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若本修治の住宅コラム

2015.11.20 第114話

資本と経営の分離は、土地所有者こそ考えたい。

消費増税後の大手ハウスメーカー各社の決算は、一戸建て住宅の落ち込みを、賃貸マンション建設や不動産関連事業でカバーした企業が目立った。相続税の基礎控除が大幅に減ったことも、賃貸マンション建設に拍車をかけた。各社の提案は「投資に対する利回りの高さ」と「家賃保証」だ。

 

バブルの頃までは、「公定歩合」が住宅の売れ行きに大きな影響を与え、住宅金融公庫の金利も平均すると5%を超えていた。バブル崩壊後でさえローン金利は4~5%で『ステップ償還』という当初5年は低金利のローンが大量に売り出されていた。その頃は自ら建築費を調達し、金利負担をしてローン返済するアパート経営であれば『表面金利が10%超』というのが当たり前だったかもしれない。しかし今は「ゼロ金利」時代。にも拘わらず、賃貸マンションの経営を勧めるハウスメーカーや建設会社は、今でも当たり前のように「高利回り」を提示し、あたかもそれを保証するような営業で契約実績を積み上げている。

 

土地オーナーは「利回り発想」をやめよう!

 

日本でなかなか定借が根付かない理由の一つに、土地オーナーがこの「利回り」神話に洗脳されている可能性があることが分かってきた。特に定借に利用できるような広さを持っている土地オーナーは、これまで散々土地活用の営業攻勢を受け、耳にタコができるほど高い利回りを提案されてきた。それでも自ら建築をするリスクを避け、駐車場や資材置き場など、土地を十分に利用して収益を出すというのには程遠い状態でも、先祖代々の土地を維持してきた。

 

土地オーナーからすれば、高い固定資産税や都市計画税の負担を少しでもカバーするため、将来の売却も視野に入れて「転用が容易」なコインパーキングなどの事業に手を出しがちだ。設備投資も少なく、面倒な代金回収業務や機器のメンテナンスは専門業者がやってくれる。当面固定資産税負担よりもプラスの収入があれば、土地オーナーにとっては御の字だ。しかし相続をした場合の軽減措置はなく、次の世代でも土地を維持することは容易ではない。

 

一方で定期借地による住宅地経営を検討すると、まず固定資産税は『小規模宅地の特例』として6分の1に軽減される。また建物は他人が所有し、相続税評価は『底地割合』で計算されるため、将来の相続税負担もかなり緩和される。つまりアパートローンのような高金利のローンを借りてリスクを負う必要もなく、青空駐車場のように高い固定資産税を負担する必要もない安定した事業が「定借事業」だ。株式投資よりも、定期預金を好む「安全志向」の地主にとって土地活用を「利回り」で比べるのはナンセンスだろう。

 

実際の会社経営であれば、環境変化の激しい今の時代に「投資の利回り」を考えて安定株主になることは考えられない。むしろ事業収入と必要な支出を把握して、より営業効率が高く、成長性や収益性の高い事業を選択するだろう。その上で、経営自体の知識や経験が乏しければ、「株主」の地位にとどまり、自ら経営しようとは思わないだろう。報酬を支払ってでも、経営手腕を持つ専門の経営者を雇うのが、資産家である土地オーナーの立場ではないだろうか。

 

実際に、賃貸マンション経営をする事業シミュレーションを行い定期借地事業と見比べてみても、30年後の最終利益には大きな差が生じない。賃貸マンションのほうが大きな売上が見込めるが、維持管理コストも多大で、最近では保証金返還訴訟も増え、古くなると稼働率も下がっていく一方だ。そのリスクを知識の乏しい土地所有者が自ら負う時代はすでに終わった。売る側に属さないプロに経営を託すのが正しい選択だろう。まさに「地主」は株主と同じだ!

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