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若本修治の住宅コラム

2003.2.03 第13話

ダウンサイジング

「ダウンサイジング」というのは、もともと経営の分野やITの分野での専門用語だったので初めて聞く方もいらっしゃるかもしれない。経済用語としては、「リストラクチャリング」いわゆるリストラと同義語で、規模を縮小して経営合理化を図ることを指す。IT関連でいえば大型コンピューターから、パーソナルコンピューターへ、そしてPDAなどさらに小型化していくこと。規模やサイズが縮小していくことを「ダウンサイジング」といっている。

現在、日本経済が陥っている「デフレ不況」も規模の経済が行き詰まり、均衡から収縮に向かいつつある。車もリッターカーや軽自動車のシェアが高まるなど、すべての分野で「ダウンサイジング」が進行しているようだ。ネガティブに考えると将来が見えないが、ポジティブに考えることで事業も人生も新たな道を見出せるような気がしている。

コンピューターの小型化は、小さな家電製品までネットワークで結ばれ、どこにいてもコンピューターにアクセスできる「ユビキタスコンピューティング」という世界を作り出そうとしている。エネルギーや発電設備についても同様だ。弊社は中国電力のインキュベーション施設、『SOHO国泰寺倶楽部』に入居しているが、電力業界も自由化が進行し、大型の発電施設から、個別分散システムに移行しつつある。例えば太陽光発電であったり、これから期待される燃料電池やマイクロガスタービンだったりする。戸建て住宅でも、自宅で発電したエネルギーを中心に、足りない電力だけ電力会社から購入するというスタイルも増えてきそうだ。

「ダウンサイジング」は、リスクの分散という側面も考えられる。個別分散発電システムもその一例だ。恐竜が巨大化しすぎて急激な地球環境の変化に対応できなくなったのと同様、サイズが小さくなることで、小回りが利き環境変化への対応が早くなる。だから、これからは中小企業こそ活躍の時代だと私は感じている。専門家の小集団が、アメーバーのようにプロジェクト毎にネットワークで結ばれ、多様化した顧客ニーズに素早く応えていく。一企業が全てを抱え、社内で検査体制を整える大企業に伍して、顧客満足度を高めることは十分可能だと考えている。昨今多発する一部上場企業の不祥事をみてもその思いは強くなるばかりだ。

住宅に関していうと、まだまだ大手のブランド力と中小工務店の信用力には天地の差があるようだ。しかし、現場での技術力やコスト対応力に大きな差があるわけではない。『志(こころざし)』の高い工務店、設計者、部材供給業者、職人、そのほかの専門家を集めることで、質の高い面白い仕事が出来るといま確信している。その志を持った人々を集める機能としても、「住宅CMサービス」が役割を果たしたいと思っている。住まいはブランドではなく、技術と英知が集まってつくるものだからだ。

住まいという器(うつわ)からも「ダウンサイジング」の傾向が見て取れる。郊外の戸建て住宅から、都心のマンションへの移住もそのひとつだ。5LDKの戸建てから、2LDKで広いリビングの分譲マンションに買い換える中高年も少なくない。SI(スケルトンインフィル)住宅が普及すれば、間仕切りの変更で部屋数もライフステージに合わせて変化させていくということもめずらしくなくなるだろう。「ダウンサイジング」をポジティブに考えることで、一生に一度と肩肘張らず、欲しいときに取得可能な規模の住まいを取得し、所得や家族構成に応じて住み替えていくという生き方も楽しいかもしれない。いち早く成熟社会を迎えたアメリカではすでにそれが当たり前になっている。

「足るを知る」つまり、これまでの物質的豊かさ、拡大志向から、精神的豊かさを求め、不必要なものは取り除いていく「ダウンサイジング」という考え方も市民権を得ていきそうだ。

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