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若本修治の住宅コラム

2014.4.20 第95話

心地よい音楽と美しい街並みの共通点

欧米の住宅地を視察すると、街並みの美しさや空間のゆとりに目を奪われる。これまで多くの日本企業が北米の輸入住宅に取り組み、欧米で見た住宅や街並みを再現させようと努力してきた。しかし多くの場合は、単体の住宅のデザインのみを輸入し、その結果和洋折衷の住宅地に忽然と「ジョージアン様式」や「チューダー様式」等の本格輸入住宅が出現するということが、日本全国で行われている。

輸入住宅に取り組んでいる人たちも、北米の住宅を見て感激し、デザインだけでなく生活の豊かさも含めて輸入住宅を日本に紹介したいと考えてきたと思う。日本の消費者も海外旅行をする機会が増え、欧米で見たような住宅に憧れを持つ人も少なくない。カタログやチラシで北米の住宅地の写真や輸入住宅のインテリアなどを紹介し、モデルハウスを建てれば、他の住宅会社と差別化にもなってきた。
また自社が建てた輸入住宅は、住宅街の中でもひときわ目立つ存在として、会社のPRにも大いに寄与するだろう。

しかし、北米で見た素敵な住宅を、寸分違わず日本で再現してもその街並みに馴染まず、違和感を覚えることも少なくない。日本の気候風土や、軸組みを中心とした日本の建築工法に合わない云々という声もあるが、根本的な問題ではない。外国人がつくった日本食のレストランでも私たちはしばしば同様の体験をする。富士山や歌舞伎、社寺仏閣など彼らから見た日本のイメージが投影され、日本人から見ればどこがどう違うのか素人では指摘できなくても、やはり中国や韓国と日本をごっちゃにされた感は否めない。

最近、日本では「韓流ブーム」が高まってきている。
韓流ドラマが一大ブームとなり、最近では「Kポップ」と呼ばれる韓国の音楽タレントも日本で人気になっている。音楽のジャンルでは、昔のように単に「洋楽」と「邦楽」という分け方ではなく、ポピュラーミュージックでもJポップやKポップなど、音楽性の違いで細分化されている。

日本の音楽でも「歌謡曲」という大きなくくりではなく、演歌やフォークソング、ロックやパンクまで、好みのジャンルが分かれ、それぞれにファンがついている。沖縄出身のミュージシャンなども、独特の音色やリズムで一定の支持を得ているのは皆さんも良くご存じだろう。音楽はクラッシックからオペラ、ジャズやレゲエ、ハードロックなど、嗜好に応じて様々なジャンルにそれぞれファンがいる。

住宅や街並みも、音楽に置き換えてみると、イメージしやすいのではないだろうか。
クラッシックのコンサートは、幅広いクラッシック音楽が聴けるから、心地よく感じるのであって、例え世界的に人気のあるグループでも、ロックミュージシャンやジャズはクラッシックのコンサートでは聞きたくないものだ。しかし日本の住宅業界はプロを自認する設計者や施工者だけでなく、上場企業であっても自らが演じたい音楽を好き勝手に奏でて、全く毛色の異なるファンを住宅地に集めている。そこには秩序も調和もない。

ひとつの音楽がいかに素晴らしくても、ジャンルの異なる音楽が混在したCDを聞きたいとは思わないのと同様、街並みも全く異なる様式の建物が並べば、欧米の街のように美しいと感じるはずがない単体でどれだけ素晴らしいデザインの住宅を建てても、街並みを壊す原因をつくることもある。街道筋の町家の建替えで、プレハブ住宅や一流の建築家がデザインした奇抜な家はその街にはそぐわない。

欧米では街路樹や緑道、公園によって街区が分かれ、街区単位で住宅のテイストが揃えられているように感じる。日本も建物単体ではなく、街区単位でデザインすることで、アフォーダブル(無理なく返済可能な価格)で美しい街並みをつくることが出来るはずだ。

ダブルスネットワーク(株) 代表取締役 若本修治(中小企業診断士)

米国オレゴン州ポートランド市近郊の住宅地。決して新しい家ではないが街並みの美しさを感じる
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