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若本修治の住宅コラム

2020.3.20 第165話

【連載】未来の賢い家づくりとは ~第5回~

前回まで、地主中心の話をしてきました。実家に広い土地、遊休資産があったり、親がアパート経営をしているといった方や、将来の相続が気になるといった方以外は、あまりピンと来なかったかも知れません。我が事としてイメージできない話でした。しかし、どのような人も屋根の下に住み続け、将来に亘って大なり小なり「住居費」の負担が続きます。それは“持ち家”だろうと、生涯“賃貸暮らし”であろうと住居費の負担から逃れることは出来ません

 

■自宅を持っていることが本当にステータスか?

 

戦後の日本は、国による“持ち家政策”によって普通のサラリーマンでも住宅を買うのが当たり前の社会になりました。建売住宅や分譲マンションも含め、長期の住宅ローンを組み、自宅を所有してようやく一人前として認められるという意識があったのです。特に家族を持った50歳代以上の人のほとんどは、通勤に時間が掛かっても、自宅を持つことがステータスであり、最低限“中流の生活が出来ている”という実感が、生活の安心感に繋がっていました。

 

50歳代以上の人たちは、土地神話やバブル経済も経験し、住宅取得は「個人の財産の形成」でもあって、ローンが終わる頃には子供たちの養育費も無くなり、生活も楽になると考えて住宅ローンを組みました。多くの人が30~35年返済で、完済は60歳代から70歳前後がほとんどです。購入時は、まだ本人たちも若く、子供も小さかったものの、入居して20年も経てば建物も少しずつ傷みはじめ、子供たちは家を出て行って、子供部屋は普段誰も使わない「物置き」と化していきます。以前は良く訪ねて来ていた夫婦の両親たちも、あまり遠出をしなくなり、孫も成人になれば顔を出す機会はめっきり減ります。介護が必要な状況になれば、自宅に引き取るか、施設に預けるか、そんな相談を夫婦でしなければならない状況が日本全国で繰り広げています。

 

■賃貸暮らしに「自由な未来」はあるか?

 

2000年以降、就職難や非正規雇用、賃金の伸びが抑えられた若者(ミレニアル)世代は、そんな親たちの状況を見て、「住宅取得をしてローン返済に縛られるよりも、賃貸暮らしで家賃も住む場所も自分たちで選べる自由を選択したほうが、自分らしく生きられるのでは?」という人たちが増えてきました。もちろん経済的にも余裕がなく、結婚年齢も高くなってくると、家に縛られて30年先もローンを支払い続けているイメージも湧かないのでしょう。将来の年金は当てにならず、空き家も増加して住宅が“資産”ではなく“負動産”と言われるような時代になり、親の故郷の祖父母の土地や建物もお荷物になり兼ねないのを見ていると、自宅を所有する意欲もメリットも湧かないのが当たり前かも知れません。自分が生まれ育った実家でさえ欲しいとは思えません。

 

そこで様々な雑誌の住宅特集で『持ち家と賃貸とどっちがお得?』という比較が登場しますが、詳細なシミュレーションを行っても、変動要因が多過ぎて結果「欲しい時が買い時!」という結論に導かれます。現実には、賃貸経営は10年程度で建設投資が回収できるような利回りで家賃設定をされるから、自分たちが住む賃貸の部屋を10年間で分割支払いしているのと変わりません。投資が回収されたら家賃が安くなることはなく、20年間住めば2倍の支払いで、その後も支払いは続きます。一方、持ち家は自分たちが住む家を35年分割で支払えば、自分たちのものになります。3倍以上の長期になるものの、裏返せば“住居費が同程度”だとすれば、賃貸の家賃は「家主さんに3倍程度のお金を払っている」ということに他なりません。一生自分のものにならないばかりか、持ち家の同級生が住宅ローンの返済が終わる頃、高齢者に近づいた入居者を歓迎する賃貸オーナーは限られます。例え一定の経済力があっても避けられやすく、収入が減っていたら物件は選べないから若い頃にイメージした自由はないのです。

日本の賃貸住宅。道路いっぱいに建て、緑も街並みへの配慮も感じられない。

 

持ち家を選んだ親世代も、住宅取得をあきらめ賃貸住まいでいいと思い始めたミレニアル世代も、今の日本の住居費の使い方は、決して幸福とは言えません。また今後豊かさを感じられるようにも思えない状況です。ここに新しい選択肢が提供出来れば、新しいマーケットが生まれるのです。

 

ダブルスネットワーク株式会社 代表取締役 若本 修治(中小企業診断士)

日本の賃貸住宅。道路いっぱいに建て、緑も街並みへの配慮も感じられない。
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