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若本修治の住宅コラム

2014.10.20 第101話

巨大地震の予知・対策と地下空間の有効利用

M9.0を記録した東日本大震災以降、全国各地でおびただしい数の有感地震が発生している。
房総沖の海底に巨大な活断層が見つかるなど、新たな活断層や大津波の形跡も次々と見つかり、首都圏直下型地震の発生確率も急激に高まってきた。東海から四国、九州にかけての太平洋沿岸も、南海トラフが大きく動くと20mを超える津波が発生する可能性も報道されている。

沿岸地域に住む住民や自治体は、東北の教訓を生かそうと、避難ビルや避難経路の確保、津波対策などを計画しているが、なかなか有効な策がない状態におかれているようだ。

そもそも人間の想定を超えた巨大地震や大津波を予測し、損傷を免れるような強固な構造物をつくることが、今の科学技術や土木・建築技術で可能なのだろうか?そしてそれが地域の経済力から考えて、費用対効果のある方策となるのだろうか・・・?

「経済合理性」までは求められなくても、少子高齢化が進むなか、それほどの対策費用を掛け、持続可能な地域社会を維持できるのかどうか、いささか疑問だ。台風や大水害は突然やってくることはなく、台風の進路や降雨量の予測は十分可能だ。しかし地殻の動きを予測し、「300年周期で巨大地震が発生している」というように、周期説で大地震を予知できるものだろうか?

私たちは、およそ二十年前に長崎雲仙普賢岳の大噴火と、数日後に現れた「溶岩ドーム」を、固唾をのんで見守った。

下から湧き上がるマグマに日々成長する溶岩ドーム。報道や自衛隊のヘリが飛び、多くの火山研究者が溶岩の流量や表面温度から、いつごろ崩落し火砕流が発生するか、シミュレーションできたはず。しかし、結局は取材記者や外国から来た火山の専門家など、多数の人の命を奪う火砕流が発生した。崩落の予測も逃げるための準備も出来たはずなのに、現実は予測も対策も出来なかったのだ。

今年、豪雪の影響で発生した新潟県上越市の大規模地滑りも記憶に新しい。雪解けの水が山裾の地層に浸透、幅数百メートルにおよぶ地滑りにより十数軒の民家が壊され、集落が飲み込まれていった。目の前でゆっくりと起こっているのに、止めることも、いつ止まるのかの予測もつかなかった。それが自然の力。地殻の動きなどで大地震の発生を予知できるとは到底思えない。

それでも、政府は『津波避難ビル』の設計指針をとりまとめ、津波による圧力や浮力に対抗する方法や、杭の本数、壁の厚み、8階建て以上の建物とすることなど、安全基準を開示した。しかし自然の脅威に対して「強度で対抗する」ことが、本当に経済合理性があるのだろうか?仮に設計強度が維持できる耐用年数が60年として、300年に一度巨大な津波が来るとしたら、5回の更新が必要となる。その間、維持管理や解体・建設に莫大な費用が掛かり、維持管理できるだけの経済力や居住人口が続いているのかどうかさえ分からない。さらに防潮堤や地盤の嵩上げまで考えると、途方もないコストと時間が掛かってしまう。

アメリカの中南部では、毎年巨大な竜巻が発生し、津波と同様に建物は根こそぎ倒されている。映画を見ていると、多くの人たちが自宅の地下に逃げ込み、竜巻の猛威が通り過ぎるのを静かに待っている。安全が確認できて地上に出ると、街の風景は変わっているものの、家族と大切な財産は守られて安堵するというシーンが思い浮かぶ。そう考えると、地下室や地下街など、シェルターとして水密性の確保や、タンカーのようにいくつもの界壁で水の浸入を防止できれば、防潮堤や津波避難ビルよりも経済的で、住民が避難する時間もわずかで済む可能性が高い。現状では法的・技術的な問題もあるだろう。しかし、外気温の影響が少なく地震の影響も少ない地下空間は、地震国日本にとって有効な土地利用になる可能性を秘めているように思う。

長崎県島原半島で噴火し、多くの犠牲者を出した雲仙普賢岳の溶岩ドーム。目に見えていても、いつ崩落するか火山学者でさえ分からず、海外の専門家が犠牲になった。
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