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若本修治の住宅コラム

2003.3.03 第17話

無用の長物

世の中、めったに使わないのに勧められるままつい買ってしまうものが多い。100円ショップで売っているようなものや衝動買いであればまだ諦めがつくものの、高額なものになると「どうしてこんなものを買わされたのか?」と後から疑問になることもよくある。

以前、社内でパソコンを導入したときもそんな思いをした。小所帯のころはパソコン同士ハブを通してLANでつなぐだけで済んでいたものが、少しパソコン台数が増えてきてインターネットにアクセスする人数も増えてくると、ルーターが必要だ、サーバーが必要だ、無電源装置が必要だと、ベンダーは次々と新しい機器導入を提案してくる。いわゆる「ソリューション」お客様の困りごとを解決しますというものだ。

社内だけで利用するWindows NTサーバーほかの機器を導入したときだ。ベンダーから提出された見積書を見ると、サーバーのモニターが17インチになっている。しかも一流メーカー品だ。サーバーのセッティングにもかなりの技術料が掛かることになっている。なぜ?と思っても、発注者側に知識が乏しいと、質問しても専門的な説明をされ「最低限お客様のご要望を満たすソリューションをご提供しました」と自信たっぷりにいわれると返す言葉もない。

上記のケースで私がせいぜい頑張れたのは、数万円のモニターをなくし、数千円のモニター切り替え機にした程度だった。サーバーは月に数回画面を立ち上げることはあるものの、常時モニターは必要ない。サーバーの近くに社員が通常使っているクライアント(デスクトップパソコン)があったので、そのパソコンのモニターを切り替え機で共有することにした。

もっとシステム全体の知識があれば、安価に出来ていただろうし、全く業者任せであればもっと高いシステムを購入させられたであろう。しかし、ユーザーが望んでいる機能や投資に対する効果は変わらない。プロから見てより良いシステムを導入しても、それを十分使いこなせなければ「無用の長物」となってしまう。

高額商品でいえば車なども同じだ。知人で、現役時代1日3台も納車するほどのセールスの達人がいた。時折その方にお会いしてセールスの極意も聞くのだが、最近の車もユーザーの利便性競争でほとんど使われることのないパーツは少なくないという話だ。例えば、ハンドルの高さを調整する機能など。 ハンドルの位置は、8割の人がフィットする高さや角度で設計されていて、購入後も動かすことはまずないが、チルト機能がついている。しかもこの部品は安くはないということだ。

考えて見れば、私自身、妻と身長差が30センチもあるのだが、お互い座席をスライドさせるだけでハンドルの調整などしたことがない。安全性追求でコストアップになった部分は多少過剰であっても致し方ない面もあるが、納車時にプロが調整すれば済むものに、自動装置や素人の操作を想定した機能は、多くの人にとって「無用の長物」ではないだろうか。

住宅でも構造強度など、資産や家族の生命を守るものにはきちんとお金を掛けたいが、例えば自動湯張りの浴槽と洗い場に別々に付けられた混合水栓のように、使わない設備も少なくない。実は我が家も自動湯張りの追い炊き機能付だが、落とし込みの混合水栓もしっかりついている。プロでもつけるのが常識と思っていたり、「皆さん付けられていますよ」と、入居後どう使われるか意識していないケースは意外に多い。

なかには確信犯的に単価アップを図っているものもいるが、親切に提案されるとお客様には見極めがつかない。このようなことが積み重なると、坪25万円のローコスト住宅がいつのまにか坪45万円になっていたという、逆の手法を使う商売も入り乱れてきて、業界全体が不信感の抜けないクレーム産業となっていく。

コストダウンは下請けを叩くことでも、「中抜き」と呼ばれる中間流通を飛ばすことでもなく、まずすべきことは不要なものを取り付けないことだ。中間流通も機能を果たしているから存在価値があるのであって、無駄な価値(ソリューション)を提供している一級建築士がいることも一般の方には知られていない。

それを見極める方法として、弊社のような第三者の専門家を利用するのもひとつの方法である。「無用の長物」は「物」だけでなく、プロジェクト全体のスムーズな流れを阻害している「人」や「機能」も含まれる。そのようなボトルネック(ラムネビンのように細くて詰まりやすい箇所のこと)を取り除くには、第三者の専門家でなければなかなか難しい。

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