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家づくりで泣く人・笑う人

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2005.10.31 第68号

家づくりのキーマン「大工さん」   ~一番の情報源は誰か?~ 

『住まいづくり専門コンシェルジェ』が綴る家づくり総合マガジン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.068━2005.10.31━

《隔週刊》 家┃づ┃く┃り┃で┃泣┃く┃人┃・┃笑┃う┃人┃
      ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ 
                        ~第68号~
  ◆家づくりは人生最大の「事業」
  ◆事業を成功に導くための、プロのコンサルタントの助言
  ◆あなたも「笑う人」になって豊かな生活を送りましょう!
                    《発行部数3,135部》

【バックナンバータイトル一覧】
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  ⇒このバックナンバーであなたの家づくりの常識が変わります!!
   気になるテーマを印刷して、是非ご夫婦でお読み下さい。
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【もくじ】
 ・家づくりのキーマン「大工さん」
 ・編集後記
 
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 このメルマガでは、
 現場監督からスタートし、マネジメントの専門家『中小企業診断士』資格を
 取得して、200社を超える住宅会社の経営指導をしてきた発行者が、
 家づくりという大きな「事業」に失敗しないノウハウを提供していきます。

 どこにも影響されない中立的な立場で、住宅業界の実態も伝えます!
 あなたの家づくりのセカンドオピニオンとしてお役立てください。

 ■発行者のプロフィールはこちら
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 こんにちは。発行者の若本です。

 大手生命保険会社のM社が今年二度目の業務停止命令を受けました。
 皆さんもご承知のとおり、悪質ともいえる「保険金の不払い」です。

 契約時には「いざというときのための保険です!」と勧めておきながら、
 いざというときに「今回のケースではお支払いできません」と拒むのです。

 あまりにも苦情が多くて表沙汰になったのでしょうが、
 水面下でどれだけの人が泣いたり、あきらめたのでしょう。
 気づかないままの人もいたのかも知れません。

 住宅の場合も「悪徳リフォーム工事」が話題になりましたが、
 新築でも、保険の不払いと同様、あきらめている人が少なくありません。

 「それって、欠陥住宅のことでしょう!」

 賢明な読者は「ピン」と来たかも知れません。
 しかし、欠陥住宅よりももっと数が多く、巧妙な手口があるのです。
 (巧妙というと変ですが・・・)

 それは、

   ・

   ・

   ・

 「追加変更工事」です。

 契約後、あるいは工事着工後に見積に入っていない工事が発生します。
 例えば、地耐力不足で発生する「地盤改良工事」などもそのひとつ。
 また「後悔したくない」と、仕様変更をお願いすることもあるでしょう。

 「テレビでCMを流しているから大丈夫だろう!」
 「とても誠実な営業マンだから、きっと間違いない!」

 契約時に値引きをしてもらって喜んでいたら、
 今回の大手生保の「保険金不払い」と同様になるかも知れません。

 詳しくはブログで!

 ⇒ http://esumai.livedoor.biz/archives/27964900.html

 では、今週の本文の始まりです。 

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 ▼家づくりのキーマン「大工さん」 ~一番の情報源は誰か?~
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 現代の家づくりは、ほとんどが「営業マン」との接触からスタートします。
 営業マンに展示場を案内され、プランや見積の提示を受けます。

 仕様や性能の説明から、資金計画まで、
 社内で教育訓練された営業マンがすべて誘導してくれます。

 しかし、実際に家を建てるのは、大工さんを中心とした職人たちです。
 それは大手プレハブメーカーでも、その構図は変わりません。

 ユニット系住宅では事情は若干異なるでしょうが、
 全く「大工さん」が入らずに家づくりをするケースはないでしょう。

 ある意味、「建築の素人」である営業マンからの家づくりがスタートが、
 日本の住宅をおかしな方向に向けてしまったのかも知れません。(-_-;)

 日本の気候風土にあった伝統的な建築様式はほとんど消えてしまい、
 住宅の価格は世界中を見ても、異様に高い買い物になっています。

 今回のメルマガでは、本当の家づくりの主役
 「大工さん」にスポットを当てて、家づくりの本質を考えてみます。

       ●———————-
          大工に資格は?
       ———————–●

 昨年7月に、宮大工の大森棟梁のことをメルマガで書きました。
 奈良の薬師寺の伽藍復興を始めとして、日本の木造技術伝承のため、
 さまざまな活動を行なわれています。

 私も昨年、埼玉県狭山市にある大森棟梁の事務所に訪ねました。
 住宅に携わるものとして、本物の人物にお会いしたいとの想いからです。
 もちろん、「本物の人物」とは、一流の人という意味です。

 私が今あるのも、住宅業界で一流の人たちとお会いしてきたことです。
 一流の人から教わることは、経験年数を超えて血肉となります。
 大手企業に長年勤めるよりもはるかに学ぶことが多いのです。

 設計業界では知らない人のいない建築家の故宮脇檀さん。
 ⇒(建築学科の学生時代、オープンデスクで設計事務所体験)

 住宅営業の「カリスマ」コンサルタントとして有名で、
 独立前に4年間お世話になった(株)リックの丸山景右社長。
 ⇒(元積水ハウスのトップセールス、13年間の記録が428棟!)

 田舎の小さな工務店として、大手からも視察が相次いだ
 ヨハネ建設<山口県岩国市>の藤本傳会長。
 ⇒(私がリック時代に視察研修会の企画をし、全国から参加がありました!)

 数奇屋建築で有名な菊池建設<静岡市>の中尾由一社長。
 ⇒(兵庫県三田で建てた1億円超の住宅の工務店向け視察研修会を企画)

 等々・・・。

 今思えば、数え切れないほどのプロ中のプロの方々にお世話になりました。
 おかげ様で、今日でも多くの一流の方々との交流をいただいています。
 一流の人には、やはり一流の人脈があるのです。

 最近では、建築検査のプロ、岩山健一さんにも大切なことを学びました。

 しかし、実際に木を刻み、家を建てる一流の職人にお会いしたことは
 残念ながら、いまだかつてありませんでした。

 一流のプロの言葉には、重みがあります。
 ものごとの「道理」が分かるからこそ、語れる言葉です。

  >>>「大工こそ、一級建築士を取得しなければダメだ!」<<<

 大森棟梁が、建築士の資格の話をしたときには私は驚きました。
 職人というものは、「資格よりも腕だ!」と考えていると思っていましたし、
 しかも、建築基準法などカヤの外、人間国宝級の宮大工棟梁からの発言です。

 しかし、大森棟梁の主張はシンプルでした。

  「カリスマ美容師でも、美容師免許を持たず問題になった!」
  「大工が建築基準法も知らずに、家を建てるのか!」

 至極あたりまえの主張です。

 髪をカットしたり、パーマをかけるのにも「美容師免許」が必要です。
 美容師は、生命や財産に影響を与える仕事ではありません。
 でも、資格が無ければ業務停止となります。

  「自分たち宮大工にとっては、建築基準法に不備はたくさんある。
   住宅性能表示制度についても、ちがうチェックポイントが必要だ!

   しかし、少なくとも日本国内で家を建てるのに、
   法律に基づかない施工をするわけにはいかないだろう。」

 美容師と異なり、大工のミスは生命や財産に大きな影響を与えます。
 だからこそ、資格のない者が「腕だけ」で仕事をしていることに、
 一流の職人には、危うさを感じているのでしょう。

 本当に「腕」があればまだしも、「大工」ではなく「小工」が
 たくさんいる住宅業界を目の当たりにして、危機感があるようです。
 「大工」の地位や技術力を高めたいという気持ちが強く感じられました。

       ●———————-
         自然素材は高い?
       ———————–●

 昨年、木造住宅にとてもこだわりを持つお客さんの相談を受けました。
 住宅資金を援助するお父さんの、家づくりに対するこだわりです。

 「自然乾燥をさせ、手刻みで加工した国産材じゃないとダメだ!」
 「木というのは『適切な切り時』があって、それも・・・」

 昔、自宅を建てたときに大工に「地元のヒノキ」と聞いていたのに、
 二十年も経ってリフォームしたときに「杉」だったと分かったそうです。

 その大工はすでに亡くなっており、怒りのやり場がなく、
 息子たちの家づくりに「リベンジ」を誓って、猛勉強した結果です。

 いくつも木の産地に出掛け、「出雲に有名な宮大工がいる」と、
 家族旅行代わりに大工棟梁に会いに行くほど、熱心でした。

 あまりにも多くの人たちから情報を集めすぎた結果、
 混乱し、とても予算内に収まりそうもありません。

 でも、一度いいものを知ってしまうと、二流品は使えません。
 (特にお父さんの世代ではそうではないでしょうか・・・?)

 そこで大森棟梁の話をすると、息子さんと2人で、
 さっそく埼玉県狭山市の事務所まで話を聞きに行ったのです。
 (なんという大胆さか・・・)

 「私たちの予算内で、国産材の自然乾燥、手刻みの家が出来ますか?」

 面積は50坪弱、予算は2400万円です。

  ※ちなみに私が行なった入札では、プレカットであれば、
   自然乾燥のヒノキ4寸角を使って、予算内の会社が1社です。

 大森棟梁は言いました。

 「私自身は住宅の仕事はしないが、そのくらいの予算で出来るでしょう」

 大森棟梁から広島の設計者を紹介され、見積を待つこと1ヶ月近く・・・
 出てきた見積は、何と3600万円(!)でした。 (*_*)
           
 「棟梁の指示する仕様で建てると、普通これくらいの金額にはなる」
 という説明です。地元の「手刻みをする」普通の大工を使った仕事です。

 しかし、実際に大森棟梁が身内の家を建てた時、
 いくらかかったかを尋ねてみました。

 自ら吟味した無垢のヒノキに一流の職人たちを集めて、
 30坪弱の二階建ての家を建てたのだそうです。
 (規模はかなり小さい建物です)

 屋根も、奈良の社寺建築で仕入れている一流の瓦屋から、
 住宅用の瓦を注文し、葺いたものです。

 人間国宝級の宮大工が、自然乾燥した国内産のヒノキを、
 自ら材木屋から1本1本選び、手刻みをして建てられた家です。

 基礎も、通常のベタ基礎(棟梁は土間式コンクリート基礎と呼んでいる)
 ではなく、薬師寺と同様「版築」と呼ばれる重厚な基礎です。

 一体、いくら掛かるのか、私たちには想像がつきません。

          ・
          ・
          ・

 しかし、総額900万円台で出来たというのです。
 もちろん、サッシやキッチンなどを含んだ金額です。 (@_@)

 驚きですね!

 一流の棟梁と職人たちが直営工事をすると、
 段取りが良く、手も早いため、無駄なく整然と仕事が進むのでしょう。

 恐らく、キッチンなどの住宅設備は「付いておけばいい!」
 というような機器を選ぶことで、このような値段で済んだと思いますが、
 耐久性や耐震性、住み心地などの基本性能は、間違いないでしょう。

 これこそ、価格破壊の骨頂です。
 坪単価で「ローコスト」を訴求するよりも、
 大工を中心とした意識変革が最も効果が高いのです!

 TVCMをやっている「ローコスト住宅」に飛びつくと、
 大手生保会社のような事態にならないとも限りません。

 「最初聞いたのと話が違う!」

 私は大工こそ、家づくりの「キーマン」だと思います。

 ⇒ 次回に続く

<お知らせ>

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 大森棟梁から、現場見学会の案内が届きました。

 私は11月13日(日)に参加する予定です。
 折角ですから、読者の皆様にもご案内いたします。

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> 関係各位
>
> 埼玉県産材で家を造る(地震に強い家)の現場見学会を開催します!
>
> ■■現場見学会にご参加を!!■■
>
> 現場見学会を10月30日(日)、11月5日(土)、6日(日)、13日に
> 開催します。
>
> ご参加希望の方は、2日前までに下記にご連絡ください。
>
> 問い合わせ先:
> 木造伝統技術伝承教室 主宰者
> 宮大工 大森健司 一級建築士
> 〒350-1317 埼玉県狭山市水野458-7
> TEL&FAX 04-2957-3215
>
> ● 場所や集合場所などをお知らせし、ご案内いたします。
>
> 基礎は土間式コンクリート造基礎で当初計画していたが、
> 勉強会で解説してもらったベタ基礎を採用したいとの
> 要望でベタ基礎とした。
> この形式は私が奈良 西ノ京薬師寺で経験した版築に
> 相当するものである。
> 軸部は県産材を使用している。(一部を除き)
> 耐力壁は、構造用合板と強力セッコウボードの組合わせ、水平構面は
> 1階床は杉の厚板貼り、小屋裏は構造用合板の両面貼りである。
> WEBに掲載されている建物です。参考にしてください。
>
> **********************************
>  宮大工  大森 健司  一級建築士
>         大森建築設計事務所
> 〒350-1317 埼玉県狭山市水野458-7
>  
>       TEL&FAX 04-2957-3215
> e-mail:oomori-kidakumi@tbh.t-com.ne.jp
> http://www2.tba.t-com.ne.jp/oomori-kida/
>
> ***********************************

 これから家を建てる関東近県の方は参考になるでしょう。
 目を肥やすと、逆効果になるかも知れませんが・・・(^_^;)

 プロの方にはお勧めですよ!

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【 編|集|後|記 】

 私も、週のうち何日かは工事中の現場に立ち寄っています。

 大工さんたちともいろいろな話をします。
 (大工任せで現場監督がいなかったりすることも!!)

 実は、大工さんたちの情報は侮れません。
 木のことや施工のことばかりではありません。

 住宅会社や工務店の裏情報を良く知っているのです。

 なぜなら、彼らこそ、どこにも属さず
 いろんな会社の住宅を手掛けているからです。

 「建て前」(上棟)などでは、大工仲間で応援を頼むので、
 ハウスメーカーの家から、地元工務店の家まで工事を請けています。
 仲間同士からの風の噂にも敏感です。

 どこの会社が手間賃がいいか、どの会社がそろそろ危なそうか・・・
 支払いが悪くなったり、監督の能力が低ければ嫌でも噂は広がります。

 意外や、テレビCMでローコスト住宅をPRしている会社が
 大工仲間では「悪い評判を聞かない」という話を聞いたりして・・・

 おおむね、大手住宅メーカーは「したくない仕事」のようでした。
 よほど仕事が無いときには「仕方なく」なのだそうです。(^_^;)
 某定額制のリフォームの会社は「仕方なく」でもやらないそうです。
 とても評判の悪いのに驚きました。
 (施主ではなく職人たちの評判です)

         ★–◇–★–◆–★–◇–★  

 あっ!そういえば・・・

 美容師は無免許で営業停止になっても、
 建築家は無免許(建築士)でも業務停止命令は聞いたことがありませんね。

 施工会社でもよほどのことがない限り、
 建築基準法違反で許可取消しや業務停止命令は聞きません。

 最近では、悪質リフォーム業者くらいです。

 しかし、このサイトを見てください。

 ⇒ http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/07/071004_.html

 国土交通省が「1ヶ月の業務停止」を命じています。
 一体、どんな企業だと思われますか・・・?

  ※MY生命が、2週間の業務停止という「重い」処分でした。
 これを上回る、1ヶ月の業務停止とは・・・ (*_*)

 実は、主要株主が大手ハウスメーカー各社です!! (-_-;)
 こちらのサイトの「会社概要」で確認できます。

 ⇒ http://www.j-eri.co.jp/

 以下は、上記「国土交通省」が出した通達文章のほんの一部です。

 ””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””
 > 住宅関係会社からの出向者である補助員を、
 > 関係する会社の供給物件の評価の業務に従事させていた。
 > これは、住宅品質確保法に基づく指定機関指定方針に反する。

 ””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””
 もう一度こちらから確認できます!
 ⇒ http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/07/071004_.html

 きっと「お手盛り」検査でもやっていたのではと疑られます。
 これを見て、いかがお感じでしょうか?

 ではまた、再来週♪

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 『住宅コスト削減術』や『業者選びのコツ』、『欠陥住宅を防ぐ方法』
 から『住宅ローン攻略法』まで、生涯にわたって豊かさに影響する
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 【筆者プロフィール】
 地方私立大学の建築学科を卒業後、店舗・インテリアの施工管理に従事。
 分離発注なども数多く手掛け、企画・マーケティング部門に異動。
 アメリカのトレンド情報誌、海外デザイナーのプロデュース等も手掛け
 Jターン転職で東京から広島へ。住宅リフォームのFCチェーンの地域
 本部にて加盟工務店の指導をしながら、中小企業診断士の資格を取得。
 住宅専門のコンサルティング会社で、数多くの住宅会社、工務店、工法
 に接し、消費者不在の住宅業界の慣習を変革しようと奮闘中!

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