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若本修治の住宅コラム

2014.11.20 第102話

「相続税対策の土地活用」を大転換しよう!

昨年4月に消費税が8%に増税され、大手ハウスメーカーも一戸建て住宅は概ね2割程度契約棟数を減らしているという。一方で、今年相続税の基礎控除が4割も引き下げられ、各社の賃貸住宅の売上げが急増、戸建て住宅よりも収益率が高く、結果的に好業績を維持しているという話だ。控除が減ることで従来相続税の負担をしなくても良かった層まで、自宅以外に土地を所有していると、相続税が掛かってくるケースが増えている。その負担や不安を察知し、アパートやマンション建設の営業攻勢を掛けて、特に市街化区域に編入された郊外の農地に次々と賃貸住宅が建てられている。その建設費の多くは「借金」だ。

 

各社の営業手法は概ね以下のようなものだ。

まずは金融機関や税理士などとタイアップして、相続税セミナーや土地活用セミナーを開催する。そして個別相談で今現在の資産を査定し、将来の一次相続、二次相続でどの程度の相続税負担が発生するか大まかな計算をして「収益性の低い郊外の土地を所有していて、手持ち現金が少なければ、先祖代々の土地を手放さなければならなくなります。しかも物納も難しい時代なので、借金をして賃貸経営をすることが最も安全な相続税対策になります!」と土地を担保に多額の借金をさせ、さらに安心させるために『家賃保証』まで提示してマンション建設などを勧めている。

 

将来の「空き家を増幅」する賃貸経営

 

今、空き家が大きな社会問題になっている。特に深刻なのは既存市街地や都市周辺部ではなく、郊外の住宅地にある戸建て住宅や賃貸住宅の空室だ。人口減少も進み、将来のインフラの維持も困難であることから、多くの自治体で『コンパクトシティ化』という居住地域の集約化を図っている段階で、今回の相続税対策ビジネスは完全に逆行した「賃貸住宅建築ラッシュ」を郊外に生み出してしまった。しかも同じ行政が何ら対策をとることなく、建築許可を出している。将来の空き家の大量発生と、対策のための税金の投入を全く想定しておらず、今の着工棟数と住民の増加による目先の経済効果を喜んでさえいるようだ。

 

“相続対策としての賃貸経営“は「借金返済が少ない段階」つまり出来るだけ亡くなる直前にローンを組むことが効果的で、10年以上返済すると効果が薄れてくる。だから高齢者がターゲットになりやすく、ご本人は管理にあまり手間は掛けられず、息子たちも賃貸経営に関心のない状態で相続を受けるということが少なくない。そもそも「相続対策」なので建築費も精査しておらず、割高な建築費の上に入居者募集や管理は「家賃保証」の関係上、建設したハウスメーカーの子会社になることが多いため、生涯にわたって彼らの売上げに貢献させられるだけなのが実態だ。

 

本当に収益を重視して、相続税評価や固定資産税を下げ、土地からの収益を最大化しながらリスクも抑えるためには、今のように自ら建築費を負担して、大手ハウスメーカーにアパートやマンション建築を発注することはあり得ない。将来人口減少が確実なエリアで、新築だからこそ入居者が得られるとしたら、将来近所に出来る新築の賃貸に入居者を奪われるのは火を見るよりも明らかだ。

 

そう考えると、少子化や人口減少が進む時代、広い土地を所有している土地オーナーは、自ら借金までして建設費を負担して建物を所有することに意味はない。数年で退去していく人を住まわせ、メンテナンス費用も負担しその結果相続した子世帯を苦しませるだけだ。むしろ長期間にわたって安定的に住み続け、自ら建築費を用意する人たちに、土地の賃料だけ払ってもらう『定期借地権(リースホールド)』こそ安定的な収益と資産の継承が可能な事業だろう。

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