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若本修治の住宅コラム

2013.9.20 第88話

展示場を1億円かけて改築!?

今や、総合展示場に昔のような集客力は期待できないが、全国をカバーする大手住宅メーカーは、未だに集客は総合展示場頼みから脱却できないようだ。企業規模を維持するためには大量の見込み客名簿が必要で、名簿を集めるためには広告宣伝やイベントなどで、出来るだけ多くの家族を来場させるしか有効な方策を持ち得ていないのが現実だ。

地域密着型で、企業規模がそれほど大きくなければ、地元の繋がりや社員の人間関係、OB施主からの紹介や、今はホームページやソーシャルメディアなどのネットからの集客でも十分企業規模に応じた受注は見込める。地元紙へのプレスリリースや広告掲載も、地域の事情に明るい分、効果の高い媒体を効率的に利用することも可能だ。

しかし、地元資本ではない大手住宅メーカーの場合、全国ネットのTVコマーシャルや全国共通の広告チラシなど、地域性よりもブランド力を高めて「高いけど安心できる」というイメージを浸透させたうえで、住宅展示場のモデルハウスに来店してもらうという『莫大な予算のバラマキ』でしか、不特定多数の「無党派層」を振り向かせることが出来ていないのが実態だ。会社の図体が大きいから大量の見込み客名簿が必要なのは、生命維持のため大量のプランクトンが必要なクジラや、絶滅した恐竜と変わらない。

先ごろ、私が住む中国地方の地元新聞に、大手住宅メーカーの新支店長赴任のインタビュー記事が掲載されていた。2×4工法を手掛ける同社は、地元で木造住宅を供給する有力なビルダーとも競合し、ここ数年苦戦を強いられている。中国地方での2×4住宅の着工は年約120棟と記事で紹介されていたので、広島や岡山など中国5県の同社の実績とみて間違いない。支店の従業員数が86人、広島市内だけでも3カ所の住宅展示場に出展する住宅メーカーとしては、とてもその図体を維持できる数字とは思えない。

インタビュー記事によると、広島市内にある住宅展示場のモデルハウスを約1億円かけて改築。高級路線を前面に出し、学校や老人ホームなど施設の受注にも力を入れるという。そのモデルハウスは、20社弱の住宅メーカーが出展しているその住宅展示場で、一番小さなモデルとして「等身大の家」がウリだった。床面積を小さくすることで、価格戦略に打って出た結果、客単価は低下、必ずしも受注棟数が増えなかったから、支店長が代わり戦略を見直し豪華路線で富裕層にターゲットを変更したようだ。

住宅建築に詳しくない新聞記者のインタビュー記事なので、取材したまま掲載されたと思われるが、それにしても『改築の1億円』はどこにかけ、それほどの費用は最終的に誰がどのくらい負担するのか、新聞記者であれば想像がついてもおかしくはない。総務や経理畑で同社に25年以上勤務して支店長に赴任した人へのインタビューの締めくくりが「売上だけでなく、純利益をしっかり出す」という言葉を強調したというのだから、何も感じずに記事掲載した新聞社も普通の感覚がマヒしているとしか思えない。ちなみにこの住宅展示場はこの新聞社による経営だった。

「デフレ脱却のために企業の設備投資を歓迎し、所得水準の高い富裕層に向けた商品開発をして客単価を増やす。」経済記者からみれば、当然の企業戦略を好意的に取材したのかも知れない。
しかし5~7年で陳腐化して建築廃材にしかならないモデルハウスに1億円も投資し、毎月の出展費用が150万円程度掛かってしまうのが住宅展示場の運営実態。「見込み客名簿」を集める目的だけで造られたパビリオンだ。そこで毎月「片手で足りる契約」しか取れない状態で、そのコストを負担しているのは施主しかあり得ないことは誰の目にも明らか。電気料金の値上がりどころではないコストが、購入者自身の家計を直撃している。

ダブルスネットワーク(株) 代表取締役 若本修治(中小企業診断士)

米国のモデルホームは、実際に分譲される土地に建てられ、モデルとして利用した後、適正価格で売却される。
日本の住宅展示場。5~7年利用されると、新しいモデルに建替えられる。 モデルはアメリカで実際に販売されるモデルホームよりも規模が大きく、実際に建てられる家とのギャップが大きい。
パンフレットに「省エネ性能が高い」とか「環境にやさしい」といった表現があっても、 実際のモデルハウスにはこれだけのエアコンが稼働している。(画像はエアコン室外機)
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