広島で「家づくり」のお悩みごとを丁寧に解決していく(コンストラクション・マネジメント)CMサービスです。

メールでのお問い合わせは24時間受付中!
12時間以内にお返事差し上げます!

若本修治の住宅コラム

2026.2.04 第193話

外部不経済の容認が”失われた30年”の正体か?(解散総選挙に問う!)

 60年ぶりの“丙午(ひのえうま)”となった2026年がスタートし、いよいよ物価高対策や経済政策が国会で議論されると期待したお正月早々、史上初めて誕生した女性総理大臣が「解散総選挙に打って出る!」と政界を揺るがした。

 『責任ある積極財政』によって、世界の中心で咲き誇る強い日本を実現させると息巻いて、国会開催初日の冒頭解散を宣言した。“政治の安定”なくして、力強い経済政策や安定した外交・安全保障も推進できないと訴えるが、自民党が「一強他弱」と呼ばれ圧倒的多数で安定政権だった約10年間(安倍・菅・岸田政権)、経済は長期低迷、所得は伸びずに後半は物価が上昇し格差は広がって「失われた10年」が30年まで伸びたのは紛れもない事実だ。むしろ石破政権以降の、少数与党となって安定政権を失い他党化したほうが、少数政党の意見も取り入れ、政策が練られて「見える化」していた。ようやく“熟議の国会”が見え始めた矢先の解散総選挙が、保守を掲げる新しい女性総理の意思決定だ。

 

 最近気になるキーワードで『外部不経済』という言葉がある。主に“企業の生産活動”が環境に悪い影響をもたらせ、政治が積極的にその対策を取らないために、弱い立場の人々(消費者やマイノリティ)に不利益を及ぼすという事象をいう。古くは工場から廃棄される大気汚染や水質汚濁、騒音などの公害から、最近では温室効果ガスによる気候変動など大きな社会問題になる地球規模の課題も多い。『フリーライド(ただ乗り)』とも言われる。

 住宅・不動産業界で言えば、過剰な新築着工の推進(放置)と、少子高齢化による空き家の急増や不動産価格・建築コストの高騰だろう。郊外に住宅がスプロール化することで、道路や上下水道等のインフラ投資や小中学校の整備を公費で支出、30年も経てば一気に高齢化し子供たちも別の場所に居住、空き家の増加やインフラの老朽化が、今後自治体の重荷になっていく。小中学生も卒業し、子どもたちが減っていけば、将来的に小中学校の合併・統合や閉校などが避けられない。建物も老朽化し、廃校になった学校がすでに大都市圏でも出始めている。


 下の画像は、広島郊外の大型団地の入居増加に合わせて1998年に開業した『スカイレール』撤去の現場。主要な住民は21世紀になって移り住んできたから、まだ他の団地ほどの高齢化や空き家の増加はないのにも関わらず、移動手段のインフラ維持が困難となり、2024年の4月に運行を停止。解体作業が進み、団地住民は自家用車かコミュニティバスでの通勤・通学を強いられている。当社が配信していた『土地・業者選びのポイント』のVol.15_No.23(2020.09.10発行)にこの団地の誕生と変遷を詳しく紹介している。

■広島の団地シリーズー安芸区スカイレールタウンみどり坂

広島市の郊外、JR瀬野駅の北西にある丘陵を中堅ゼネコンと大手ハウスメーカーが宅地開発。1997年に入居開始をした大型団地で、画像のようなモノレール(スカイレール)を団地内の3駅とJR駅を直結したものの、たった25年で老朽化や車両の交換部品の廃番などから維持ができず、2024年4月に運行を停止。現在レールの撤去工事が進んでいる。まだ高齢化や空き家の増加に見舞われていないこのような新興団地でさえ、インフラの維持は厳しくなっているのが現状だ。

 

 バブル崩壊後の平成以降に開発許可がなされた”郊外の大型分譲地”の多くが、経済成長のための規制緩和や低金利政策、補助金や税制優遇による過度な新築着工誘導など、政治による“景気刺激策”により「外部不経済」が生じている。居住地のスプロール化によって産業界は春を謳歌したが、消費者や納税者・自治体は目に見えない多額な負担を強いられている。低い住宅ローンで住宅を取得した人も実は大きな損をしている(=外部不経済を被っている)のだ。

 雪山でルールを守らず遭難して捜索隊を出させたり、ゴミのポイ捨て問題等の観光公害(オーバーツーリズム)や、日本の社会規範を無視して周辺に迷惑をかける外国人の移民問題、自治会費を払わず地域活動にも貢献しない分譲マンションの住民たちも災害時には公平に施しを受ける等、このような”自己中心的”人々の行動が、その自治体や地域住民にとっては『外部不経済』をもたらせていると言えるだろう。

 

産業界優遇か?生活者第一か?

 

 今回の総選挙は、政策的な争点は乏しく、新しく離合集散した『中道改革連合』が掲げる“生活者ファースト”が、隠れた争点の代表的なキャッチフレーズだ。『チームみらい』を除く各党が”消費税の減税”を訴えているから「力点を置く対象者の違い」でしか特長を出せていない。“手取りを増やす政策”や“社会保険料の引き下げ”も同様、生産者・企業よりも、一般国民・消費者により優しい社会を実現させようということだろうが、各党の主張は”微妙な差”しか感じられない。

 むしろ「企業活動により、生活の利便性が高まり、雇用も創出、公共事業により移動が便利になって図書館や音楽ホールなど公共施設が充実すれば、生活も豊かになる。」と感じた高度経済成長期から1995年くらいまでは、国民や消費者が負担するお金に比べ、経済的メリットが高かった。この時期は『外部経済』と呼ばれ、個人の努力に関わらず地価も給与も上昇、高い金利で借り入れた住宅ローンもそれ以上に資産価値が膨張し、経済的余裕が生まれた時代だ。

 道路や下水道などインフラが整備され、全国どこに行っても衛生的な環境で安全・安心が担保できる社会が生まれ、産業界も消費者(一般国民)も豊かになったが、今やビッグテックと呼ばれるAmazonやGoogle等のグローバル企業によって、ほとんど税負担することなく日本国内のインフラを利用し、誠実で勤勉な日本の人々から多くの利を得てお金を海外に流出させている。この『デジタル赤字』もフリーライドの典型的事例で『外部不経済』に該当するのだ。

 

 去年(2025年)亡くなった元社会党党首の村山富市氏を総理に担いだ『自社さ政権』発足から、1997年頃の金融危機(証券会社や大手金融機関の経営破綻)を経て、2001年からスタートする「小泉・竹中改革路線」で聖域なき構造改革が進められた。生活者・一般市民よりも産業界を元気にさせる“新自由主義路線に舵を切って非正規雇用や派遣社員を増やし、生活者が割りを食う“外部不経済”が急速に進んだというのが私の見立てだ。

 その結果、経済成長が鈍化し、給与所得は伸びず、どれだけ国が国債を発行して金融をジャブジャブに市場に流し込んでも、デフレ経済が続くという『失われた10年』が20年と続いていった。この間、どの政党が政権を奪取し、与党として政治の舵取りをしていたのか、今回の総選挙ではそのことを忘れてしまった人が多いのだろうか?

 奇しくも、2012年11月の解散総選挙で民主党「野田政権」が倒され、安倍総理が第2次安倍内閣を発足させて『アベノミクス』を華々と掲げた翌月、2013年1月の私のコラムには“『アベノミクス』が地方や一般市民には効果がない理由”というタイトルで、失われた20年がその後も続くことを予見し図解入りで解説した。振り返ってみると、トリクルダウンは起こらず、私の指摘どおりになっている。以下のリンクで読み返して欲しい。

■コラム80話『アベノミクス』が地方や一般市民には効果がない理由

 

外部不経済の解消が国を強くする!

 

 私は、現状をそのままに『生活者ファースト』のようなキャッチフレーズを掲げて消費税減税や現役世代の手取りを増やしても、日本の今の潮流は変えられないとみている。消費税は、一般国民の負担は大きいものの、企業は仕入れ税額控除還付金などで特に大企業の負担は小さく、インボイス制度などで中小零細企業は事務作業負担が大きな“複雑な税制”になっている。そのこと自体を指摘し、正しい税制を新たに作ったほうが良いと訴える知り合いの税理士もいて、税制や政府の方針が“外部不経済”を招いていると言ってもいい。

 税率引き下げや食品を対象外にといった枝葉末節の議論で、消費者の負担感や将来不安は消えず、企業側は“便乗値上げ”の機会を提供されて「価格据え置き」がかなりの割合となるだろう。そうなれば、景気刺激策どころか物価高対策にもならない。むしろ、長期にわたる金融緩和による“低金利政策”が、円安によるエネルギーや食品価格を押し上げる『コストプッシュ型インフレ』となって物価高に悪影響を与えている。さらに給与所得のない高齢者や相続財産を得た資産家の親族が、郵便貯金や定期預金・割引金融債などの安全な資産運用手段を“ゼロ金利政策”で奪われた30年間だった。経済成長もないのに外部不経済にさらされたのは庶民だったのだ。今の物価高がさらに追い打ちを掛けている。

 

 つまり多くの日本国民は、将来目減りする可能性のある株式投資や収益目的の不動産投資には慎重(もっと言えば”臆病”)で、不安を抱える国民性なので、たとえ低金利でも預貯金を貯めるのが安全だという”国民の性質を理解した”政策運営が内需の安定には必要だったのだ。自宅が寒くても熱帯夜でも”じっと我慢する”国民性だ。それ(5~8%程度の利息収入)を奪えば、デフレが続くのは必然だった。政府や中央銀行自体が「ゼロ金利」によって、それ(=ゼロ成長)が日本の成長余力だと認めたようなものだろう。誰かの損が誰かの得になるような”投機マネー”が流れ込むような金融商品・不動産投資・短期的な株の売買市場が、一国の経済指標として評価される社会は、『外部不経済』そのものと言ってもいい。

 だからウォール街のようなグローバル金融資本に影響される政治こそが、国内の中間層の貧困化や格差拡大を支援しているようなものだ。政治家の殆どがそのことに気づいていないこと自体が問題で、消費税減税などは財政を悪化させ、日本を弱体化するだけに終わるだろう。むしろ金利を高め、金利以上の高収益を上げなければ生き残れないと企業マインドを刺激し、生産性の低い企業が市場から退場するような政策が出来なかったことがデフレを長期化させたといっても過言ではない。

 新しく”中道”を掲げた政党が苦戦を強いられているのも、過去の民主党政権や新進党時代の”政権交代の失敗”が恐怖心となって、政権与党のほうが安心だ(=失敗をしたくない・リスクは負えない)と思わせる”日本人のメンタリティ”が現状を生んでいるのだろう。2012年の12月、当時の民主党野田総理が、安倍自民党総裁の挑発に乗り、解散総選挙を仕掛けた時に、私が緊急作成した『デフレの原因と処方箋』を再掲しておく。

2012年12月、民主党野田政権が解散総選挙を打って出た選挙前日、ブログで配信した『デフレの原因と処方箋』の図解。まだ第二次安倍政権が誕生前で、デフレのほうが国民にとっては生活にプラスだと解説していた。10年以上かけて実現した”今のインフレ(物価上昇)”を歓迎している人は少なく、ほぼ全ての政党が「物価高対策」を公約に総選挙を戦っているのは皮肉としか言えない。

 


 住宅供給に関しても、バブル崩壊後も新築着工を経済指標にしたため、一戸建てだけでなく、賃貸アパートや分譲マンションなども供給過多で、新居に引っ越した途端に”新築”であっても資産価値が急落する。ゆっくりとしか減らない住宅ローンを年度末に計算すると、家計の決算のB/S(バランスシート・貸借対照表)では殆どの家庭で“債務超過”状態だと気付かされる。政府や自治体、家計はほとんどバランスシートを計算しないから気づかないだけだ。

 ここにも住宅産業、マンションデベロッパーを儲けさせることを最優先し、消費者が事実上損を被る“外部不経済”が今もなお進行している。立派な住宅総合展示場のモデルハウスも、誰も住まず多大な広告宣伝費を掛けて、顧客名簿を集めるだけの装置で、その費用を購入者が負担していることを考えると『外部不経済』に他ならないだろう。

 激甚災害等で被災した「先行きの見えない人たち」への”家屋損失の見舞金”よりも、住宅ローンを負担して長期で返済できる「経済力のある人たち」へ”省エネ補助金”や”子育て補助金”で手厚く個人の資産形成に国家が予算計上している。しかし結果的に割高な建築費を誘引し、企業側を儲けさせているだけだ。仮設住宅で暮らさざるを得ない被災者と比べ、同じ住宅を所有する個人(国民)への”税の公平さ”は感じられない。

 欧米のように、都市計画で「空き家率」をコントロールし、新築の供給を抑制、良質な中古住宅が適正価格で流通するような社会になれば、住宅を取得することで含み資産が増え、高齢になっても自宅を担保にもっと人生を楽しむことが出来るだろう。自治体も、安定した固定資産税の収入と、スプロール化を止めることでの将来のインフラ維持等の支出を抑えられ“外部不経済”からの脱出シナリオを描くことも可能だった。ちなみに欧米では日本のように注文住宅を扱う「大手のハウスメーカー」は存在せず、住むことなく解体されるような総合展示場のモデルハウスもない。

家計のバランスシートは、住宅を購入するまでは大きな資産は「自家用車」や「パソコン」などせいぜい数百万円と現預金が多くの日本国民の平均的な姿だった。住宅を取得することで、現預金(流動資産)を減らし、住宅ローン(固定負債)が大きくなって、土地・建物(固定資産)を取得したことを図式化した”個人の決算書類”がこの図。残念ながら、建物の資産が減価償却することで、すぐに「債務超過」に陥るのが日本の住宅取得の常識となっている。


 “国を強くする”とは、子供が数多く生まれる社会にすることで、平均年齢を下げていくような政策を立案することだろうと思う。さらに言えば、昔のように子供たちの笑い声が聞こえて親たちも安心するような社会をどう作るか、そんな国づくりの政策を選挙で掲げる政党が出て欲しい。今は子供の声さえ“公害”のように外部不経済化させ、学費や医療費を無料化させても、札束で票を買い集めているだけにしか映らない。グローバルサウスと呼ばれる国々でも、子供たちや若者が元気な国は、小さな国であっても活力に溢れている。

 人手不足以上に、購買層が減っていく“人口減少”と購買力が衰える“超高齢化”という”需要不足”こそが、国力を弱体化させ、産業の空洞化を生んでいくだろう。日本には外部不経済を放置している余裕はなく逆に「何が今、外部不経済となっているのか?」を徹底的に探し出し、特に中間層を中心とした国民・生活者が『外部経済』の恩恵を受けることが出来るよう、制度や政策を大転換することで、人口減少局面においても国民が豊かさを感じる社会を構築できるのではないだろうか?それは外部不経済を排除し、日本の中間層が子育てがしやすい経済的・精神的環境を整えることだ。

 

解体作業が進むスカイレール。大手ハウスメーカーが総力を上げて分譲した大型団地で、まだまだ新しい家も多く空き家はほとんどない。しかしJRの通勤ではコミュニティバスかJR駅周辺に月極駐車場を借りるしかなく、パーク・アンド・ライドを強いられている。団地内の「みどり坂中央公園」から撮影。

 

ダブルスネットワーク株式会社 代表取締役 若本 修治(中小企業診断士)


【追伸】防衛力強化と国力について

 国家観を語る保守系の人たちだけでなく、多くの政党が「国際的な安全保障環境から見て防衛費増額は私たちも賛成だ!」と国防への予算配分を是としている。日本が仮想敵国として“中国”の脅威や侵略を想定しての防衛力強化・防衛費の倍増であるなら、経済力の差や兵器の開発力、製造能力をしっかりと分析・把握したほうがいい。湯崎前広島県知事が「フィクション」とまで指摘した”現実的には使うことが出来ない核兵器”よりも、もはやサイバー攻撃やドローンの飛来、ロボット兵器など、国際紛争での戦い方が変わってきた。日本のような道徳観や倫理観によって武器開発の研究者・生産事業者では躊躇するような新技術も、覇権国家はやすやすと乗り越えて、最新技術を実戦投入するだろう。もはや民生分野でも負けている日本が、兵器で勝る確証はない。

 したがって残念ながら、冷戦時代のソ連とアメリカの軍拡競争で分かる通り、経済力や人口規模の差が大きければ、体力勝負で弱体化に追い込まれるのは、人口や経済規模の小さい国だ。日本は大東亜戦争(第二次世界大戦)で懲りたはずだ。もっと言えば「国を強くするための防衛力の強化」は“外部不経済”となる懸念が大きく、軍需産業、つまり日本以外の「武器輸出国」を富ませる“日本弱体化政策”をアメリカや中国が静かに進めていると疑ったほうがいいとさえ言える状況だろう。第二次トランプ政権も『ドンロー主義』を掲げ、西半球を最優先する国家防衛戦略でもそれがみてとれる。日本の政治もしたたかな外交戦略で将来リスクを回避すべきだろう。

 政治家が大国を牽制・挑発し、勇ましい言葉で国民に鼓舞すると、防衛費の多くは日本国内にほとんど留まらずに国外に流出し続け、リターンはない。むしろASEANやアジア太平洋地域のミドルパワーの国々への外交や経済協力を通じて、友好国への投資に切り替えたほうが、他国の経済成長がリターンとして日本に還元され、同盟関係がなくとも国際紛争への抑止力と日本への信頼、日本の国際的地位を高めるのではないだろうか?戦争は”究極の外部不経済”でしかないが、ミドルパワーの国との連携と積極投資は、知的所有権など日本の知識や文化の輸出にも繋がり、外部経済を海外に広げる好機にもなるだろう。

 今の政治は逆の方針を進めているようで心配は尽きない。
外部不経済は、経済安全保障も含め、日本の国防にも大きな影響を与えている。

ボールドウィンパーク
米国フロリダ州オーランドで開催されたNAHBの展示会視察で見学したボールドウィンパークの住宅地。リーマンショックで一時的に価格が下落したが、このような良質な環境や景観を維持することで、すぐに不動産価格の正常化・適正化に戻った。日本の郊外住宅では考えられない『外部経済』の実例だ。
スカイレールタウンみどり坂
1997年から入居がスタートした広島市安芸区の『スカイレールタウンみどり坂』。2000区画近い大型分譲地に大手ハウスメーカー中心に戸建てを分譲し、JR瀬野駅から「スカイレール」と呼ばれる懸垂式モノレールを3駅配置し、通勤通学に利用されていた。しかし維持管理ができなくなり、たった25年間で廃止。レールの撤去作業が進んでいる。
一覧に戻る