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若本修治の住宅コラム

2011.5.10 第60話

風通しのいい住まいが欲しい?

家づくりの相談を受けていると、様々な要望が出てくるが、やはり多いのが「明るい住まいにしたい」と「風通しを良くしたい」ということ。ほとんどの施主にとっては上位に来る要望だ。それは得てして、間取りや外観デザインにも大きく影響してくる。そこで今回は、家の中の風の流れ、風通しについて少し考えてみたい。

 

私が以前相談を受けたお客さんが、他社でプランニングをお願いした時に、風の向きを計算して建物の配置や窓の位置を提案してくれたので、心が動かされたと告白されたことがあった。しかし、あまりにも建築金額が高いので断念したものの、やはり風通しを考慮して窓の位置などを計画して欲しいという要望だった。

 

今では気象庁のサイトから地域ごとの風向きデータなどが入手できるようだ。データを利用して、どの方角に窓を設ければ家の中に風が取り込めるといった提案をしている会社もある。風通しが気になる施主にとっては、説得力ある提案となり、受注競争に一歩先んじることが出来る。

 

しかし、私はその地域に吹く風向きを前提とした窓の位置や間取りを提案することに少し疑問を感じている。なぜなら建物の外に吹く風はコントロールも出来ないし、風は常に方角を変えて吹いていて、窓の位置による風通しの影響はわずかだと考えているからだ。マラソンやスキーのジャンプ、ゴルフなど、風に影響を受けるスポーツを見ていると、風の強さも方角も刻々と変わっていることが分かる。フォローの風もあればアゲインストの風も受け、常に同じコンディションということはまず考えられない。

 

室内でも廊下や壁、ドアの配置で風通しの悪さを気にする人も多い。極端にいえば、窓同士がまっすぐ直線で結ばれなければ風通しが悪い間取りだと思い込んでいて、結果使い勝手を無視した間取りに変更される。確かに太陽光線は真っ直ぐにしか進まないが、風は曲がりくねっていても入口と出口があれば通っていく。直線かどうかよりも、むしろ室内の気圧差や、建物の南面と北面の気温差によって生じる上昇気流などの影響のほうが大きい。「ビル風」も高いビルが障害となり、仮に建物が整列していなくても圧力差で強い風が生じている。実際、我が家でもリビングに面した窓のない廊下の出入り口付近が最も風を感じ、リビングではほとんど風を感じないということも少なくない。
狭くなっているから風の流れを感じ、広い空間では風を感じないのは、川の流れと同じだ。だから必ずしも窓が大きく開口部が多ければ風通しがいいわけではない。

 

欧米の住宅の外観をみると、やはりシンメトリー(左右対称)な窓の配置など、外部からの見た目を重視して開口部のデザインをしているのが分かる。敷地によって風の向きを考慮して窓の位置や高さを変えているようには決して感じられない。むしろ窓から見える外の景色のほうを重要視しているようにさえ感じられる。

 

従来の日本の家屋は、夏の風通しを重視し、南面はほとんど開口部で、庭に面した縁側は障子で仕切られていた。
しかし、単に開け放すことが出来るから風通しがいいという訳ではない。南側の庭に配置された池や樹木が、日中の熱射で上昇気流を発生させ、日陰で低めの温度になった北側の空気が地窓を通して足元を通るような設計がされていた。また暖められて天井付近で漂っている空気が、欄間等によって外部に運ばれやすいことも、日本家屋の涼しさや風通しの良さを演出していたといっても過言ではない。

 

だから窓の位置や大きさよりも、敷地や建物内の温度差、気圧差によって風が通りやすくなる家を計画したい。

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