調と発表されるものの、ほとんどの国民がその実感を得られていないのではないだろうか?その理由を探るために、この20年間日本で行われてきた経済対策がどのような層にどのような効果をもたらせたのか、下のマトリクス図を描いて分析してみた。

 

まずは縦軸に『賃金の上昇と停滞(下落)』を、横軸に『資産の上昇と下落』として、それぞれどのような層がどのように分布するか、大きな塊で配置してみた。アベノミクス効果で地方の中小企業まで「賃金の上昇」に協力してくれれば景気回復は地方まで行き渡るが、実際には経団連加盟の一部の大企業が一時的に政府に協力姿勢を見せているくらいで、しかも「継続性は疑問符が付く」のが現実だ。政府がいかに期待しようとも、雇用・賃金のグローバル化が進み、非正規雇用が増えて人口減が進む地方で、大多数の企業が賃上げする状況にはないのは、政府や日銀でなくても火を見るよりも明らかだ。

 

個人資産の上昇が日本を助ける!

 

下のマトリクス図は、分布が集まるであろう属性を4つに分類し、それぞれどのような層がいるのかを配置したもの。アベノミクス効果で賃金も資産も上昇する右上の層を『1.大都市成功者』と名付けた。大企業の幹部や成長を続けている企業経営者など、首都圏で不動産や株などの資産を保有し、アベノミクス効果を一番享受している層だ。多めに見積もっても日本の人口の2%に満たないだろう。

 

続いて右下の層は『2.資産家・富裕層』として、都市部の資産家や高度成長期に資産を築いた大都市圏の高齢者、地方在住の投資家など。この層の人たちは給与所得をほとんど得ていないので、賃金や年金に影響を受けない層だ。金融緩和や経済対策によって、ほとんど努力することなく資産を増やし、高額商品の購買も可能となっている。

そして左上には『3.猛烈仕事人』と名付けた仕事に結果を出し賃金(収入)を増やす層がくる。懸命に働き、ある程度の余裕が出ると自宅を購入するものの、ほぼすべての物件で資産価値が下落し、土地しか担保評価が得られない。地方の黒字経営の中小企業経営者や、地方に住む上場企業の中堅社員、出世コースに乗っている公務員などがこの層になるだろう。恐らく人口比で1割未満ではないだろうか。

そして最後に残る左下の層は『4.一般勤労者』と名付けた層。地方に暮らす勤労者や、利益の出ていない中小企業経営者、自営業の人たちなど、多くの日本国民がこの層にいる。地方の公務員や農林漁業の従事者も多くはこの層だ。恐らく8割以上の国民がこの層であり、この層に効果ある経済対策を打たない限り、デフレの脱却や景気回復は国民全体に行き渡ることはないだろう。

 

このように見ていくと、現在実施されている経済対策は、最大で国民の1割に満たない右側の層だけが経済効果を実感でき、自らの地道な努力で得たお金ではない「余剰資金」や「不労所得」で高額消費をしているに過ぎないことが、今の景気回復の正体ではないかと想像される。

 

最もボリュームのある左下の層で、少なくともコツコツとお金を貯め、住宅購入をした勤労者が「資産形成」をして豊さを感じる社会にすることこそ有効な景気対策だろう。つまり、努力して住宅を取得することで資産効果が現れ、地方でも個人資産が上昇する社会が、今求められている。

英国ロンドン近郊の田園都市「ハムステッド・ガーデンサバーブ」は分譲から90年以上経っても資産価値が上昇し続けている。
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