2003.2.17 第15話
デフレ時代の賢い住宅取得(2)
前回に引き続き、デフレ時代の賢い住宅取得についてまとめた。今回は「転売価値」のある住宅をテーマに、資産ではなく耐久消費財化してしまった日本の住宅について考えたい。
転売価値のある住宅を入手するポイントとして以下5つを挙げた。
1. 土地の値上がりは期待薄(以前は土地の価値が大きかった)
2. 特殊な間取り、空間は避ける
3. 飽きのこない外観デザイン
4. 住宅性能評価制度の利用(中古時の評価基準明確化)
5. メンテナンス計画も立てておく
これまで、住宅の価値はほとんど土地の評価額によって決まっていた。築後15年もすると建物の価値は無いに等しいが、バブル崩壊以前は土地の値上がりによって,さらに広く新しい住宅を手に入れることが可能になっていた。駅や学校に近い、買い物にも便利ということが価格の大きな要因となり、建物の質や外観デザイン、街並みの良さなどは、あまり評価の対象にはならなかった。
しかし、一足先に成熟化社会になった欧米でもそうであるように、これからは土地という資産をどのように利用し価値を高めるかということが重要になってくる。つまり、外回りを含めた住空間自体が周辺環境に影響を与え、個人だけでなく地域住民の資産価値を守ることにつながる。日本でも、大正や昭和の初期は、田園調布や関西の芦屋に見られるように、そこに住む住民が建物や周辺環境の維持を意識することで長らく資産価値を持つ住宅街が形成されていた。
アメリカの住宅街を走ると、街並みや建物のデザインがお洒落に感じることが多い。しかし、その多くは個性を重視した注文住宅ではなく、伝統的なデザインを踏襲した建売住宅である。「For Sale」(販売中)という看板も良く目に付くが、合理主義のアメリカ人は、自分たちだけの好みやこだわりを盛り込んだ住まいは、他人には使いづらく、建築コストも高くなることを良く知っている。つまり市場価値が低くなって、入手した価格以上での売却が困難だということ。実際、プロであるディベロッパーが計画した建売住宅を購入し、塗装や窓周りの装飾で個性を演出しながら維持管理をすることで、年間4~6%の利回りで住宅の資産価値が上昇している。だから、アメリカは中古住宅市場が日本の約27倍もある。
今、日本の住宅政策は、大きく変わろうとしている。従来は、景気刺激策として住宅金融公庫の金利引下げ、住宅減税の拡充で、新築市場の拡大を行なっていた。住宅ローンが終わるか否かの頃には耐用年数が来てしまうような住宅を大量に生産し、また借金をさせて建替えさせることで住宅産業は肥大化し、大手ハウスメーカーも成長した。
しかし、これからは土地自体は売買価値から利用価値に移り、建物を適正に維持管理することで、個人資産が増えていくという市場を創っていこうとしている。そこに中古住宅の性能評価制度があり、その前提として新築時の「建設性能評価書」交付の重要性が増してくる。中古住宅の評価基準が広く認知され、中古住宅の流通市場が整備されてくれば、自宅を担保として老後資金を借り入れる「リバースモーゲージ」など、高齢社会でも安心して暮らせる社会をつくることも可能となる。新築を計画している時期だからこそ、将来のことを考え「転売価値」を意識したプランニングとパートナー選びが重要だ。