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若本修治の住宅コラム

2015.10.20 第113話

日本の政策は、自国民を貧乏にさせたいのか?

先頃「輸入住宅セミナー」に参加し、HICPM(住宅生産性研究会)の理事でもある小金澤さんの講演を聞いた。NAHBが開催されたラスベガス郊外で分譲されている新築住宅の物件情報も数件紹介されていた。最近ではクラッシックな住宅よりも、新築ではコンテンポラリーな住宅が増えつつあると聞き、少し日本の「悪影響」を受けているのかとも感じたが、やはり米国では住宅を取得することで、個人資産の形成に繋がっているということを再確認させられた。

 

左の画像はラスベガス郊外の高級住宅地で販売されている住宅の規模と販売価格。敷地面積は出ていないが、建物の床面積が約75坪で価格は$421,990。日本円で換算すると約5,000万円($1=¥120換算)となる。アッパーミドルと呼ばれる、中間層よりも少しお金に余裕のある層が取得している価格帯の住宅だ。中間層向けの住宅はほぼ同じ床面積で$307,990(同約3,700万円)で売られていた。やはり日本とは違い、見た目のデザインや質感などで“明らかに価格差が分かる”住宅だ。

 

お金に「余裕のある」層とは?

 

統計データで見る米国の住宅の「中央値」は、床面積が約67坪、敷地は約270坪。そして土地代を含む全新築住宅の中央値が$283,400(2014年・United Census Bureau調べ)。2014年の平均為替レートUS$1=\105.74で計算すると2,997万円となり、一般的な勤労者が3千万円前後で新築住宅を取得しているということが浮かび上がってくる。日本のおよそ倍の床面積で、半額以下の負担しかしていないのがアメリカの平均的な住宅取得だ。

 

この数字は、日本政府がデフレ脱却と景気浮揚のために行った「大規模の金融緩和」で発生した“円安効果”で計算した金額で、3年前の円高時に比べると日本円換算では、およそ1.5倍になっている。リーマンショック後からアメリカの住宅価格が回復していることを考えても、3年前は日本人がアメリカの住宅を、少なくとも現在の価格の3分の2以下で買えたということだ。

 

『金持ちの定義』はいろいろとあるだろうが「使えるお金に余裕があること」と考えれば、グローバル化が進む世界の中で、日本人の「国際的な購買力」は円安によって、およそ3分の2になってしまったと言っても過言ではない。つまりGDPにおいても日本円で同じ金額を稼ぎ、多くのお金を貯めていても、海外から日本を見れば“日本人の稼ぐ力が急激に落ち”、経済が縮んでいるという印象を与え、実際に以前は買えていたものも手が届かない「高値の存在」になっている。自国の通貨を弱めて経済規模を小さく見せることは、グローバル化が進むほど日本の地位を落とし、購買力を低下させているのではないだろうか?

 

その上で、販売に掛かる多大な経費を上乗せされた住宅を、税金を投入してまで「高い販売価格」の維持をし、入居した途端に価格が急落する状態を『景気浮揚策』として続けることは、自国民を貧乏にさせていることに他ならない。住宅を取得した人たちだけでなく『空前の低金利』で住宅ローンを借りさせて、さらにローン控除を行うことは、預金金利で暮らす高齢者が得られるはずの利息も奪い、国民の税負担を増やしていることと同意だろう。その負担は、住宅の効用や資産価値に全く影響を与えない「販売経費」や「差別化」へと消えているのが実態だ。

 

住宅を取得すれば「不動産取得税」があり、住宅を維持するために「固定資産税」の負担をするのであれば、その対価として“資産価値が上昇する”よう努力するのが政治の役目であり、今の日本に全く欠けている政策だろう。

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