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若本修治の住宅コラム

2013.3.10 第82話

相続税の増税とリースホールド

消費税増税による駆け込み需要とその反動をどれだけ和らげるか、それが直近の工務店経営で対策を考えるべきテーマになっている。しかしもうひとつの増税である「相続税」の基礎控除が下げられ、課税対象者が増えるということもしっかりと対策が必要だ。これまでの基礎控除が6割に下げられ、例えば相続人が妻と子供2人のケースで8千万円の控除だったのが2015年に施行予定の法改正で4,800万円になり、三大都市圏でまとまった不動産を所有していると、相続税を負担する可能性が高くなる。

 

当社の相談事例では、親が住んでいる実家が老朽化し建替えを計画する際、土地所有は親の名義で、建物は子供たちがローンを組んで二世帯住宅を建てたいという要望が増えている。多くは上下分離型で一階に親世帯が住み、子世帯は二階というケース。土地取得費用が掛からず、また住み慣れた場所で近隣との関係や日当たり、通風などが分かっているため、依頼する方も安心が出来、また施工者側も建物の規模や予算に余裕があり、じっくりと取り組めるため有望な見込み客として歓迎される。親子の好みや生活スタイルの違いなどをきちんと把握し、意見調整をするのは大変だが、それだけやりがいある物件になる可能性は高い。

 

相続が「争族」にならないために

 

これまで実家の建替えや、親の所有する土地に長男家族が家を建てるというご相談に対応した中に、実際にプランを作成したり見積を提示した段階で、兄弟(姉妹)から待ったが掛かったケースが何度かあった。法定相続人である弟や妹にとって、例え長男や長女であっても、自分たちの了解なしに勝手に親の土地に兄家族の家を建てられ、親が亡くなった時に本来得られる『遺留分』について、何も聞かされていないまま、貴重な親の資産である自宅土地を長男・長女だけが利用するのは容認できないということだ。それは相続税を支払うかどうかの問題ではなく、自分たちにも当然親が築いた資産の分け前があるという発想だ。

 

日本で住宅建築の仕事をしていると、多分にこのような話が出てきて、場合によってはそれまでの設計や見積作業がすべて無駄になることさえある。しかし逆に、そのことを注意しながら商談を進めていくと思わぬチャンスに出会うこともある。それは子供たちも詳しくは知らされていない親が所有する土地が発覚し、しかも有効利用されておらず、将来過大な相続税負担が見込まれることが表面化することだ。相続税の基礎控除が下げられる予定であることも、今後資産を残しながらも土地からしっかりと収益を出す「土地活用策」が従前以上に求められるようになってきた。

 

当社でもそのような相談があり、当初コンビニやファミリーレストランに『事業用定期借地』として建て貸しをする計画が先行していた。しかし商業立地はめまぐるしく変わり、業態も栄枯盛衰が激しいため、20年後にはテナントが撤退し、相続が発生した時には残された遺族が大きな負担を背負うことになる。またコンビニやファミレスに好立地であれば、路線価は決して安くなく、面積も小規模宅地の規模では納まらない。今や借入れをして賃貸マンションを建てる時代でも、分譲マンション業者に土地を売る時代でもなく、やはり『一般定期借地』として庭付きの住宅地を計画するのが、地主にとって最もリスクや負担が少なく、長期に亘って土地から安定的な収益を得られるということを理解する地主も増えてきた。

 

2020年の東京オリンピック開催が決定し、アベノミクスの景気浮揚策で建築資材が上がったとしても、空き家は増え続け、住宅の一次取得層は大きな負担を負えない。だからこそリースホールドは時代に求められてきている。

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