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若本修治の住宅コラム

2012.9.10 第76話

地域経済の活性化と住宅供給

先般、私が住む広島市内の異業種の経営者が集まった会で『地域経済の活性化と住宅供給』というテーマで話をした。参加した経営者のほとんどが50代から70代、製造業や卸売業など、およそ住宅や不動産業界に関心のない人たちだったが、地域の経済が活性化し、自分たちの商売も成長して欲しいと願うのはどの地域、どの業界経営者も同じだ。

広島に限らず、地方都市が活力を取り戻すには「人が集まってきて人口が増加する」ということが欠かせない。それは「少子化対策」のような気の長い話ではなく、購買力のある大人を集める「都市戦略」が必要だ。具体的に言えば、広島以外の街に住んでいる人が「この街に住みたい」と移住してくる人を増やすこと、そして世界的に知名度の高い「広島」に国内外から観光や視察で訪れる人をリピーターにすること。長期的に人口が減り、観光客が横ばいでリピーターが来なければ、いくら企業が頑張ったって、地方経済は活性化するはずがない。だからこそ、住宅や不動産の問題解決が、地方経済や地域の将来に大きな影響を与えるということを、経済界の方々、地方の経営者にも知ってもらいたいと思い、今回の講演の主旨とした。

広島には「原爆ドーム」のほか「厳島神社(宮島)」という世界遺産があり、世界的にも知名度は高い。しかし、広島の人がポーランドのアウシュビッツ収容所を観光旅行で訪ねたいと思うか、そして何度もリピーターとしてその街に宿泊滞在するかと聞かれれば、悲惨な戦争と歴史を想起させる施設は、修学旅行で行ったきりという人がほとんどだ。
そしてその向かいにある旧広島市民球場跡地に、首都圏で人気の百貨店や大型の娯楽施設、サッカー競技場を誘致して、どれほど域外から人を集めることが出来るだろうか?

郊外に大規模ショッピングセンターが次々と開業し、同じ都市内で商圏が分散している。
地元の客を奪い合うだけで、その施設の計画から建設、運営に至るまで、資本力や実績のある「県外企業」に丸投げ、その売上げのほとんどは地元に落ちない。地元には固定資産税など、売上げに比較すればわずかな税収と、パートタイマーなどの非正規雇用がもたらされるだけということを、地方の財界や行政が深刻に受け止めなければ、地方の地盤沈下は続くだけだ。

20年経って商圏が変われば、キーテナントの百貨店でさえ簡単に撤退するのは東京の有楽町でさえ経験している。今盛んに話題になっている「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」や「FTA」なども、貿易の自由化を謳っているものの、本質は「国益」の争いだ。同様に地方も「いかに県益を最大化するか」にもっと地方の企業経営者、財界が発言をしてもいい。地方ごとに新しい産業育成のため、ファンドを募って成長産業、ベンチャー企業への投資をしても、10年後にどれほどの企業が雇用を創出し、税収を収めるのか、変化の激しい時代には存続さえ読めない。

また今の低成長時代には、企業経営でも「選択と集中」によって、限られた経営資源をより効率の高い事業に集約させている。都市経営や住宅地経営でも、分散させるのではなく開発密度を高めてインフラへの投資を集中、域外の人たちにも評価され、視察や観光に訪れるような街づくりを目指したい。欧米では、環境への負荷を最小化し不動産価値が上昇する『コンパクトシティ』に人が集まっている。

だから地方では成長産業に投資するよりも、人口増のために良好な住宅地を増やすほうが、地域の活力は将来にわたって持続するだろう。環境に重視し、優れた景観が将来も守られるような住宅地を整備すれば、地方都市でも人が戻ってくる。不動産の資産価値が増え、人口が増えるような街づくりが地方の経済を活性化させるのだ。写真のような歯並びの悪い住宅地はもうそろそろ打ち止めにしたい。

ダブルスネットワーク(株) 代表取締役 若本修治(中小企業診断士)

広島市の郊外『セントラルシティこころ』で出展企業各社が建てたモデルハウス。個性を競うと、屋根形状がバラバラで”歯並びが悪い”状態となる。
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