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若本修治の住宅コラム

2003.6.23 第32話

欠陥住宅

先週末に行った『失敗しない家づくりセミナー』は「住宅性能表示制度って何?」というテーマで行った。住宅性能表示とは、欠陥住宅を無くし、車やパソコンなど、他の製品と同様に、住宅にも性能の目安を公的に評価しようという制度だ

来場者は14名。セミナー講師は、国土交通省の指定評価機関「ハウスプラス中国住宅保証(株)」の江島部長にお願いした。自ずと内容は欠陥住宅の話が中心となった。

これまで、住宅建設時に「確認申請」と呼ばれる、設計図を役所にチェックしてもらう制度はある。しかし、これは住宅の品質を確認するものではなく、建築基準法上の「単体規定」(建物自体違法建築ではないか)や「集団規定」(地域の環境への悪影響はないか、主なものに容積率や斜線制限などがある)に合致するかどうか、設計図書を確認するものだ。

しかし、実際には設計図書通りに造られているか十分にチェックされていないし、ましてや、個別の住宅の性能や品質は評価していない。

パソコンを購入するときは、ハードディスクの容量や、CPU(中央演算処理装置)の能力、メモリー容量はもとより、デバイスと呼ばれる周辺機器への接続の容易性や付属ソフト、画面の大きさなど、多くの客観的な判断基準で価格と製品のバランスが取れているか、消費者が比較検討できる。

また、自動車でも、排気量やトルク、安全性能やオプション装備などで、消費者が価格を判断する。しかも欠陥が分かると、申し出た人だけでなく、その時期に出荷した同一車種は全てメーカーの負担で回収し直す『リコール』を申請することが義務付けられている。リコール隠しは米国や日本の自動車メーカーでも社会問題となったので記憶に新しい。

しかし、住宅に関して言えば、坪50万円の住宅がどのような仕様や性能なのか?他社と比べたときに比較検討する情報がほとんどない。そのうえ、欠陥が見つかっても施主がその根拠を示さなければ建てた側は言い訳を並べ、なるべく自社の不利にならないよう取り繕う。
『リコール』で欠陥を公表するなどということは将来にわたって考えられない。

前にも書いたが、以前の住宅は職人が用意する材料と手間賃がコストの多くを占めていた。
だから、床面積とグレードで、職人が現場で仕事をする日数や人工が計算でき、坪単価という請負方式でも詳細見積をする必要はなかった。しかし、A4サイズのノートパソコンでも、スペックによって価格は全然違うものになるし、スペックをみて消費者も判断する。

住宅にも『住宅性能表示制度』というスペックが登場し、客観的に比較検討できる土俵は整った。欠陥(瑕疵という)が見つかった場合でも、この制度を利用しておけばきちんとした設計図書と、工事中の第三者の検査が入るので、施主自身が欠陥と施工内容との因果関係を調べる必要はない。紛争処理機関によって1万円の負担で迅速に問題解決を図ることが出来る。

欠陥住宅は、施工業者側も造ろうとしてやっているわけではないが、表面化していないものを含めると相当な施工ミスが存在する。消費者も、坪単価という目安で住宅を購入するのではなく、住宅性能評価機関を利用してスペックを確認したうえで、自分の支払う金額に見合った住宅を手に入れたい。数千万円の買い物に、十数万円の検査料はわずかなものだから。

任意のこの制度の利用で、かなりの欠陥住宅は未然に防止できるだろう。

ハウスプラス中国住宅保証(株)による『住宅性能評価付』の検査を受けて施工している住宅。
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