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若本修治の住宅コラム

2016.2.20 第117話

環境問題とメガソーラー

ドイツの制度に倣って導入された再生可能エネルギーの『固定買取り制度』によって、全国にメガソーラーと呼ばれる巨大な太陽光発電システムが設置されてきた。国内のほとんどの原発が停止し、化石燃料の輸入コストが日本の貿易赤字を巨大化させている中、環境にも負荷を掛けない再生可能エネルギーは、新たな産業としても期待されている。工業団地や流通団地として開発されながら進出企業に恵まれなかった土地や休耕田、塩田跡地など、全国各地の広大な遊休地に次々とメガソーラーがお目見えしてきた。

多くの場所は、自然が豊かな山を切り開き、あるいは魚介類の棲み家だった海岸線を埋め立てて造成された土地。新たに環境破壊をする訳ではないにしても、景観も含めて「環境にやさしい」と言われると疑問を持たざるを得ない。また、電気の大消費地からは遠くにならざるを得ず、従来通り発電の4割程度の「送電ロス」を生じさせながら送られる電気の買取りに、一般の消費者がコスト負担しているということも疑問に感じる理由のひとつだ。

 

「省エネ」と「個別分散発電」

 

日本の住まいは限られた部屋や時間帯のみ暖房する『間欠暖房』が中心で、欧米のように家全体を暖かくするという発想がこれまでなかった。そのため欧米に比べて断熱性能の低い住宅が多く、冬よりも夏のほうが電力需要のピークが高い。つまり暖房に掛かるエネルギーはそれほど大きくなく、風呂にたっぷりお湯を張るため「給湯エネルギー」が比較的大きい。そう考えると、日本では住宅に限れば、太陽光は電気に変換して利用するよりも、そのまま「熱」として利用するほうが効率が良さそうだ。

夏に関して言えば、地球温暖化の影響で記録的な猛暑日が増える傾向にあり、また室内でも「熱中症」を発症することが分かってきたので、小さなエネルギーで涼しく過ごせるよう、断熱性能のアップは必須だ。新築時にしっかりと断熱や遮熱をしておくことで、入居後にエネルギー購入のために継続的に支出する費用を抑えることにも繋がる。暑さ寒さを我慢したり、これまでのようなエネルギーロスの多い状況で、再生可能エネルギーに更なる投資をするよりも、まずは躯体自身の断熱性能を高め、省エネルギーの住宅を供給することがプロとしての務めだろう。

また「土地」という有限の資源を高度に利用するためには、住宅や工場、建築物の屋根の上を利用して太陽光パネルを並べるほうが合理性がある。送電のロスもなく、停電時にも利用できる予備電源があることは、建物を利用する人にとっても安心だ。元々莫大なコストを掛けて「そこにあった自然」を破壊し、周辺の生態系も含めて大きな環境変化を与えてしまった後、売れ残ったり利用価値がなくなってしまった土地に、今度は「環境負荷を掛けない電源です」と言われても、失った自然や環境は取り戻せない。

北欧を中心として、環境を重視する国では風力発電が増えているという。一見不安定そうな風力でも地上からかなり高い場所では比較的安定した風力が得られるといい、太陽光と違って夜でも発電が可能だ。風力発電は土地の利用も限定的、巨大な土地が必要で最終的な「廃棄」でも問題の残るメガソーラーよりも環境負荷は少ないと言えそうだ。

もちろん風力発電も「景観」や「低周波」「騒音」「野鳥被害」などのネガティブな批判もある。しかし考えてみると送電線の「高圧鉄塔」や携帯通信の「電波塔」など、もう皆が意識もしないような塔が山の頂上や尾根に建てられ、その景観や影響は気にもしていない。各自治体や地元協同組合等が風力発電を経営する時代も近いのかも知れない

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