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若本修治の住宅コラム

2014.8.20 第99話

日本の「空き家問題」の本質とは・・・。

総務省が5年に一度発表する『住宅・土地統計調査』の速報によれば、2013年現在の全国の「空き家率」が前回調査からさらに伸びて13.5%に達したという。統計データの上では7軒に1軒程度の割合で、使われていない家があり、ここ数年でも毎年80万戸以上の新築住宅が供給されていることから、「新築住宅を抑制すべき」という意見も特に中古住宅を扱う不動産業界から出始めている。

 

不動産業界の主張は「景気対策中心で、新築偏重となっている日本の住宅産業が、とっくに世帯数を超えた住宅があるのにも関わらず、毎年多くの新築住宅を供給するから、既存の住宅は陳腐化し、中古マーケットが育たない」ということのほか「インスペクションによって耐震や省エネなどの性能が担保され、適切にリモデリング・リノベーションされれば、中古住宅流通が活性化する」というものだ。

 

「空室」と「放棄された空き家」の違い

 

実際の統計データの内訳をみると、空き家でも大きく3つに分類されるらしい。まずは別荘などのように、日常的に住んでいる訳ではないが、時々利用され一定の管理もなされている『二次的住宅』。そして入居者募集の不動産広告を打つなど、空室ではあっても、次の入居者が入るまで一時的に空き家になっている『賃貸・売却用住宅』があり、実際に誰も住むことなく老朽化して放置されている「本当の意味での『空き家』は5%程度」というのが実態だ。

 

したがって、本当に問題になっている空き家は、誰もその家を使う意思がなく、捨てられた建物であり、それは戦後の高度成長期以降、都市部に働きに出た地方出身者たちの『実家』や『相続』の問題に他ならない。誰も使う予定がなく、手入れをする人も近くにいなくて解体するにも費用が必要、更地になると固定資産税が上がるから、朽ちるままにされている「老朽家屋」が過疎地や郊外型住宅で増えている。倒壊の危険があるだけでなく、コミュニティの崩壊も予感させ、自治会の存続も危ぶまれてくる。

 

このような住宅は、すでに需要が失われている地域に建っていることがほとんどで不動産価値はないに等しく、仮に田畑付きで300万円程度の価格で売り出したとしても、不動産仲介業者が得られる「仲介手数料」は十数万円以上得られない。だから中古住宅流通を声高に叫ぶ業者でも、過疎地への物件案内では、広告費や移動経費さえ出ないと、誰も扱おうとしないのが現実だろう。古民家を改装し店舗等で再利用できるのは、人口規模のある都市近郊の集落か、多くの人が集まる観光地周辺でしか、投資に見合わない。

 

したがって社会問題になりつつある「空き家問題」は、中古住宅流通が未整備だという理由や、インスペクションによって蘇るわけでもない。限界集落を維持するのか、新たに密度の高い住宅地に集団移転してもらうかを、自治体が選択するほか解決策はないだろう。先送りすることで、自治体が負担するインフラの管理・メンテナンスだけでなく、医療・介護サービスなどを含む、民間事業者のサービスも受けることが困難になり、災害や犯罪に弱い孤立した集落、住居がさらに問題を深刻化させるだけでしかない。

 

一方、都市部の「空室」や「売れない住宅」は、量的充足や建築会社の利益だけを目的として“無計画・無秩序に建築された”住宅がほとんどで、古いだけで価値のない「骨董品」と同じだ。そもそも住居として魅力の欠ける住宅を、インスペクションやリノベで「市場価値」をつくろうとするのは、価値のない骨董品を高く売れるように加工し、知らぬ顔をしてお店に並べるのに等しい。資産価値が高まるような魅力ある住宅を供給することが問題解決の本質だ。

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